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10 日本No.1ヘッドハンターが教える、強いキャリアのつくり方

仕事が出来ない部下に共通する、「やってるつもり」の罠とは?

JUL. 02, 2025 11:00
Text : 渡辺秀和
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戦略コンサルタント、投資銀行・ファンド、外資系エグゼクティブ、起業家など1000人を超えるビジネスリーダーのキャリアチェンジを支援してきた渡辺秀和氏(株式会社コンコードエグゼクティブグループ 代表取締役社長CEO)が、キャリアアップを目指すビジネスパーソンの疑問・お悩みに答えます。

今回のお悩みは「頑張っているのに成果が出ない部下を、どうやって育てればよいでしょうか」です。

Q:頑張っているのに成果が出ない部下を、どうやって育てればよいでしょうか
A:本人からの報告を「鵜呑み」にするのではなく、「高い解像度」で行動を把握することが、育成の第一歩です

「やってます」は本当か? 上司の“鵜呑み”がもたらす悪循環

「本人は頑張っているはずなのに、なぜ一向に成果が出ないのか?」

部下の育成において、そのような悩みを抱える上司は少なくありません。

成果が出ていないにもかかわらず、部下からは「ちゃんとやりました」という報告が上がってくる。それを聞いた上司は「では、別のやり方を試してみよう」と指示を出す。なのに、結果は変わらない――。このような状態が続くと、部下のパフォーマンスが上がらないばかりか、組織としてもビジネスチャンスを逃したり、評判を落とすことにもなりかねません。

しかし、適切なマネジメントを行えば、成果を出せずに伸び悩んでいた部下がハイパフォーマーに変貌する可能性は充分にあります。キーワードは、「鵜呑みにしない」です。

上司のアドバイスでハイパフォーマーへ変貌

最初は成果を出せずにいたものの、上司からのアドバイスをきっかけにハイパフォーマーへ転じた、ある若手社員の例を紹介しましょう。

メーカーの営業部に勤める彼は、ある商品の契約獲得というミッションを担います。はじめ、商品をA社に提案しますが、契約はとれませんでした。そこで上司は、次に違う業界のB社への営業をアドバイスしますが、またしても商談不成立。さらに違う業界のC社への訪問を勧めますが、結果は一緒でした。最終的に、その若手社員は「この商品には競争力がないのだと思います」と上司に報告してきたのです。

さすがにおかしいと思った上司は、「どんな資料を使ってプレゼンしたの?」「具体的にどんな説明をしたの?」と、部下がとった行動の内容を深掘りしました。

すると、驚きの実態が発覚しました。そもそも説明自体がわかりにくく、営業研修で教わった内容からかけ離れた、我流のプレゼンになっていたのです。訴求すべきポイントもズレており、商品の魅力が伝わらない話し方をしていました。さらに、彼が作成した営業資料も、ごちゃごちゃとして論旨が不明瞭なものでした。

そこで上司は、部下にあらためてロールプレイングを実施し、プレゼンの課題を一緒に洗い出しました。資料の修正点や正しい話し方などのアドバイスを受けた部下は、再度クライアント企業を訪問。その結果、当初とはまるで別人のように、次々と契約を勝ち取っていったのです。

報告を鵜呑みにせず、部下の頭の中の「世界観」に踏み込む

成果が出ないビジネスパーソンに共通する台詞があります。それは、「やってるんですけどね……」というフレーズです。

前述の営業部員も、決してやる気がなかったのではなく、本人なりには一生懸命プレゼンしていたのでしょう。彼の頭の中にある世界観――“これが正しい仕事のやり方だ”という基準に照らせば、きちんと営業している「つもり」だったはずです。しかし、その基準自体が間違っていたために、成果が出ない状態が続いていました。

「ちゃんとやったのですが、上手くいきませんでした」という部下の報告を鵜呑みにせず、このような本人の「世界観」を理解した上で、行動のズレを正してあげることこそ、上司の役割と言えます。

部下を「ハイパフォーマー」に変える3ステップ

成果が出ない部下に対し、上司がとるべき支援の基本ステップを以下に整理します。

(1) 部下の行動の様子を観察し、細かなファクターまで棚卸しをする

まずは、部下の行動をより細かな粒度で把握しましょう。行動の内容だけでなく、クライアントとの対話における声のトーンや抑揚、熱量、テンポ、間の取り方など、話し方のニュアンスを構成するファクターまで、つぶさに確認していきます。コミュニケーションとは、「内容」以上に「話し方」が結果を左右するので、そこを確認することがとても重要なのです。

(2) 鍵となるファクターに絞って、正しい行動の仕方をアドバイスする

次に、成果を出せていない要因となっているファクターを洗い出します。たくさん出てくるかもしれませんが、すべてを一気に改善するのは困難です。この段階では、特に効果を期待できそうな2~3個のファクターに絞り、部下と一緒に改善に取り組みましょう。

(3) 成長や成功を部下とともに喜ぶ

(2)の後も部下の行動を観察し、よい変化が見られたら、「いい感じになっているね」と声がけをします。さらに、その行動で成果が出たら、本人と達成感を分かち合いましょう。「正しくやれば成果を出せる」という感覚を掴むことで、部下の仕事へのモチベーションが自然と高まっていきます。

もしも、また部下のパフォーマンスが落ちてしまったときには、再度(1)~(3)を実施し、軌道修正を図りましょう。そのためにも、部下の行動を日頃から丁寧に観察し、その都度覚えた「違和感」をぜひ大切にしていただきたいと思います。クライアントとの応対の様子や電話の頻度、仕事中の表情、作業スピードなどにも、微細な変化は現れるものです。それを見逃さないことが、素早い軌道修正の鍵となります。

真の意味での「優しい上司」であるために、私たちにできること

部下の代わりに仕事を抱え込み、自分でこなす上司は、一見優しそうに映るかもしれません。しかし、見方を変えれば、部下の育成を放棄しているとも言えます。

本質的な意味で部下を「育てる」ためには、以下のような「良循環」に、部下をいち早く乗せることが大切です。

上司が部下の行動の改善点をアドバイスし、修正する。結果、短期間で成果を出すことができ、周囲からも高く評価される。すると、本人のモチベーションがグッと高まり、自ら行動をブラッシュアップするようになり、さらに高い成果を生み出せるようになる。これが「良循環」です。

このような状態になるためには、部下自身にも、アドバイスを素直に受け入れるスタンスが必要です。冒頭に登場した営業部員も、当初は自分なりのやり方に固執し、成果を出せずにいました。しかし、上司のアドバイスを受け入れ、プレゼンのやり方をすぐに修正したことで、「良循環」に乗ることができたのです。素直に人のアドバイスを聞けるかどうかが、ビジネスパーソンとして成長する上で大きな鍵になるでしょう。

部下の成長を諦めず、本人の「世界観」に踏み込み、根気よく伴走していく。真の意味での「優しい上司」による的確なサポートで、社員一人ひとりが高い価値を生み出せるようになれば、組織の競争力はさらに強化されていくでしょう。ぜひ、愛情をもって部下に接していただき、そのポテンシャルを最大限に引き出していただきたいと思います。


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※ 本記事は掲載時点の情報であり、最新のものとは異なる場合があります。予めご了承ください。

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