Web接客ツールと言えばECサイトへの導入が一般的で、BtoB取引で利用するイメージはあまりないのではないでしょうか。しかし、Web接客ツールは、BtoBにおいても大きな効果を出せるツールです。本稿では、BtoB取引におけるWeb接客ツールの導入メリットと注意点について解説し、BtoBにおすすめの製品を紹介します。
Web接客ツールとは
Web接客ツールとは、運営中のWebサイトに導入し、カスタマーサービスやマーケティング活動を行うツールのことです。カスタマーサービスには、チャットボットを利用した自動回答がよく利用され、マーケティングや営業活動には、訪問者の属性などに合わせたメッセージ表示機能が活用されます。
Web接客ツールは、主にBtoC(一般消費者との取引)で用いられますが、BtoB(企業間取引)にも効果を発揮します。では、なぜBtoBでもWeb接客ツールが効果を発揮するのでしょうか。
Web接客ツールをBtoBでもおすすめする理由6つ
Web接客ツールがBtoBにも効果を発揮できる理由は、以下の6点です。
1、気軽に問い合わせできる
BtoBの製品問い合わせには、多くの場合問い合わせフォームへの入力が求められます。問い合わせフォームへの入力は、質問事項だけでなく、氏名や会社名などの情報を入力しなければならないためかなり手間がかかります。その上、回答までにどうしてもタイムラグがある点もネックです。
Web接客ツールなら、単純に質問事項を入力すればすぐに回答を得られるため、気軽に問い合わせができます。質問したいが問い合わせを実行するには少々面倒だ、という層にまでアプローチできる点は、Web接客ツールならではのメリットです。
2、潜在顧客の段階からアプローチ可能
BtoB用のWebサイトは、多くの場合、「製品・サービス情報の提供」「資料請求や問い合わせ用」「よくある質問」などから構成されています。
Webサイト側では資料請求や問い合わせなどユーザーからのアクションがない限り、サイト訪問者へのアプローチはできません。そのためWebサイトを訪問するだけの潜在顧客は取り逃がしていました。
Web接客ツールを導入すると、訪問者の属性やサイトでの行動履歴などから、より適切なコンテンツを表示するなど、潜在顧客へもアプローチが可能です。BtoBでもこの仕組みを活用し、商機をより多く得られます。
3、CVR改善の費用対効果が大きい
一般的に、BtoCよりもBtoBの方が取り扱う商材の単価は高額です。また、購入数についても、一般消費者は1個単位で購入しますが、BtoBなら1箱・1ロットなどまとまった単位での取引が多くなります。
このようにBtoBでは取引金額が大きいため、CVR率を改善した場合の費用対効果は、BtoCよりも大きくなります。
4、ユーザー情報をリアルタイムで獲得できる
BtoB用のWebサイトは、多くの場合シンプルな構成で、訪問者を積極的に接客する仕組みを持ちません。Web接客ツールなら、Webサイトを訪問しているユーザーの情報や行動履歴をリアルタイムで取得して、見込み客に対して積極的な接客が可能です。
見込み客にアプローチする手段としては、有人チャット、動的なコンテンツの変更とポップアップメッセージの表示などがあります。
5、サイトやサービスの改善点を発見できる
Webサイトをただ運用しているだけでは、サイトやサービスの改善点は見えてきません。Web接客ツールをWebサイトに組み込み、継続的に利用することで、サイトやサービスの改善点を発見できる点もWeb接客ツールをおすすめする理由です。
具体的には、ユーザーの行動履歴収集とデータ分析により、Webサイトの抱える課題・問題点を発見。Webサイトの改善案を試す際には、A/Bテストで効果検証を行えます。これらの機能を利用して継続的に改善を進めることで、Webサイトやサービスは洗練され、CVR率の向上に役立ちます。
6、チャットからの直接アポイント獲得・商談も可能
BtoB取引では、商談の機会を多く持つことが重要です。より決め細やかな対応を行うためには、詳細なシナリオやAIなどによる自動応答機能だけでなく、直接話しかけてコミュケーションを取る方法も必要となります。
有人チャットや電話など、相手に合わせたマルチチャネルで直接会話を行い、アポイントを獲得したり、商談を進めたりできる点もWeb接客ツールの利点です。
