歌い手と観客が一体になった120分+α

開場するや、ごった返すエントランス

物販ブースにも人だかりが

18時半、いよいよ本番。暗くなったホールの舞台にピンライトがあたり、奥華子が登場した。白いTシャツにパンツのラフな格好だ。優しく、力強い拍手が観客席から送られる。そっとピアノの前に座り、しばしの沈黙。気持ちを落ち着かせているのだろう。息を吸って、吐いて……そしてようやく鍵盤に指を置き、静かに演奏が始まった。

流れてきた曲は「タイムカード」。1曲目だけに、やはり多少緊張が伝わってきたものの、2曲目の「ガーネット」ではいつものように張りのあるまっすぐな歌声に。最初の2曲を歌い終え、「こんばんは。奥華子です。コンサート、忘れずに来てもらえて、嬉しいです(観客より笑い)。今日は泣いても笑ってもこのステージ1度きり。楽しんで聴いてください」とMC。

その後、3曲目でキーボードの演奏に変わると、自然と観客から手拍子が始まり、路上ライブのようなあたたかさが会場にうまれた。

途中、観客席から「よかったよー!」などと声がかかる場面も。「おお、珍しい! 私のライブではあまり声とかはかからないので、とても勇気のいることだったと思います。ありがとうございます」と返事。実に丁寧なコール&レスポンスだ。「はなちゃん、だいすきー!」と子供から声援が飛んだときは「わあー、嬉しい!」と驚きながらも、満面の笑みを見せて喜びを隠しきれない様子だった。そして「今日のコンサートが、奥華子初めてのDVDになります!」と発表。「私のライブはお客さんが目をつぶって、噛み締めながら曲を聴いてくれることが多いので、後でDVDを見たら寝ているのかなと思われるかもしれませんが、気にしなくていいです(笑)」と続けた。

リハーサルのとき「お客さんの顔が見たいから客席を明るくする時間を作ってください」とお願いしていた奥華子。本番で客席が照らされると隅々まで見渡して声をかけていた

3月21日に発売された2ndアルバム「TIME NOTE」のナンバーを中心に、「変わらないもの」(『時をかける少女』挿入歌)、「恋の天気予報」(NHK『産地発! たべもの一直線』テーマ曲)などを披露。今年は、千葉県船橋市出身という縁で、千葉観光特使に任命され、「ふるさとの良さを思って作った」という「僕が生まれた街」も歌った。

ときおり、舞台のバックスクリーンに写真が映し出された。街の様子や桜の花など、曲のイメージにそったもので、これは彼女自身が、現在実施中の「桜前線ライヴツアー」で全国をまわっている合間に撮ったもの。「素人なのでヘタなんですけど」と恥ずかしそうに紹介していたが、彼女の曲への思い入れが感じられる演出だった。

リハーサルでは写真が気になるのか、ピアノを弾きながらスクリーンを見上げていた

また、キーボード打ち込みの伴奏を使って弾き語りをした曲もあり、新しい"コンサートホールでの奥華子"を見た思いがした。

ストレートで力強く、同時に優しい、心にしみわたってくる歌声は最後まで続いた。かんだり、なまったりするMCもご愛嬌。"応援したくなる"奥華子は健在だった。ホールのコンサートでも、路上ライブでも、彼女の良さは変わらないことを実感した2時間。15曲+アンコール2曲の計17曲を披露したが、アンコール後には舞台を降りて、観客席を隅々まで回り握手をするパフォーマンス。ファンにとっては嬉しいサプライズプレゼントとなった。

今後は引き続き、「桜前線ライヴツアー」を全国で開催し、5月13日(日)には「奥華子ワンマンフリーライブin大阪野音」を大阪城音楽堂で開く。7月18日には今回のライブを収録したDVD「奥華子2007春コンサート~TIME NOTE」(仮)がリリースされる予定だ。

開演に先立って行われたDVD先行予約

活躍の幅が広がっても、"弾き語り=(イコール)奥華子"という原点は決して忘れない。そんな彼女のこれからと、さらなる飛躍をずっとずっと見守っていきたい、そう思わせるコンサートだった。

※写真はすべてリハーサル時に撮影したものです