人事評価制度におけるAI活用のトレンドとは?活用する際の3つの注意点

人事評価システム

人事評価制度の分野でも、AIを活用しようという動きが広がっています。従来はどうしても評価者の主観が入ってしまう人事評価の問題点を解決する手段として、AIが注目されているためです。

本稿では、人事評価制度におけるAI活用のトレンドと、人事評価制度へAIを導入するメリット・デメリットについてまとめました。また、AIを活用した人材評価システム製品も紹介します。

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そもそも人事評価制度とAIとは

    評価制度_ai

人事評価制度へのAI活用を説明する前に、まず両者の概要を整理し、なぜAIが人事評価へ活用される流れとなっているかを確認しましょう。

1、人事評価制度の概要

人事評価制度とは、企業理念や経営目標を踏まえて、従業員の実績や労働生産性を評価し、定期的(通常は1年または半年に1回)に評価を行う制度のことです。評価項目として、従業員の行動特性や成果、成長性、得意・不得意などを定期的にチェックし、従業員の能力を把握するために 役立てています。

2、AIの概要と人事評価への活用

AI(Artificial Intelligence)とは、日本語で人工知能のことで、一般的には「人間の持つ知覚や知性を人工的に再現する技術」とされています。

どんな問題にも対応できる人間と同等レベルにはまだ達していません。しかし、金融分野のアルゴリズム取引などのように、特定分野においては人間をはるかにしのぐ能力を発揮するケースもあります。

近年は、人間の脳神経回路を参考にしたアルゴリズムである「機械学習」技術の発達によりAI技術は飛躍的な発展を遂げました。より複雑な事象に対して、AIが膨大なデータを読み解き、予測・対応が可能になってきています。

現在では、このAI技術を用いて企業の採用活動や人事評価、勤怠管理に活用する流れが出てきています。

人事評価制度へのAI活用のトレンド

人事評価制度へのAI活用に見られるトレンドとして、2020年の防衛省の事例とAIを利用した人事評価関連システムの登場について見ていきましょう。

1、2020年防衛省の事例

2020年1月、防衛省がAIを活用した人事評価や人事異動に関するシステムを独自開発して導入するという報道がありました。システムはこれから開発し、今後2年間で開発を進めていく方針で、評価対象となるのは幹部自衛官約4万人が対象となります。

AIはあくまでも人事評価や人事異動を行う人間のサポートをするという位置づけで、最終判断は人が行うとのことです。

2、AIを利用した人事評価関連システムの登場

汎用的な人事評価システムにも、AIを活用した製品が登場してきています。AIを活用した人事評価システムは、評価対象者の各種データ(行動特性や成果、成長性、得意・不得意など)をAIが分析。人事評価項目と評価基準に基づいて評価を行う、という仕組みです。

評価対象者に関する膨大なデータを評価者が確認するのは大変ですが、AIは迅速にデータを分析して、評価を下すことが可能です。さらにAIによる自動的な評価によって、従来問題となっていた評価者のバイアス(年齢・性別・被評価者との関係性)がかかることなく、公平な評価を実現します。

日本国内ではまだまだ人事評価制度にAIを活用する例は少ない状況です。しかし、人事関連の業務は作業量が多く、従来のままでは効率よく仕事が進められないという現実もあります。さらに海外では人事領域にAIを活用して成功している例もあり、この流れは今後も続いていくと考えられます。

次に、人事評価制度におけるAI活用の例をいくつか紹介します。

人事評価制度におけるAI活用の例

人事評価制度にAIを活用した例として、海外企業の成功例を紹介します。どのようにAIを活用しているかの参考になる例ですので、自社に導入する場合の参考としてご覧ください。

1、給与を決める参考情報提供

ある企業では、従業員の給与を決める際にAIの分析結果を参考情報として活用しています。AIが従業員の成果や所有スキルの市場価値などさまざまな評価項目について分析し、評価者に対して参考情報として提示する、という仕組みです。

評価者が評価する従業員の数が多いと、各従業員の評価項目を確認するために見る情報量は膨大になり、すべてを確認しきれません。AIは膨大なデータの分析が得意であり、評価業務の大幅な効率化をサポートします。

AIが下した結果はあくまでも参考情報であり、評価者がその結果と違う評価を行う場合は、分析結果の上書きが可能です。AIは、上書きされた結果を分析し、今後の評価に活かすことで、より精度の高い評価を目指します。

