この連載では、『美術館が面白くなる大人の教養 「なんかよかった」で終わらない 絵画の観方』(KADOKAWA)から一部を抜粋し、有名な絵画に秘められた物語や歴史を読み解いていきます。絵画に描かれた物語や歴史を知れば美術館に行くのが楽しくなるだけでなく、あなたの教養のレベルが1段階上がるかもしれません。
今回取り上げるのは、レンブラント・ファン・レインの『ガニュメデスの誘惑』という作品です。
以下、『美術館が面白くなる大人の教養 「なんかよかった」で終わらない 絵画の観方』から抜粋します。
モチーフはギリシャ神話の誘拐劇?
お尻が見えている赤子が、鷲により服を咥えられています。赤子の顔はこちらを向いていますが、その表情はしかめ面になっています。
なんともクスッと笑ってしまいそうな絵画ですが、実はこれは誘拐の場面を描いた作品です。
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レンブラント『ガニュメデスの誘惑』
ギリシャ神話には一人の神がいます。気に入った人物を見つけたら男性であろうと女性であろうと自分のものにしないと気が済まない、何にでも変身する神様。神々の中でも大きな権力を持つその神の名はゼウスと言います。
これはそんなゼウスに見初められた少年の物語です。
ある時ゼウスが地上を見ていると、一人の美しい少年がいるのを見つけます。羊飼いの少年ガニュメデス。その美しさは、人間にしておくには勿体無いほどだとゼウスは感じます。なんとしても自分のものにしたい。そしてその美しさを永遠のものにしたい。そんな欲求をゼウスは抱くのです。
ゼウスはギリシャ神話の最高神、その欲求を止められる者は誰もいません。
思い立ったが吉日、ゼウスは鷲に変身すると地上に向かい、そしてそのままその少年、ガニュメデスを天井の神々の世界に連れ去ってしまうのです。
そして天界に連れてくると、ガニュメデスを神にしてしまい、自分の給仕として永遠に仕えさせるのでした。
なんとも酷い話ですね。この絵画はゼウスによるそんなガニュメデスの誘拐の場面を描いた作品です。
レンブラントの作品ではガニュメデスは、少年ではなく赤子として描かれています。そしてガニュメデスをよく観ると、恐怖のあまりお漏らしをしてしまっています。自分の体よりも大きい鷲が自分に向かってきて、しかも自分を連れ去ろうとしたら怖いのは当然ですよね。そんな細部までの描き込みもあり、誘拐の場面がポップに表現されています。
『美術館が面白くなる大人の教養 「なんかよかった」で終わらない 絵画の観方』(井上 響 著/秋山 聰 監修/KADOKAWA 刊/定価2,200円)
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美術館に行って楽しめる人、楽しめない人の違いは、ちょっとした観方の差だった!? 美術館に行くのが好きなのに、絵画に興味はあるのに、なんとなく楽しみきれない。そんな悩みを抱えている人は少なくないと思います。その効果的な解決方法は、自分なりの絵画の観方を身につけることです。そうすることで、まるでピントの合ったメガネをかけるように、色鮮やかに、そして今までと違ったように作品を鑑賞することができます。でも残念なことに、絵画の観方は基本的に誰も教えてくれません。そこで、東大の美術史で学んだ筆者が今回、こっそりと絵画の観方、そのコツをまとめました。有名絵画を含む130点以上の作品を使って、絵画の観方を解説をしています。具体的に本書で解説している観方の秘密は「物語」と「歴史」の知識。この2つの知識を身につけることで、自然と絵画の観方が身についていきます。
