創業90周年を迎えた吉田カバンが、ブランドの代表作である「PORTER(ポーター)」の「TANKER(タンカー)」シリーズにフォーカスしたポップアップを銀座・和光で開催中だ。
これまでヨーロッパやアメリカなどでは行われてきたものの、意外にも国内でタンカー3色が揃うポップアップは初。ブランドの節目にふさわしい、“原点回帰”と“革新”が同居する展示空間を紹介しよう。
進化したポーター「タンカー」の現在地、植物由来の生地はどうやってできる?
今回のポップアップ最大の見どころは、東レ株式会社のナイロン素材「エコディア N510」を使って新しく生まれ変わったタンカーが、3色すべて一堂に会している点にある。セージグリーン、アイアンブルー、ブラックと順次発売されてきたが、直営店を含めてもフルラインナップが揃う場所はとても貴重だ。
「エコディア N510」は、東レと吉田カバンが世界で初めて量産化に成功した、100%植物由来のナイロン。石油ではなく、トウモロコシやヒマといった植物を原料にして生まれた。このナイロン素材を含む、3つのレイヤーで構成されたタンカーシリーズの象徴そのものだといえる。
ただし、サステナブル素材だからといって、品質を妥協しているわけではない。この刷新にあたって約2年半の歳月をかけ、撥水性や耐久性など、従来のタンカーに求められてきた基準を下回らないよう、何度も試験と調整を重ねたという。
生地は、トウモロコシとヒマの種などからオイルを抽出し、チップ状のペレットに加工した後、糸へと紡ぎ、北陸の職人が織り上げて染色される。完成した生地は国内の工房にて縫製され、タンカーバッグへと姿を変える。この一連の工程をすべて日本国内で完結している点も、吉田カバンらしいクラフツマンシップの表れだろう。
今回のポップアップでは、そんな新しい素材がどのように作られているのかを解説するムービーや原料展示も用意されている。トウモロコシやヒマから、いかにナイロンが紡がれるのか。その工程を視覚化することで、プロダクトの背景にある物語がより深く伝わってくる。
直営店よりも豊富にラインナップ!? 40型のTANKERが勢ぞろい
展示エリアの中心には、タンカーを象徴するセージグリーンのバッグが鎮座。新タンカーのデビュー時、最初に発表された色もこのセージグリーンで、植物由来という素材の背景とグリーンがもつ自然のイメージが折り重なり、展示の演出に一貫性をもたらしている。
色だけでなく、デザインのバリエーションも見逃せない。かつてのタンカーは全50型展開だったが、現代のライフスタイルに合わせて40型に厳選・再編された。
一方で、40年前から姿を変えずに愛され続ける「2WAYドキュメントバッグ」など、原型を残したアイテムも多数販売されている。特にこの2WAYドキュメントバッグは、93歳を迎える熟練職人が現在も現役で製作しており、タンカーの歴史とクラフトマンシップを象徴する存在でもある。
ダッフルバッグやバックパックといった大ぶりのトラベル系アイテムも並ぶ中、特に大きな注目を集めそうなのが受注生産の「キャビネット」だ。
タンカーの生地を贅沢に使用したこのキャビネットは、約60万円という価格ながらファンの厚い支持を獲得。用途も多彩で、服の収納、シューズラック、さらには本棚として愛用する人もいるという。今回のポップアップでは3色・5台限定の受注枠が用意されている。
クラシックな見た目の中に最新技術を織り交ぜ、ブランドの哲学を貫きながら時代とともに進化を遂げる。タンカーは吉田カバンが90年かけて培ってきた精神を象徴する存在だ。その歴史と進化を体感できる今回のポップアップ、商品によってはすでに完売しつつあるという。ぜひ早めに足を運び、その魅力に広く触れてみてほしい。
TANKER POPUP
- 開催場所:和光 本店地階 アーツアンドカルチャー(東京都中央区銀座4丁目5−11)
- 営業時間:11時~19時