2024年12月にユネスコ無形文化遺産に「伝統的酒造り」が登録されました。日本産酒類が国内外でますます注目されています。世界の人々に日本酒はどのように親しまれているのでしょうか。今回はシンガポール編をお届け。
シンガポールで人気、『クラフトサケ』とは?
今夏、建国60周年を迎えるシンガポールは、新しいもの好きな国民性。現地では「獺祭」(旭酒造、山口・岩国市)などが大人気です。しかし毎回、同じ日本酒を注文・購入することは少なく、常に新しいトレンド酒を求めているのがシンガポール人。
そんな中、最近注目されているのが日本でも人気拡大中のクラフトサケ。日本酒のようにお米を原料としながらも、法的に「日本酒」とは名乗れない特別な醸造法や原料などの新しいジャンルのお酒のことです。
例えば濾過をしないので白濁しているどぶろくや、梅やイチゴといった果実系フレーバーをプラスしている酒など。国内外でクラフトビールやクラフトジンの人気が高まっていますが、クラフトサケもいま国内外で脚光を浴びているのです。
他には、生酛や山廃仕込みといった伝統的な製法の日本酒や、重層感のある味わいの熟成酒などにも注目が集まりつつあります。これまでのように"大吟醸、一択"の時代から、日本酒の多様な個性を楽しむステージへとシフトしているようです。
どぶろくの見た目は重そう、でも軽い! 酸っぱいからヘルシー?
シンガポールの中心部にある日本酒バー「OMU NOMU」(オム ノム)でも、クラフトサケ、特にどぶろくが人気です。
同店は常時12~16種の日本酒(クラフトサケ含む)を揃えていますが、2022年のオープン当初は日本酒(いわゆる特定名称酒)85%:クラフトサケ15%という割合の品揃えでした。それが現在は日本酒 52%:クラフトサケ48%と半々くらいの割合に変化しました。
日本酒の国際品評会「Sake Challenge」の審査員も務めるほど酒通である、同店のオーナーシェフ、ジェラール アレクシス氏は次のように説明します。
「これほどクラフトサケを揃える飲食店は、シンガポールではもちろん、世界でも(日本以外では)うちくらいでしょう。どぶろくは見た目がどろりとして、すごく重たい飲み物だとイメージするけれど、飲んでみると意外にさっぱりとして飲みやすい。酸味が利いてスッキリしたものもある。そのコントラスト(ギャップ)が人気の要因です」。
「大吟醸」や「精米歩合」、「山田錦」といった日本酒の専門用語は、一般的なシンガポール人にはなじみが薄くて難しい用語。それらを知らなくても十分に楽しめるという点も、どぶろくの魅力だと彼は語ります。
同店で提供しているどぶろくは、木花之醸造所(東京・浅草)の「ハナグモリ」(日本のECサイトでは2,178円/500ml)や、ホップを使った「HAZY SAKE」(同2,400円)、鰹節・昆布・梅干しを使用した「出汁パンチ」(同2,400円)、そしてハッピー太郎醸造所(滋賀・長浜市)のお酒など。
現地では「酸っぱいものは健康に良い」というイメージが定着しており、白麹などを使った酸味が強めのどぶろくが特に好評なのだとか。ワイン好きにも酸味が強い酒は人気だそうです。