Web接客ツールをBtoBで利用する場合の注意点5つ
Web接客ツールをBtoBで利用するには、BtoCとはまた違った注意が必要です。具体的に、どのような店に注意すべきかを解説します。
1、事前に導入計画と活用戦略を明確にする
Web接客ツールをどのようにBtoB取引に活かすかについては、事前に活用戦略をしっかりと立てることが重要です。導入計画も活用計画もあやふやなままWeb接客ツールだけを導入しても、思ったような効果は得られません。活用戦略の内容により、選択するべき製品も変わってきます。
また、マーケティングや営業で利用するには、営業活動だけでなく、施策の効果検証や改善策の試行などを継続的に進める体制作りも欠かせません。数値目標も明確にすることで、効果測定するべき項目も明確になります。
2、顧客満足度が下がる可能性がある点に注意
Web接客ツールは、導入後の調整が非常に重要です。あまり何度もチャットウインドウやポップアップを表示すると、うっとうしいと感じてサイトを離れるユーザーも少なくありません。ユーザーにストレスを与えず、ちょうどいいタイミングで適切な働きかけを行うことで、Web接客ツールの強みは活かされます。
Webコンテンツの内容を最適化するためには、A/Bテストによる効果検証と、改善後の効果測定を繰り返すしかありません。問題点を順番に解決することで、顧客満足度を下げることなく、効果的な接客を行えるようになります。
3、人員と労力が必要
Web接客ツールの効果を最大限に引き出すためには、ある程度の人員と労力がかかると考えてください。
少なくとも、ユーザーの問い合わせに対応するオペレーター・営業担当・ツールの効果測定および効果検証を継続的に行う担当者は必要です。Webマーケティング推進の予算化・体制作り・運用の継続を考慮しての計画策定などの業務は発生することを織り込み、準備を進めましょう。
また、Web接客ツールの導入時に費用対効果を算出する場合は、運用に必要となるコストも計算に含めるようにしましょう。
4、自動返信メッセージの頻度に注意
Web接客ツールの中には、話しかけや自動返信メッセージを表示できるものもあります。サイトの閲覧だけで何もアクションしていないユーザーに対して、あまり頻繁に自動メッセージを表示すると、コミュニケーションが無機質に感じられる点に注意しましょう。
自動メッセージの表示は最低限にし、ユーザーのアクションに合わせて適切なコミュニケーションを取るよう、シナリオを作りこんでください。
5、PDCAを回せる環境や体制の整備
マーケティングや営業活動向けのWeb接客ツールのほとんどは、PDCA(Plan Do Check Action)サイクルによる継続的な改善活動をサポートします。PDCAサイクルを簡単に回せる効果測定・効果検証の環境を整備し、運用体制を整えましょう。
BtoB向けのWeb接客ツールを選ぶポイント3点
BtoB向けのWeb接客ツールを選ぶには、どのような点を確認すればいいでしょうか。確認ポイントとして、以下の3点について解説します。
1、有人チャット機能があるか
Web接客ツールは、チャットボットやポップアップ表示などによる接客機能がメインです。しかしBtoBの場合は、アポイント獲得などよりきめ細やかな対応をしたいため、有人チャット機能もあると便利です。
また、SNSや電話、メールなど、チャットを含めたマルチチャネルの問い合わせ履歴をシステムで一元管理できる機能もBtoBに活用できます。会社として統一の取れた営業活動が可能になるためです。
2、PDCAを回しやすいデータ分析や効果測定の機能があるか
BtoB取引でもWeb接客ツールの効果を最大化するには、PDCAを回しやすいデータ分析や効果測定の機能が欠かせません。製品の中には、データ分析などの機能をオプションや料金プランによってサポートしているケースがあるため、料金体系をしっかりと確認して必要十分な機能を選ぶようにしましょう。
3、ユーザーの行動を阻害しない設定にしやすいか
特にポップアップやウィジェット表示機能については、ユーザーの行動を阻害しないよう、回数設定や表示タイミングをきめ細かく設定できる製品を選びましょう。製品によっては、あまり細かい制御ができないものもあるので、無料トライアルやデモ環境などでしっかりと確認したい点です。
