働き方改革に向けて業務効率化が求められているほか、新型コロナウイルス感染症の拡大によってテレワークも多くの企業で実施されるようになりました。場所にとらわれない働き方の実現にはクラウドサービスの利用が不可欠ですが、オンプレミス型の業務基幹システムを利用している企業もまだまだ多い状況にあります。そこでおすすめしたいのが、クラウド型の業務基幹システムである「クラウドERP」です。今回はクラウドERPの特徴について詳しく解説します。
クラウドERPとは
そもそもERPとは、「Enterprise Resource Planning」の略称で、企業や組織で業務に利用する基幹システムのことを指します。 従来、多くの企業では自社でサーバーを構築・運用するオンプレミス型の基幹システムが主流でした。しかし、クラウドシステムの普及により、クラウド環境で動作する「クラウドERP」の需要が高まりました。 クラウド上でシステムが構築できれば、導入コストや運用コストに悩む中小企業も手軽に導入できることから、クラウドERPは大いに注目されているのです。
クラウドERPが注目されている背景
昨今、ERPに限らず、あらゆるシステムがオンプレミスからクラウドへと移行しています。この背景には、PCだけではなくスマートフォンやタブレット端末など、インターネットに接続できる情報端末が増えたことが要因として挙げられます。 また、働き方改革を推進する企業が増え、業務効率化につながるツールが求められていることや、多様な働き方に対応できるシステムが求められていることもクラウドERPが注目されている要因といえます。
クラウドERPの種類~それぞれのメリット・デメリット~
クラウドERPにはプライベートタイプとパブリックタイプ、ハイブリッドタイプの3種類が存在します。それぞれのメリットとデメリットも含めて詳しく紹介しましょう。
1、プライベートタイプ
自社で運用しているオンプレミス型のERPを、そのままクラウドに移行して利用する方式をプライベートタイプとよびます。
✔メリット
プライベートタイプの最大のメリットとしては、新たにシステムを一から構築し直す必要がないことが挙げられます。システムの開発費用を抑えられることはもちろんですが、システムの仕様が大きく変わることもないため、これまでシステムを利用してきたユーザーにとっても操作方法を覚え直す必要がありません。
✔デメリット
プライベートタイプのデメリットとしては、現在運用している基幹システムがない場合は、一からシステムを構築する手間とコストがかかる点です。 また、オンプレミス型とクラウド型ではセキュリティ対策の方法も異なるため、システム環境を移行することでセキュリティ対策のツールを新たに導入する必要性があります。あくまでも自社専用の基幹システムをクラウド上で利用する形態のため、セキュリティ対策も自前で検討しなければならないのはデメリットといえるでしょう。
2、パブリックタイプ
すでにクラウドERPとして一般向けに提供されているサービスを契約する方式を、パブリックタイプとよびます。スマホアプリやPC用のアプリケーションソフトなどと同じように、不特定多数のユーザーが使いやすいように提供されている形態です。
✔メリット
パブリックタイプは、現在利用しているERPシステムがない場合でもすぐに利用できることが大きなメリットといえるでしょう。 これまでERPがなかった企業にとっては、既製のサービスを活用することで一からシステムを構築する手間やコストがかからず、手軽に利用できます。 また、セキュリティ対策もパッケージとしてシステムに組み込まれていることが多いため、プライベートタイプに比べて企業の負担が少なくて済みます。
✔デメリット
メリットで紹介したケースとは反対に、従来ERPを利用してきた企業にとってはシステムの構成や仕様が大幅に変更されることになります。そのため、既存のシステムを活かせず無駄になってしまう点がデメリットといえるでしょう。 また、システムを利用するユーザーの立場で考えても、これまで使い慣れてきたシステムのUIや使い方から大幅に変更されるため、負担が大きくなります。
3、ハイブリッドタイプ
プライベートタイプとパブリックタイプを複合させる方式をハイブリッドタイプとよびます。
✔メリット
ハイブリッドタイプは、これまで紹介してきたプライベートタイプとパブリックタイプそれぞれの長所を活かして利用できる点が大きなメリットといえます。 オンプレミスとも連携可能なため、たとえば個人情報や機密情報などを扱う業務にはオンプレミス、それ以外にはクラウド型のERPといった使い分けも可能です。 また、本社はプライベートタイプ、営業拠点ではパブリックタイプを利用したいといった場合においても、ハイブリッドタイプのERPシステムを活用することで実現できます。
✔デメリット
ハイブリッドタイプはプライベートタイプやパブリックタイプ、そしてオンプレミスなど複数の形態のシステムを連携することになるため、システムの構成や仕様が複雑になりがちです。
