「心がポキッと折れそう」「パフォーマンスをもっと上げたい」「仕事と家事を両立させたい」……すべては「心」の元気にかかっています。体の休息は心の休息ではありません。東大のメンタルヘルスの医師が、長い人生をゆったり生き抜くための心と体の回復方法を伝授する『働く人の最高の休み方』(佐々木那津/青春出版社)。

この記事では本書から一部を抜粋・編集してご紹介します。今回のテーマは、『今すぐできる、10秒セルフケアのすすめ―ひと息つくだけで、ここまで変わる「左右の肩ポンポン」で嫌な記憶から離れる』。

今すぐできる、10秒セルフケアのすすめ

セルフケアの第一歩は、自分にとって、真に「安心・安全」であると感じる時間をきちんと作ることです。

仕事で心身ともにすり減りやすい人は、職場がまるで「戦場」のように不安に感じるかもしれません。戦場とまではいかなくても、周りから攻撃されるのではないか、脅かされるのではないかと、プレッシャーを感じる場所というイメージです。

そのような状況下では、心身が緊張しすぎてリラックスできず、自律神経の乱れによって疲れてしまいます。

実際にハードな環境である場合はともかく、そうでない場合も戦場であるかのように感じるのは、脳の過剰反応によるものです。「しっかりやらなきゃ」「怒られないようにしなきゃ」と、心身が臨戦態勢になっているのかもしれません。その場合は「今は安全である。ここは安全な場所である」と、しっかり脳に感じさせるアプローチが大切です。

そのためには、働きながら心や体を休める方法を知ることが必要です。

本書では、セルフケアでできる12の方法をお伝えしています。このうち今回は、『「左右の肩ポンポン」で嫌な記憶から離れる』の具体的な方法についてご紹介しましょう。

「左右の肩ポンポン」で嫌な記憶から離れる

嫌な記憶が頭から離れないときに役に立つ対処法があります。

アメリカの臨床心理士で心理学者のフランシーヌ・シャピロが、森林公園を散歩しているときに偶然発見した治療法です。

嫌なことが脳裏をよぎったら、意識的に眼球を左右にすばやく動かすと、気分が楽になることに気づいた、というのです

これは現在、EMDR(眼球運動による脱感作と再処理)というトラウマ治療として確立しています。

人間はレム睡眠中に目がキョロキョロと動き、不要な脳内の情報を処理しています。そのメカニズムを利用したのがEMDRです。

EMDRを応用して、眼球運動に限らず、左右交互の体への入力刺激も有効であるかもしれないということがわかってきました。

すぐできる簡単な方法「左右の肩ポンポン」を紹介します。

手を体のまえで自分自身を軽く抱きしめるようにクロスさせて、左右交互に、肩をポンポンポンポン……とたたくのです。その際、息を吐きながら、嫌なことが自分のなかから抜けていくのをイメージするといいでしょう。

長時間の会議など、職場から抜け出せない仕事中のときでも、座ったまま足のももを左右交互にさするのもいいですね。

仕事上での嫌なことに意識が向いてしまい、それをネガティブにとらえ気分が落ち込むことがあります。人間は元来、ネガティブなことばかりを覚えるようにできているからで、それは生存にとって有利だからです。

敵(ストレス)をよく覚えておくために、ネガティブな感情にすぐ反応できるようになっているのです。

ネガティブ思考は人間の本能であり、悪いことではありません。ただ、それが行き過ぎると、私たちの生活から楽しみや幸せをうばい、健康を損なうことにもなりかねません。

嫌な記憶・思い出との付き合い方には、「安易に自分からやたらと思い出さない」つまり、思い出しそうになったらそれに気づいて、記憶をたどることを意識的にやめる、というテクニックがあり、実際に効果があることもわかっています。

それでも、脳内で起こっていることを脳内で対処しようとするアプローチは、疲れたときにはしんどいこともあるでしょう。

そういうときは、脳ではなく体にアプローチする「左右の肩ポンポン」を試してみましょう。

『働く人の最高の休み方』(佐々木那津/青春出版社)

疲れすぎて休みをとりたいけれど、そういうわけにもいかない日って、ありますよね。しかし、たった10秒でできる、簡単な回復方法があります。「心がポキッと折れそう」「パフォーマンスをもっと上げたい」「仕事と家事を両立させたい」……すべては「心」の元気にかかっています。体の休息は心の休息ではありません。本書では、東大のメンタルヘルスの医師が、長い人生をゆったり生き抜くための心と体の回復方法をやさしく教えます。十分休息することの大事さや、消耗しすぎる前に解決を模索する大切さを提案する一冊です。