まわりに振り回されず「淡々と」「粛々と」「黙々と」、自分のやりたいことをし続ける――大谷翔平、井上尚弥、藤井聡太といった現代のスターをはじめ、優秀な若者の共通点は"隠れて努力できる人"であること。
「意識高い系」でも「冷笑主義」でもない、令和時代の新しい生き方を考察した1冊『ゆるストイック』(佐藤航陽 著/ダイヤモンド社)から一部を抜粋してご紹介します。
「28歳までの脳」はチャンス
年々、「時がたつのが早い」と感じないでしょうか。
私たちは「人生100年時代」と言われる時代 を生きています。ただ、時間がもたらす感覚の変化や、加齢に伴う身体と精神の成長リズムに気づかずにいると、無意識のうちにそのワナにとらわれてしまうかもしれません。
人間の身体は18歳頃に完成します。そして、「20歳ごろまでに人生の主観的な時間感覚の80%が終了する」とすら言われています。
その理由としては、「経験してきた分母の時間が増えることで時間感覚が薄まるからだ」という説があります。
加えて、身体の代謝が落ちることにより感覚が鈍化し、また新しい経験が減ることで脳が記憶を圧縮し始めるとも言われています。
さらに、「前頭前皮質」と呼ばれる脳の領域が、私たちの意思決定の司令塔として働いています。
前頭前皮質は、理性を司り、リスクを計算し、決断する能力を備えています。その部位の発達が終わるのが、20代後半で、だいたい「28歳ごろ」だと言われています。
前頭前皮質が未発達なことが原因で、子どもや思春期の若者は失敗しやすく、いわゆる「黒歴史」を作りやすいのです。
この部位が成熟すると、理性的で安定した意思決定が可能になります。
しかし、前頭前皮質が発達を終えることにはデメリットもあります。前頭前皮質が発達を終えると、「興味を持って新しいことに挑戦しよう」という探索行動が減少し、過去の経験に基づいた「効率的な行動」だけを取るようになります。
すなわち、大人は子どもよりも失敗しにくくなりますが、同時に新しいことに挑戦しにくくなってしまいます。これは私たちの脳の発達構造に根ざした自然な現象と言えるでしょう。
興味深いことに、こうした「身体と脳の成長のタイムラグ」が人類の進化に大いに貢献 してきました。
多くの生物では身体と脳の発達はほぼ同時ですが、人間の脳は28歳まで未成熟であるこ とは、進化的に大きなメリットがありました。
未成熟な脳は好奇心を持ち、新しいことに挑戦しやすい性質を備えています。
この特徴により、私たちは新しい土地に向かい、未知の動植物に触れ、数多くの試行錯 誤を繰り返すことができます。
その結果、種としての存続に有利な経験を積むことができました。つまり、人類の繁栄は、未成熟な脳による試行の積み重ねから生まれたと言えます。
『ゆるストイック』(佐藤航陽 著/ダイヤモンド社/1,760円)
稀代の起業家が語る、次の世代の生活スタイルとは----。優秀な若者は、「淡々と」「粛々と」「黙々と」自分のやりたいことをし続けることができる。まさに、「ゆるストイック」を体現している。この生活スタイルを身につけるために、「運・努力・才能」を学び直し、生き方を変えよう。