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行政書士の木村早苗です。12月になり、2025年も目の前に迫ってきましたね。2025年といえば、「国民の5人に1人が75歳以上となり日本経済や社会に深刻な影響を及ぼす超高齢化社会の始まり」という問題の年でもあります。25年前、この未来を見据えて作られた制度の一つが成年後見制度でした。

( Life )

2025年問題と成年後見制度

DEC. 30, 2024 11:00
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行政書士の木村早苗です。

12月になり、2025年も目の前に迫ってきましたね。2025年といえば、「国民の5人に1人が75歳以上となり日本経済や社会に深刻な影響を及ぼす超高齢化社会の始まり」という問題の年でもあります。25年前、この未来を見据えて作られた制度の一つが成年後見制度でした。

そして今では後見人にもさまざまな個人や団体が名乗りを上げています。今回は制度のおさらいとともに後見人にはどんな人たちがいるかを簡単にご紹介します。

まずは制度について。成年後見制度とは、親族または本人の申立てにより、認知症や知的・精神の障害により判断能力が不十分な人の権利を守り、保護する援助者を選ぶ仕組みです。

援助者は本人の判断能力の段階により重い順から、後見人、補佐人、補助人とされ、代理権や同意権、取消権など法律行為に関わる範囲が異なります。しかし職務自体はほぼ同じで、大きくは財産管理と身上保護に分けられます。

財産管理では、不動産・預貯金等の管理や大きなお金や権利が動く契約ごとの代理や補助をして守ります。身上保護では、安定した生活や適切な療養看護を利用するために本人の意志を尊重しながら支援していきます。

また後見制度には「法定後見」と「任意後見」の違いもあります。前者は本人の判断能力が不十分になった後で家庭裁判所の選んだ専門家が後見につく仕組み、後者は本人の判断能力があるうちに依頼したい人(か専門家)に内容等含めて契約し、必要になった段階で契約した人に後見人(後見監督人)の業務をしてもらう仕組みです。

この制度は、従来からあった判断能力の不十分な人を保護する仕組みの問題点を改善した形で、2000年(平成12)4月1日に施行されました。内容の改善と施行には、1997年に介護サービスを受ける人が自ら選択するという介護保険法の制定が背景にあるといいます。この円滑な運用には本人の権利保護が重要なこと、そして社会との共生を目指す理念である「ノーマライゼーション(normalization)」(※)の流入なども大きく影響したとされています。

※高齢者や障害者を隔離するのではなく、共に暮らす社会が望ましいとする福祉の考え方

なんとかならんの!? 成年後見制度

  • 「成年後見制度の利用状況」……「成年後見制度利用促進に関する現状」厚生労働省社会・援護局の資料から抜粋。最高裁判所事務総局家庭局のデータを元に成年後見制度利用促進室が作成した

しかし、成年後見制度はまだまだ使いづらい状況です。最高裁判所事務総局家庭局の調査によると、例えば令和2(2021)年の利用者数は約23万人。認知症者の推計数約600万人だけで考えても3.2%にしか達しません。データの時期が異なるので今回は計算に含んでいませんが、知的障害や精神障害の方を加えるとさらに割合は減ることになります。

個人的にも、できるなら使いたくはありません。なぜなら、この制度は一度使うと本人の判断能力が回復しない限りはやめられないからです。

例えば、事故で判断能力が失われた夫名義の一戸建てを売却するために後見人をつけたとしたら、売却が終わったとしてもその人が亡くなる時まで後見人から財産管理を受けることになります。

夫と妻の収入や財産を分けて管理していれば問題は少ないですが、後期高齢者世代なら家の財産の大半が夫(父)の名義であることも珍しくありません。家族用の資金が含まれていても本人の財産と見なされるため、法定後見であれば家庭裁判所が決めた専門家(いわゆる他人)に管理されることもあります。

しかも管理のための報酬も毎月支払わなくてはなりません。若い人でも、事故や病気で突然判断能力を失い後見制度を使うことになれば、少なくとも数十年はそれが続きます。そのほかにも成年後見人の考えが本人の要望より優先される可能性が高いことや、本人の判断能力の変化に沿った交代がされにくいなどの問題が指摘されていますが、二の足を踏む原因の一番はこの「一度使うとやめられない」点だと思われます。

元気なうちに探すための後見人情報

法務省では2022年から法改正の準備を進めていますが、改正法の運用は恐らく2026年以降になるでしょう(法務省-成年後見制度の見直しについて)。

といっても、さまざまな理由から後見制度を利用する必要のある方もいるはずです。そこで後見人候補を選ぶ上で知っておくとちょっと便利かも、という情報をまとめてみました。後見人と一口にいってもさまざまな人がいるのです。ちなみに家庭裁判所が法定後見人を選ぶ時の候補者リストには、弁護士会、司法書士会、社会福祉士会からの推薦者が並ぶといわれています。