2、報酬決定プロセスに活用

人事評価の透明性・公平性は従業員の仕事に対するモチベーションを左右する重要な要素です。目標と実際のパフォーマンスが明確に示され、どういう面が自身の課題かを従業員が把握できる仕組み作りは、従業員のパフォーマンス向上に直結します。

ある企業では、複数のシステムを用いており、報酬決定プロセスに数ヶ月を必要としていました。そこで、報酬決定プロセスをAIへ一元化したところ、評価にかかる期間を約15日に短縮。従業員の目標とパフォーマンスが関連付けられ、評価の透明性や公平性が上がるという効果がもたらされました。

3、不正な支払いの削減

世界的な巨大企業は、数万人もの販売員のインセンティブ管理をAIに移行しました。

膨大な情報量を瞬時に分析するAIの強みを活かし、インセンティブ管理業務の効率化に寄与するとともに、不正な支払いをしにくくする土壌作りにも貢献。 その結果、インセンティブ管理業務の効率化と不正な支払いの削減により、50億円以上の節約を実現しました。

これらの例によって、AIの特性を活かして利用することで、人事評価制度にも大きなメリットがあることが分かります。AIを利用するには、AIのメリットとデメリットを正しく把握して、メリットを活かすような利用方法を検討することが重要です。次に、人事評価制度にAIを取り入れるメリットについて解説します。

人事評価制度にAIを取り入れる5つのメリット

人事評価制度にAIを取り入れることでどのようなメリットがあるでしょうか。代表的なメリットは以下の5点です。

1、公平性が高まる

人が人を評価する際は、どうしても人間関係やその人の属性(性別・年齢など)に左右されてしまいます。また、仮に評価者が自身のバイアスを取り除くよう努力して評価したとしても、悪い評価を受けた人は、評価者に対してマイナスの感情を抱きます。

人間を介さず自動的に評価を出せる点は、AIを導入する最大のメリットです。評価項目や評価結果を公開することで、評価の透明性も高まり、評価の公平性に不満を持つ人は少なくなります。マイナスの評価を受けた人も、負の感情を評価者へ向けることはなくなり、人間関係への悪影響は少なくとも回避できます。

2、人事評価業務の効率化およびスピードアップ

人事評価項目を詳細にすればするほど、より精度の高い評価が可能ですが、評価者が人力でデータを分析するには限界があります。AIを導入することで、過去データも含めた各従業員のデータを漏れなく活用でき、評価の効率化とスピードアップが可能です。

また、AIの出した結果を元に最終的な判断は評価者が下すことで、AIが間違った方向で結果を出してしまう危険性を防止できます。

3、評価項目の多角化

さまざまな角度からの評価軸を増やすと、評価項目数が増え、評価者にとっては大きな負担です。AIを導入することで、評価項目が増えても問題なく分析できるため、評価項目の多角化も容易になります。

4、活用できていなかった人材の発掘

これまで評価者のバイアスがかかっていたせいで埋もれていた社内の人材を発掘できるようになる点も、AI活用のメリットです。人材の過去実績も漏れなく確認できるため、今求められているスキルを持った従業員を探し当てることも容易になります。人の属性に関係なく人事評価を行えるAIだからこそ期待できる効果です。

5、効率化した時間を有効活用してエンゲージメント向上も可能

AIを活用することで、人事評価業務にかかる時間は大幅に効率化できます。人事評価にかけていた仕事時間を有効活用することで、評価者は本業に集中できるようになり、従業員のエンゲージメント向上にも役立ちます。

このように、人事評価制度にAIを取り入れることで得られるメリットは非常に大きいものがあります。ただ、その一方でAI活用にはデメリットもあるため要注意です。

人事評価制度にAIを取り入れる3つのデメリット

人事評価制度にAIを活用することで生じるデメリットには何があるでしょうか。代表的なデメリットは以下の3点です。

1、評価のブラックボックス化問題

AIに評価を任せきりにすると、AIの出した評価が何に基づいているかが見えにくくなり、評価がブラックボックス化しがちな点は要注意です。AIの評価が被評価者である従業員にとって納得性の高いものならいいのですが、意外な評価が出た場合、その結果に納得がいかず、従業員側が不信感を募らせる危険性があります。

