ダイソンは5月22日、世界でもっともスリムという直径38mmのコードレススティック掃除機「Dyson PencilVac」(以下、PencilVac)を発表した。新製品発表会にはダイソンの創業者であるジェームズ・ダイソン氏も来日し、PencilVacに搭載された最新技術や機能性について語った。
モーターやダストビンすべてが直系38mmの“筒”に
新モデルでまず注目したいのは、直径38cmのスリムな本体デザイン。この直径38cmというのは、ダイソンのスリムでコンパクトなドライヤー「Dyson Supersonic r ヘアドライヤー」と同じ細さとなる。
モーターやダストビン、バッテリーというすべての掃除機のパーツを38mmの本体に収めるため、ダイソンは同社最小となる超小型モーター「Dyson Hyperdymium 140kモーター」を開発。このモーターは500円玉とほとんど同じサイズの小ささだが、毎分14万回転というこちらもダイソン最速の回転数によって、強力な吸引力を生みだしている。
ちなみに、ダストビンのサイズもスリム化する必要があったため、集塵方式はサイクロン式からフィルター式に。ゴミを吸い込んでも吸引力が落ちにくい「Dyson 二段階リニアダストセパレーションシステム」を採用している。
浮いているような操作感の新開発ヘッド
もうひとつの注目ポイントが、PencilVac用に開発されたFluffycones クリーナーヘッドだ。大きな特徴は、名前の由来ともなった4本あるコーン(円錐)形状のブラシ。
外側が細くなったコーン型ブラシは、ブラシ表面に長い髪の毛が巻き付いても、ブラシの回転力で髪を外側に押し出す構造だ。このため「掃除後にブラシに巻き付いた髪の毛をカットする」という、ブラシ付き掃除機によくある面倒な作業が必要なくなるという。
ヘッド前後に並んだブラシは、前方と後方のブラシを逆回転させることで床との摩擦を減らす効果がある。軽い力でヘッドを前後左右に滑るように移動させられ小回りが利くので、障害物が多い場所も最小限の力で掃除できる。
ダイソン史上もっともスリムなボディに、狭い場所でも取り回しやすい滑らかな掃除感――。Fluffycones クリーナーヘッドを搭載したPencilVacは、狭くて物が多い日本の住宅にピッタリの製品だ。ジェームズ・ダイソン氏はプレゼンテーションの最後に「おそらく、これを買ったらほかの製品には戻れない」と、新製品に対する自信を見せた。
ジェームズ・ダイソン氏が強調する「小さくする」ということ
発表会のあと、ジェームズ・ダイソン氏が国内メディアからの取材に応えた。その中で、日本のユーザーは新しいテクノロジーや製品を小型化することについて理解があり、日本で新製品を発売することは重要、かつよいインプレッションが得られるとした。
ダイソン氏が強調していたのは「とにかく小さくしたい、材料を減らしたい、効率化したい」ということ。製品が小型化して製造に必要な材料が減ることは、持続可能な社会につながっていく。そして日本には「小さくて質のよいもの」に対するポジティブな価値観があるため、ダイソンの方向性と重なるところが多いのだろう。今回の新製品は日本の住環境を意識したものではあるが、それについて「特別な研究は必要なかった」(ダイソン氏)と語ったことからも、(すべてではないにしろ)価値観の一致を見いだすことができる。
新製品に関する具体的な部分では、38mmという直径にはこだわったそうだ。「小さなモーターを作りたかった」(ダイソン氏)と合わせて、直径38mmには「Dyson Supersonic r ヘアドライヤー」という既存の製品が存在することから、ノウハウもあったのだろう。いわゆるハンドルとしては最小クラスであり、握りやすい。ただダイソン氏は「今のところは」と付け加え、ひょっとしたらもっと細いほうがいいのかもしれないとも。研究開発は続けているだろうし、将来的にもっと細くなったコードレススティック掃除機が登場するかもしれない。
また、ダイソンの掃除機といえば「サイクロン方式」だが、今回のPencilVacはサイクロン方式ではない(フィルター方式)。さすがに直径38mmの本体にサイクロンを内蔵するのは無理がある。ただ「吸引力は落ちておらず、吸引力というダイソンのアイデンティティは損なわれていない」(ダイソン氏)とした。