オメガには177年もの歴史があります。今回は3つのトピックに絞って解説します。
トピック1:オリンピックの公式計時を担当して約100年
1848年、組立工だったルイ・ブラン氏がスイスのラ・ショー・ド・フォンにある実家の片隅に小さな懐中時計の組み立て工房を開設したことから「オメガ」がスタートします。その後、ルイ・ブランの2人の息子が事業を継承し、本社をビエンヌに移転。1892年にはポケットウォッチムーブメントを小型化して制作した世界初となるミニッツリピーター機能付き腕時計を披露し、世界に衝撃を与えたといいます。
1894年にはムーブメントに最高の達成を意味する「オメガ」の名称を与え、企業名を「オメガ ウォッチ」に改名。その後、1903年までに完成品腕時計のマニュファクチュールとして有名な大企業となり、研究開発機関としての役割も果たしました。
1905年になるとスイス国内でさまざまなスポーツイベントの計時を担当するようになります。その実績から、1932年のオリンピック ロサンゼルス大会から公式計時を担当することになりました。この公式計時は現在も続いていて、1932年から100年後となる2032年の夏季大会(冬季大会は2030年)までオメガが担当することが決定しています。
トピック2:月面着陸という歴史的偉業を達成
オメガでは1957年に3つの伝説的な腕時計が誕生します。「スピードマスター」「シーマスター」「レイルマスター」のいわゆるマスター3兄弟です。そのうち最も後発だったスピードマスターは、世界で初めてタキメーターベゼルを搭載したカーレース用のクロノグラフモデルとして登場。シーマスターの気密性や防水性、レイルマスターの耐磁性をスピードマスターに用いることで、高性能ウォッチが誕生しました。
性能の高さを認めたNASA(米航空宇宙局)は、スピードマスターを公式装備品として採用します。1967年7月、アポロ11号の宇宙飛行士ニール・アームストロング船長が月面着陸を果たした際にもオメガのスピードマスターが携行されたのです。
この歴史的偉業によって、スピードマスターは「ムーンウォッチ」の愛称で親しまれるようになり、今では製品名に「ムーンウォッチ プロフェッショナル」と付くようになりました。
トピック3:精度と品質を追求し続ける
オメガを語る上で欠かせないのが、「コーアクシャル脱進機」の実用化です。発明家ジョージ・ダニエルズ氏は、機械式時計のムーブメントの欠点である摩擦を軽減したコーアクシャル脱進機を考案します。さまざまな時計メーカーに実用化・量産化の打診をしますが、どのメーカーも「現実的ではない」と辞退。しかしオメガだけが、コーアクシャル脱進機の開発に乗り出したのです。
その結果、1999年に新しい脱進機としては約250年ぶりとなる「コーアクシャル脱進機」を開発し、時計史に残る偉業を成し遂げました。ムーブメント内の接触面を小さくして摩擦を抑えたことで、ほぼ注油がいらず、事実上メンテナンスフリー(メーカーは8~10年ごとのメンテナンスを推奨)のムーブメントが誕生しました。それから26年、コーアクシャル脱進機の実用化・量産化に成功しているのはオメガのみです。
精度のあくなき追求を続けるオメガは、2015年にスイス連邦計量・認定局(METAS)が定めた品質基準「マスタークロノメーター」をクリアした時計を販売しています。10日以上かけて8項目のテストをクリアしなければ製品化できないという厳しい基準で、これをクリアした腕時計のみがマスタークロノメーターの認定を受け、販売できるようになるのです。
現在も高い知名度と人気を誇るオメガですが、その裏には歴史的な偉業と徹底した精度・品質管理があります。こうした取り組みを見ると、高級機械式腕時計の値段にも納得がいくと思います。これまでの歴史に思いを馳せながら、オメガで好みの1本を探してみてはいかがでしょうか。