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トランプ大統領の暗号資産政策、真の狙いは? キーワードは「RWAトークン化」

JUN. 04, 2025 17:00
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現在、ステーブルコインを中心としたRWA(現実資産)のトークン化がホットトピックとなっています。トランプ二次政権発足に伴う米国規制緩和がRWAトークン化にどう影響するのか、その恩恵は何か、政権がWeb3領域でのドル優位性保持を狙う可能性について、SBI VCトレード株式会社 市場オペレーション部が解説します。

トランプ再選と暗号資産市場

2025年1月20日、ドナルド・トランプ氏が第47代米大統領に就任し、再び米国の政権を握ることとなった。昨年11月6日に同氏の勝利が確実視されると、ビットコインは史上最高値を更新。かねてよりトランプ氏が主張していた暗号資産規制の緩和への期待が高まり、市場の活性化に拍車をかけた。

しかしその後、投資家心理は急激に変化する。トランプ氏は中間層以下の低所得層への支援や国内製造業の復活を掲げ、「生産立国」となるべく急進的な政策を次々に打ち出したことで、景気後退や貿易摩擦の再燃が懸念された。

暗号資産市場ではリスク回避の動きが強まり、4月6日時点ではアルトコインを中心に時価総額が41%下落、9,500億ドルまで縮小し、VC(ベンチャーキャピタル)投資も2017~18年水準まで落ち込んだ。

一方で、このような不安定な市場環境下では、資産の「質」へのシフトが進行した。インフレの進行や政治的不安定化を背景に、暗号資産の中でもより信頼性の高い資産への逃避需要が高まり、価値の保存手段(ストア・オブ・バリュー)としてのビットコインに資金が集中。長期保有者によるアルトコインからビットコインへの資金流入も顕著となり、4月中旬に入るとビットコインの市場占有率は63%にまで上昇した。

4月後半を過ぎると、SECによるBinanceに対する訴訟取り下げや規制改革、ETF(上場投資信託)の新規設定が進み、機関投資家による資金流入が加速。これが再びビットコインの下落幅を抑え、価格上昇の要因となった。

法整備と規制緩和:トランプ政権のデジタル戦略

2025年1月23日、トランプ政権は「デジタル金融テクノロジーにおける米国のリーダーシップ強化」を掲げた大統領令を発令した。これにより、ブロックチェーン技術の革新支援、CBDC(中央銀行デジタル通貨)の導入禁止、さらに暗号資産の連邦規制枠組み策定を目的とする作業部会の設立が指示された。

この部会は、ステーブルコインを中心とした法制度の枠組みや、国家備蓄としてのデジタル資産の活用可能性を検討し、180日以内に大統領へ報告書を提出することが求められている。

これと連動する形で、SECでは暗号資産専任のタスクフォースが再建された。目的は長年の規制不透明性の解消にあり、より明確な登録制度と執行戦略の策定が進められている。 2~3月にはCoinbase、Kraken、Gemini、OpenSeaなどの企業に対する調査終了や訴訟取り下げが相次いで発表され、Binance、Ripple、Tronなどへの対応も一時停止されるなど、大きな方針転換が進んでいる。

RWAトークン化がもたらす金融の変革

こうした法整備と規制緩和は、暗号資産市場の中でも特にRWA(現実資産のトークン化)やステーブルコインの利用拡大に直接的な影響を及ぼしている。RWAの市場規模は2023年1月の50億ドルから、2025年4月には200億ドルまで拡大(図表1)、ステーブルコインを含めると2,500億ドル規模にまで成長。

  • 出典:RWA.xyz Global Market Overview

さらには2030年に30兆ドル規模に達するという見方まである状況だ。

RWAには、従来の金融資産が即時決済可能なブロックチェーン上で取引され、透明性や効率性が格段に向上するという特性がある。金融各社の管理に依存する取引と異なり、ブロックチェーン技術を用いることで分散型台帳とスマートコントラクトによって24時間365日、取引・決済が自動的に処理される。

さらに、RWAは取引履歴や所有権などが透明に記録・追跡可能なため、従来の金融商品が抱えていたトレーサビリティの課題も克服できる。これにより、より幅広い投資家層の参入が期待され、金融の民主化が進む可能性がある。

また、米国債を担保とするトークン型金融商品や、不動産、株式など多様な資産のトークン化も進展していくと予測される。以下は現時点でのRWAのアセットクラス別の保有を表している(図表2)。

  • 出典:RWA.xyz

RWA市場のさらなる拡大は暗号資産運用の多様化をもたらすかもしれない。規制緩和により同市場への資金流入が加速することで流動性が高まり、今まで暗号資産分野へ参入していない顧客層も手が届くようになる。その結果RWAのみならず、ステーブルコインを介して様々な暗号資産・DeFiプロジェクトなどの活性化が期待できる。  

現在のステーブルコインの多くはドル担保型であり、トランプ政権がCBDCを推進しない一方で、ドルベースのステーブルコインを支持する姿勢は、結果的に米国の金融主導権をオンチェーン経済においても強化することにつながるだろう。

この姿勢を維持することで RWAのオンチェーンと比例するように、Web3分野においても担保用のドルが市場の大半を占めるようになる。このドルの強さを獲得できることはトランプ政権の狙いの1つとなっているかもしれない。


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※ 本記事は掲載時点の情報であり、最新のものとは異なる場合があります。予めご了承ください。

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