クラウドERPの選び方のポイント
現在ではクラウドERPもさまざまなサービスが登場しています。そのなかでクラウドERPを選ぶ際には既存業務への適合性と課題解決、セキュリティ性の2点を重視するといいでしょう。
1、クラウドERPの既存業務への適合性と課題解決
クラウドERPにはさまざまな機能が備わったものがありますが、重要なのはどの業務に適用し、どのような課題を解決するために導入するかです。新しいシステムを導入する際には、現場に少なからず負担がかかります。
既存業務にスムーズに適合できるか、課題にコミットできる機能を備えた製品なのかを検討して選ぶようにしましょう。
2、クラウドERPのセキュリティ性
クラウドERPではセキュリティ性がしっかりとしたものを選ぶことが重要です。ERP上には社内におけるさまざまな情報が集約されるため、一度情報漏えいが発生すれば、その影響は非常に大きいものになります。クラウドサービスは自社内での管理に比べ、自分達の手の届かないところに情報が保存されることになります。
ERPのセキュリティ機能は充実しているか、データが保管されているデータセンターは信頼できるか、ベンダーのSLAは明確化されているかなどセキュリティに関しても注視するようにしましょう。
おすすめのクラウドERP10選
クラウドERPとして提供されているシステムの中から、おすすめのサービスを紹介します。
「Oracle NetSuite」
Shearwater Japan株式会社
- 参考価格:【初期費用】500万円~【月額料金】30万円~
- 提供形態:クラウド
- 対象従業員規模:全ての規模に対応
- 対応機能:管理会計、連結会計、外貨管理、税務申告、生産管理、BIツール
「Oracle NetSuite」は、現場から経営層まで全ての業務を効率化するクラウドERPシステムです。企業に必要不可欠な基幹システムを1つのアプリケーションで管理し、データ管理の時間を大幅に削減します。
本製品はCRM(リード&顧客管理)、基幹システム(受発注、在庫管理)、会計(売掛、買掛、仕訳入力、銀行業務、財務諸表、連結)従業員管理(時間、経費精算)、Eコマースまでの機能が、ひとつのアプリケーションに統合されており、リアルタイムに「一元管理」「経営の見える化」を実現することが可能。幅広い業種業界、お客様の企業規模業界に合わせた最適なソリューションを提供します。
「MA-EYESnc」
株式会社ビーブレイクシステムズ
- 参考価格:【初期費用】0円~【月額料金】4万円~
- 提供形態:クラウド
- 対象従業員規模:中小企業
- 対応機能:管理会計、販売管理、グループウェア、購買・経費管理、勤怠管理、SFA、帳票・分析
「MA-EYESnc」はシステム開発業に特化したクラウドERPです。受注前の案件~工数管理~入金支払まで一元的に管理することができます。
自社に必要な機能のみを選んで利用することができ、最低初期費用0円、月額4万円から利用することが可能なので、安く手軽にシステム化したいという企業におすすめ。申込から最短で3営業日で利用することが可能で、なるべく早くシステムを稼働させたいという要望も叶います。
また、紙のマニュアルだけでなく、動画マニュアル、メールや電話でのサポート、FAQサイト等、サポートが充実しているのもポイント。初めてシステム導入をするため不安があるという場合でも、安心して利用できます。
「Microsoft Dynamics 365 Business Central」
株式会社パシフィックビジネスコンサルティング
- 参考価格:別途問い合わせ
- 提供形態:オンプレミス / クラウド / パッケージソフト / SaaS
- 対象従業員規模:全ての規模に対応
- 対応機能:管理会計、連結会計、外貨管理、税務申告、生産管理、BIツール
Microsoft Dynamics 365 Business Centralはマイクロソフトが提供しているクラウドERPシステムです。Office365をはじめとしたマイクロソフト製品との連携が可能で、これまでERPを活用しておらずExcelやWordなどで管理してきた企業にとっても導入しやすいシステムといえるでしょう。
「GRANDIT」
GRANDIT株式会社
- 参考価格:別途問い合わせ
- 提供形態:オンプレミス / クラウド / ASP
- 対象従業員規模:100名以上
- 管理会計、連結会計、外貨管理、生産管理、BIツール
GRANDITサブスクリプションサービスはGRANDIT株式会社が提供しているクラウドERPシステムです。販売・在庫管理から経理、人事にかかわる業務まで幅広く網羅しており、あらゆる企業の業務効率化および生産性向上に寄与します。
「クラウドERP freee」
freee株式会社
- 参考価格:別途問い合わせ
