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世間が見落としている「トランプ関税」以上に懸念すべき問題

Updated APR. 24, 2025 15:44
Text : 澤上龍
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トランプ関税発動後、先の見えない状況が続いている世界経済。長期投資家はどのようなスタンスで未来を見ればよいだろうか。さわかみ投信 代表取締役社長の澤上龍氏が解説する。

「トランプ関税」が真に意味すること

トランプ関税によって世界の株価が急落した。トランプ氏のブラフだと高を括っていたものが、まさかの最悪のカードを切ってきたからだ。

しかし一転、中国を除く各国への関税は10%の基礎部分を除き90日間の停止。他方で報復関税を表明した中国に対しては関税を引き上げ、貿易戦争が過熱感を帯びた。

と思ったら二転、米国にとっても重要なスマートフォンやPC、半導体製造装置を除外すると発表。さらには閣僚レベルの通貨・関税交渉の先頭となった日本との会談に急遽、トランプ氏自らが出席すると言って日本首脳陣を驚かせた。

一連の騒動により、世界の企業、そして中央銀行は先行き不透明で先手を打てず、トランプ氏の言動に振り回される展開。無論、株価も乱高下を繰り返す。一体三転目は何が飛び出してくるのだろう……。

基本関税の発動後、即時発動した追加関税導入の90日間の猶予。結局、トランプ氏にとって関税は真に重要ではなく、各論を好条件で決着するためのディールだったのだ。

驚きなのは、世界を思考停止させるほどの関税政策を初手で打ったこと。「本当に殴るぞ!」とブラフで脅すのではなく、一発ぶん殴ってから相手の譲歩を引き出す。

米国民の富と信頼を一時的に奪ってでも世界にワンパンを入れる度胸と無謀さは、国際社会のなかで彼一人しか取れない行動だ。さて、こうした先の見えない状況で、長期投資家はどのようなスタンスで未来を見ればよいだろうか。

  • 長期投資家が懸念すべき事項はトランプ関税ではなく……?

直視すべき問題は「関税」とは別にある

関税がフルに発動されると世界経済は甚大なダメージを被る。しかし問題は関税ではない。この十数年の間に蓄積された負の遺産の方がよほど大きい。

リーマン・ショック以後、世界は様々な危機を経て、コロナ禍という未曽有の事態をも乗り越えてきた。しかしこれは、マネーのばら撒きによる延命にしか過ぎないと私は考えている。

経済が力を失えば政府・中央銀行が支えればよい……その姿を繰り返し見るうちに、マーケットも国民も「政府が何とかしてくれる」という甘えが当たり前となった。

トランプ関税はそのような甘えを一刀両断。すなわち、甘えが通じないほどの経済混乱をきっかけに、過剰にあふれたマネーの逆流(収縮)が始まる。

株主価値向上などの改革によって企業利益が上がった側面は否定しないが、足元、企業はどれほど強くなったか。この先10年、利益を上げ続けられる力を手に入れたのだろうか。改革による利益改善に対して、単にあふれたマネーが向かっただけではないか。

過剰流動性はあらゆる資産の価格を引き上げる。本来、マネーは低いところから高いところへと流れ、シーソーのような価格変動をもたらすが、昨今のマネーは「流れる」のではなく「あふれる」だ。水かさが増して全ての資産価格が上昇した。

仮にマネーの逆流、つまり収縮が起これば、全ての資産価格が下がることを意味する。トランプ関税は、見方によっては蓄積した負の遺産を破壊するための一撃であり、未来から見たら「健全化への強烈なトリガー」となるかもしれない。

"生活に必要なモノ・サービスを提供するのは誰か"に注目を

これから世界はさらに混乱する。化け物とは言え人間であるトランプ氏も、ある程度の段階で常識的な決着を模索するだろう。米国民に見せるための「手柄」を獲得次第だ。

しばらくは過剰マネーが水面を大きく揺らす展開が続くだろうが、いずれにせよ方向は下だ。されど、いかに資産価格が下がっても我々の生活が消滅することはない。生きている限り生活は続く。

すなわち今、注目すべきは生活に必要なモノ・サービスを提供するのは誰かということ。経済悪化が現実となれば、節約という名目で趣向品や贅沢品は生活者から目を背けられる。しかし必要なモノはインフレが進もうと買わなければならない。そういった企業選別が問われるマーケットに今後シフトしていくだろう。


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※ 本記事は掲載時点の情報であり、最新のものとは異なる場合があります。予めご了承ください。

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