なぜこのような評価が出たのか、従業員にも納得できるように評価項目や目標達成度などを公開して評価の透明性を上げることは重要です。また、評価者自身がAIの評価に対して、被評価者に説明するなどコミュニケーションを忘れないようにする対策も必要になります。

2、評価者がAIに頼りきりになる可能性

AIが評価を出してくれるから、と評価者がその結果を精査せずに頼りきりになってしまう可能性がある点もAI導入のデメリットです。最終的な評価を下すのは評価者自身なのに、評価に対する責任感が希薄になり、従業員への説明もうまくできなくなる可能性があります。

評価結果には評価者が責任を持って従業員に伝え、評価結果とフォローアップを丁寧に行うよう運用ルールを定め、このデメリットを解消しましょう。

3、法律に抵触する可能性あり

AIによる評価をブラックボックス化した状態で放置していると、AIが間違った評価基準を学習してしまっても、それに気づかず対処が遅れてしまいます。過去には、AIの評価基準に性別のバイアスがかかった例もあり、人事権の濫用とみなされる可能性あります。

以上が人事評価制度にAIを活用することによって発生する可能性のあるデメリットです。いずれも対応策はあるため、人事評価制度でAIを活用する際には対応を検討しておきましょう。ここまで説明してきたメリット・デメリットを踏まえて、人事評価制度でAIを活用する際の注意点を整理しましょう。

人事評価制度でAIを活用する際の注意点3つ

人事評価制度において、AIを活用する際の注意点は以下の3点です。

1、意思決定は評価者が行う

人事評価の最終決定は、評価者が責任を持って行うようにしましょう。AIはあくまでも分析情報の提供というサポート的な位置づけにすることが重要です。AIが下した評価に疑問がある場合は評価を変更し、人事部門にも報告を上げることで、AIが間違った学習をしていないかどうかのチェックにもなります。

2、従業員への説明を行う

人事評価を出した後は、評価者から従業員への説明を行います。従業員が評価結果に不満を持った場合に、なぜ不満に感じるのかをヒアリングし、その内容に妥当性がある場合は、評価の見直しも必要です。

従業員の不満に妥当性がないと判断される場合は、AIの出した評価の根拠(評価項目と達成度)を提示し、従業員に何が足りなかったのかをフィードバックします。具体的にどう努力をすれば評価が上がるのかを論理的に説明し、評価アップを支援する姿勢が重要です。

従業員の成長を支援する形でコミュニケーションを続けることで、従業員の不満を解消し、モチベーション向上も可能になります。

3、試験的に導入して採用するかどうかを判断

人事評価制度にAIを導入する際は、一度に全社導入するのではなく、試験的に一部の部門で導入し、少しずつ横展開するようにしましょう。一気に導入すると、うまくいかなかった場合に会社への影響が大きくなりすぎる危険性があるためです。試験的な導入でうまくいかない場合は、今後どうするかを検討しましょう。

最後に、AIを活用した人事評価システムを紹介します。

AIを活用した人材評価システム「あしたのクラウドHR」

「あしたのクラウドHR」は、目標添削機能や評価者モニタリング機能にAIを活用いた人材評価システムです。人事評価自体にはAIは使われていませんが、目標設定支援や評価者のレベルアップにAIを利用しています。

目標添削機能は、人事評価シートに設定する目標をAIによって添削できる機能で、従業員の目標設定を支援します。

評価者モニタリング機能は、評価者をモニタリングして収集したデータから評価者のスキルレベルをAIによって点数化し、改善ポイントを提示する機能です。評価者モニタリング機能によって、評価者のレベルアップに貢献します。

人事評価制度のAI活用はメリット・デメリットを把握して検討を

人事評価制度へのAI活用は、今後日本でも広がりを見せることが予想されます。過去の人事評価データを活用して透明性の高い評価を行え、公平な評価ができるなどのメリットがあるためです。

ただし、AIの評価を盲目的に信じていると、足をすくわれる可能性があります。人事評価の最終判断は人間が行い、間違った評価基準が適用されていないかについて注意しましょう。従業員への説明は評価者自身が行い、納得いく評価を得るための助言を行い、従業員との信頼関係を築くことも重要です。

上手にAIを活用することで、人事評価業務の効率化だけでなく、従業員のモチベーション向上、ひいては業績向上にもつながります。

現状の人事評価制度を変えたい、業務を改善したい、と考えている場合は、ぜひAIの活用を検討してみてはいかがでしょうか。

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