BtoB向けのおすすめWeb接客ツール9選
ここからは、BtoB取引に適したWeb接客ツールを9製品紹介します。製品により特徴は異なるため、自社の目的を満たす特徴を持つ製品を探し、比較検討しましょう。
多機能かつ低コストでCVQ向上を実現「Robee」
株式会社Macbee Planet
- 参考価格:Web接客・月間100万UUまで50,000円/月など
- 対象機能:チャットボット、ポップアップ、Webプッシュ、A/Bテスト、分析、解約防止(Web接客とは別契約)
- 無料トライアル:別途問い合わせ
CVQ(Conversion Quality)とはコンバージョン(成果)の質という意味。「Robee」は、CVQを高めて、 自社の製品やサービスを求めている潜在的な優良顧客へ購入を促進するための機能を多く提供するWeb接客ツールです。
ユーザーの行動分析はヒートマップで行い、細やかな単位でA/Bテストを実行できる ため、Webサイトでの接客をきめ細かく行える点が大きなポイント。企業担当者の属性や行動履歴に即したチャットボットやポップアップ表示による接客も容易です。
プロダクトを組み合わせてBtoB対応「KARTE」
株式会社プレイド
- 参考価格:別途問い合わせ
- 対象機能:チャットボット、ポップアップ、マルチチャネルコミュニケーション、サイト管理、分析、ユーザー行動履歴
- 無料トライアル:あり(3日間)
データ分析・コミュニケーション・サイト管理の プロダクト6種類を組み合わせ、自社の目的に合ったWeb接客環境を構築できる製品。BtoB向けのWeb接客には、 ユーザーの行動を可視化する「KARTE Insight」や双方向のチャットで商談など直接会話ができる「KARTE Talk」を軸に検討 しましょう。
マルチチャネルでの単方向コミュケーションプロダクトの 「KARTE Message」は、企業担当者へ適切なタイミングで声かけをしたい場合におすすめです。
BtoB対応に必要な機能を標準提供「Flipdesk」
株式会社フリップデスク
- 参考価格:初期費用 150,000円 10万PVごと5,000円/月など
- 対象機能:ユーザー情報収集、ターゲティング、分析レポート、A/Bテスト、チャットボット・有人チャット、ブラウザ通知、SPA(Single Page Application)対応
- 無料トライアル:別途問い合わせ
BtoB対応に求められる機能を標準で提供するWeb接客ツール。PDCAサイクルを回すのに必要なデータ分析や効果測定、 1対1での会話が可能な有人チャット、ターゲティングによるきめ細やかな対応 により、企業担当者に的確な対応ができます。
Webサイトの規模によらず、タグを埋め込んだページのPV数(対応ブラウザのアクセスのみカウント)で料金が決まる分かりやすい料金体系も特徴です。
BtoB向けのシナリオ作成でCVを最適化「Sprocket」
株式会社Sprocket
- 参考価格:別途問い合わせ
- 対象機能:ユーザーの行動データなど各種分析、シナリオ作成、ポップアップ、データ連携、A/Bテスト
- 無料トライアル:なし(デモサイトでの体験はあり)
ユーザーの行動データなどを分析し、1人ひとりの 最適化したシナリオを作成してWeb接客(ポップアップやページ遷移)を行う Web接客ツール。チャットボット・有人チャット機能はありませんが、 外部サービス連携機能で他のチャットサービスとの連携は可能です。
本製品の大きな特徴は、コンサルティングを標準で受けられる 点。施策の立案、シナリオの設定、データ分析と効果測定の継続的な実行などを全て自社で推進するには大変な労力がかかります。コンサルティングを受けることで、これらの作業全般のサポートを受けられ、ツール導入から運用までをスムーズに推進できます。
問い合わせ履歴の一元管理などBtoBに適した機能を提供「Zendesk」
株式会社Zendesk
- 参考価格:別途問い合わせ
- 対象機能:自動応答(AI)、有人チャット、統合型チケット管理、ヘルプセンター・FAQ構築、分析、統合型コールセンター
- 無料トライアル:あり