1.士業(専門家)

士業はそれぞれの専門業務が決まっているため、できない業務がある場合は他士業と協力して対応します。個人はもちろん士業によっては後見専門団体もあるので、そちらで相談してもよいでしょう。

i.弁護士

後見申立ての代理から相続トラブルなど幅広い問題に対応できるのが強みです。外部のチェックが家庭裁判所からの年1回しかないため、日本弁護士連合会では不正を防止するためにも、「弁護士成年後見人信用保証」(※2)に入会済みの弁護士を優先的に候補者リストに推薦するなどの工夫をしています。

依頼した弁護士が業務を辞退した時にきちんと引き継いでくれるか、身上保護まで目が行き届くかは個人による点、報酬の高い点などで気軽さは少ないですが、企業経営者や資産の多い人、相続問題が起こる可能性がある人には心強い存在です。

各都道府県の弁護士会が高齢者・障害者支援センター(東京弁護士会の「オアシス」、大阪弁護士会の「ひまわり」など)を設けていますので、お近くのセンターを探してみてください。

※2日本弁護士連合会が保証人となり、弁護士成年後見人等の不正が起こった際に損害賠償債務の保証をする制度

ii.公益社団法人 リーガルサポート

  • 公益社団法人 リーガルサポート※公式サイトより引用

1999年12月に設立された司法書士の後見人団体です。現在は各都道府県に50支部、8,000人超が所属しています。

医療や福祉を含む入会前研修のほか、2年ごとに15時間以上の研修の受講義務、家庭裁判所(年1回)より短期間(6カ月に1回)での報告義務があります。各地域の中核・社会福祉機関や介護福祉関係者と協力した日常生活の補助、財産の管理保全に関する親族後見人への助言や支援のほか、後見申立ての書類作成など幅広く支援を行います。

iii.権利擁護センター ぱあとなあ

  • 権利擁護センター ぱあとなあ※公式サイトより引用

公益社団法人日本社会福祉士会と各都道府県社会福祉士会が1999年に設立し、運営する成年後見人団体。「成年後見人材育成研修」と「名簿登録研修」の終了後、福祉分野の相談援助ができる成年後見人候補として登録されます。

業として後見申立ての補助等は行えないため、必要な場合は専門家と連携し、市町村長への申立てに向け担当窓口につなげています。

ⅳ.公益社団法人 コスモス成年後見サポートセンター

  • 公益社団法人 コスモス成年後見サポートセンター※公式サイトより引用

2010年8月に設立された行政書士の成年後見人団体です。入会前研修を義務づけ、入会後も法改正や地域に合わせた研修を定期的に行っています。

また家庭裁判所(年1回)より短期間(3カ月に1回)での身上保護内容や財産管理の報告義務、移行型任意後見契約でも3カ月ごとに財産管理の報告義務があります。日常生活の補助から後見申立ての書類作成なども行っており、家庭裁判所に法定後見人受託先として認められる都道府県も増えてきています。

2.法人後見

後見人には法人もなることができます。各士業や専門家の強みを集約させるハブとなって一つのサービスを提供している団体を始め、さまざまな法人がありますので探してみてください。

i.一般社団法人成年後見センターペアサポート

東京にある成年後見専門の社団法人。財産管理と身上看護、それぞれのプロである弁護士と社会福祉士がペアになって担当します。

ii.特定非営利活動法人早稲田成年後見サポートセンター

東京にある成年後見専門のNPO法人。見守りから死後事務委任契約まで幅広く対応し、地域の行政や機関、ケースワーカーなどの福祉専門職と協力を進めています。

3.市民後見人

資格者ではない親族以外の市民が市町村等の研修や支援を受け、家庭裁判所から選任されて後見業務を行います。1人では不安を感じる人の金銭管理や介護・福祉サービスの利用援助が中心です。

全国で4分の1の市町村が育成や活動支援に取り組んでおり、神戸市のように市民後見人を育成する神戸市成年後見支援センターの運営母体である神戸市社会福祉協議会が後見監督人としてつく自治体もあります。

使いづらさはあるものの、前回の「相続にも影響する、似て非なる仕組みにご注意を - リバースモーゲージとリースバックのはなし」で紹介したような悪徳商法から、認知症の傾向や障害のある方を守る上では心強い手段の一つになるともいます。ご興味のある方は実際に相談や情報の収集を行ってみてはいかがでしょうか。


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※ 本記事は掲載時点の情報であり、最新のものとは異なる場合があります。予めご了承ください。

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