- 提供形態:クラウド / SaaS / ハードウェア
- 対象従業員規模:100名以上
- 対応機能:管理会計、連結会計
クラウドERP freeeはfreee株式会社が提供しているクラウドerpシステムです。経理・会計業務の一元化に優れ、企業の迅速な意思決定をサポートしてくれます。不正アクセスの検知やユーザー単位での権限付与、各種履歴機能など内部統制に対応した機能を持っているため上場準備をする企業にも最適です。また、給与計算や勤怠管理などと連携し、経費精算と給与の一括振込や部門別給与仕訳の自動連携などの機能も備えています。
「クラウドERP ZAC」
株式会社オロ
- 参考価格:別途問い合わせ
- 提供形態:クラウド / SaaS / パッケージソフト / ASP
- 対象従業員規模:50名以上 5,000名未満
- 対応機能:管理会計、BIツール
ZACはベンチャーから上場企業まで750以上もの企業での導入実績を誇るERPです。細かい単位で導入効果が測定できるため、導入目的にコミットしやすい製品と言えるでしょう。
「SAP Business One」
be one solutionsジャパン株式会社
- 参考価格:別途問い合わせ
- 提供形態:オンプレミス / クラウド
- 対象従業員規模:全ての規模に対応
- 対応機能:管理会計、連結会計、外貨管理、税務申告、生産管理、BIツール
SAP Business Oneは28ヶ国語に対応し、50ヶ国もの法律や会計要件を満たしています。中小規模への導入に適しているため、世界にいくつもの拠点を持つ企業におすすめの製品です。
「OBIC7」
株式会社オービック
- 参考価格:別途問い合わせ
- 提供形態:クラウド
- 対象従業員規模:100名以上
- 対応機能:管理会計、連結会計、外貨管理、生産管理、BIツール
OBIC7は多彩なERPソリューションを統合する業務ソフトウェアです。自社に必要なコンポーネントを組み合わせて利用することができるため無駄がありません。機能の取捨選択ができるため、段階的な導入にも適しています。
「Reforma PSA」
株式会社オロ
- 参考価格:別途問い合わせ
- 提供形態:クラウド / SaaS
- 対象従業員規模:50名以上
- 対応機能:管理会計、BIツール
Reforma PSAは小規模なクリエイティブ業に適したERPです。初期コストが0円で手軽に導入できることが大きな魅力でしょう。必要なライセンス、オプションを選んで導入できるため、運用コストの無駄をなくすこともできます。
「kintone」
サイボウズ株式会社
- 参考価格:別途問い合わせ
- 提供形態:クラウド
- 対象従業員規模:5名以上
- 対応機能:管理会計、生産管理
kintoneはサイボウズ社が提供するERP初心者でも利用しやすいERPです。サイボウズガルーンなどのグループウェアとのシナジーも良く、社内のさまざまな課題を解決してくれるでしょう。
クラウドERP導入時の3つの注意点
手軽に導入ができ機能も豊富なクラウドERPですが、導入において注意すべきポイントも存在します。ここでは注意すべきポイントを3つ解説します。
1、インターネットへの依存
クラウドERPはクラウドサービスであるため、インターネットとの接続が必須です。社内からインターネットへ接続できなくなった場合、社内におけるさまざまな業務が止まってしまうことになります。インターネット接続が寸断しない、遅延が発生しにくい安定した回線環境を整えることが重要です。
2、カスタマイズの難しさ
クラウドERPはベンダー側で予め設定されたシステムを利用する場合が多く、個別のカスタマイズには対応しきれない場合があります。追加で機能が拡張できる場合でもコストはかかるものと考えたほうがいいでしょう。パッケージやオンプレミスよりも慎重にサービスを選ぶ必要があるとともに、クラウドERPの仕様にあわせて自社内の運用を変えることも重要です。
3、セキュリティリスク
クラウドERPでは業務情報をクラウド上に保存するため、セキュリティリスクがつきものです。不用意に情報を保存してしまうと、重大なインシデントが発生するおそれもあります。セキュリティ性の高いクラウドERPを選ぶとともに、保存する情報の機密性を予め設定しておくことが必要でしょう。
働き方改革にも不可欠なクラウドERP
新型コロナウイルスの影響と働き方改革の実現に向けて、場所にとらわれない働き方が求められています。しかし、オンプレミス型のシステムのままでは物理的にテレワークの実現は難しく、オフィスへの出社を余儀なくされるケースも少なくありません。業務基幹システムのような大規模なシステムの場合、クラウドへの移行は難しいのではないかと考える経営者や担当者も多くいます。しかし、そのような課題を解決できるクラウドERPシステムが続々と登場しているため、まずは資料請求のうえ複数社のサービスを検討してみてはいかがでしょうか。