クラウドサービスとして提供されるカスタマーサポートプラットフォーム。自動応答(チャットボット)と有人チャットの両方をサポートし、 FAQを構築してユーザー自身で問題を解決できる環境も構築可能です。
ユーザーとの会話をスレッドで蓄積して一元管理 できる(Suite Professionalプランの機能)ため、同一ユーザーへの対応を会社として統一できる点もBtoBに適しています。
BtoB向けならプレミアムプラン以上がおすすめ「Chat Plus」
チャットプラス株式会社
- 参考価格:初期費用0円、【プレミアムプラン】月契約 30,000円/月、年契約 28,000円/月など
- 対象機能:自動応答(AI※)、有人チャット、レポート、チケット※、企業情報付与※、リード※、ナレッジベース※など(※はプラン制限あり)
- 無料トライアル:あり
料金プランが5段階あり、スモールスタートしやすいWeb接客ツール。BtoB対応を強化したい場合は、 有人チャットとの切り替えができるプレミアムプラン以上がおすすめです。
機能は非常に豊富 で、レポート・分析機能やシナリオに沿った自動回答機能もあります。自社で機能を活用しきれない場合は、チャットスクリプトコンサルティングやエキスパートサポートプランなどを利用して支援を受けることもできます。
カスタマー管理で確実なBtoB対応を実現「Chamo」
株式会社ジーニー
- 参考価格:【ライトプラン】6,500円/月より
- 対象機能:有人チャット、チャットボット、カスタマー管理、フォーム最適化、シナリオ機能、ボット表示の条件分け、話しかけ機能
- 無料トライアル:別途問い合わせ
ユーザーサポートを強化するFAQボットと有人チャット、 フォーム入力をサポートする会話でコンバージョンを促進 する機能の両方を兼ね備えたWeb接客ツール。これらの機能は、BtoB対応でも力を発揮します。
サイト訪問者別にチャット履歴やサイトの閲覧履歴を管理できるカスタマー管理機能も、 企業担当者1人ひとり対するきめ細やかで統一的な対応を支援します。
サイト来訪企業の可視化で営業支援「sinclo」
メディアリンク株式会社
- 参考価格:コスト重視9,440 円/月~、成果重視29,440円/月~
- 対象機能:チャットボット、有人チャット、画面共有、ドキュメント共有、問い合わせ履歴、Webマーケティング分析
- 無料トライアル:あり
リアルタイムモニター機能により、サイト訪問者の企業・団体を把握して対応できる 、BtoBに役立つ機能を搭載しているWeb接客ツール。企業からのアクセスを容易に把握でき、その場で対応できる点は、BtoB取引のインサイドセールスにとても便利な機能です。
チャットボット機能では、シナリオに沿った会話や自動話しかけ機能などを提供。 チャットからのコンバージョンも可能で、CVRの向上もアシストします。
ヒアリング機能と受付機能でBtoB対応しやすい「AI-FAQボット」
株式会社L is B
- 参考価格:QA数1~100 30,000円/月~より、年間一括支払い・10ヶ月分、その他オプションあり
- 対象機能:チャットボット、有人チャット、ExcelでのQ&A管理、言葉の揺れの自動学習、カテゴリーボタン自動生成、ヒアリング機能、受付機能など
- 無料トライアル:あり
問い合わせ対応に強いWeb接客ツール。チャットボットから有人チャットに切り替えられるヒアリング機能および、 問い合わせから申し込みまでを一気に行える受付機能 は、BtoB取引でも活用できます。Q&A管理はExcelで管理し、ユーザーが質問をする際利用するカテゴリーボタンは自動生成。管理のしやすさも魅力です。
運用開始後は、問い合わせ・検索キーワード・カテゴリなどの傾向を確認できるため、継続的な業務改善にも役立てられます。
まとめ
Web接客ツールは、BtoCだけでなくBtoB取引にも有効です。チャットボットと有人チャットを組み合わせてアポイント獲得・商談などを行うことで、大きな成果を上げ、分析・効果測定機能による継続的な業務改善も行えます。また、問い合わせ履歴の一元管理で、誰が対応しても統一した接客ができる点もポイントです。
BtoB取引に適した製品を紹介しましたが、気になる製品があればぜひ資料を入手して、各ツールの比較検討にご利用ください。