サントリーは京都府長岡京市に立地する「サントリー〈天然水のビール工場〉京都」の見学ツアーのリニューアルを実施。4月15日の一般公開に先立ち、メディア向け取材会を3月26日に開催した。
当日は同工場長らがサントリービールのものづくりや、大阪・関西万博に合わせて実施される京都工場での取り組みを紹介。実際に製造工程を見学しながら、リニューアルのポイントを説明するツアー体験会が行われた。
サントリー西日本最大のビール製造拠点へ
日本に4つのビール工場を持つサントリー。1969年4月に竣工したサントリー〈天然水のビール工場〉京都は、その中で西日本最大のビール製造拠点として、約10万平米の敷地で年間34万トン、大瓶換算で約2700万ケースの生産能力を有する。
「本工場の需給エリアは九州を除く愛知県より以西のエリアで、従業員数は協力会社様も含めて約500名(3月時点)となっています」とは、サントリーの〈天然水のビール工場〉京都工場長・角井達文氏。
国内4工場でつくられるサントリーの全ビール類製品は天然水仕込みにこだわり、いずれの工場とも良質な天然水が採取できる場所に立地している。京都府・長岡京市のサントリー〈天然水のビール工場〉京都は、工場の西に位置する「サントリー天然水の森 きょうと西山」の良質な天然水を使用し、ビールづくりを行う。
「天然水100%にこだわったビール工場はサントリービールの品質を支える大きな強みです。大切な天然水の森を守るため、サントリーは長岡京市、長岡京森林組合と三者協定を結び、天然水の森・きょうと西山の森林整備・涵養活動を行っています。この活動には京都ビール工場の従業員も参加し、昨年は除伐作業や植樹作業を行いました」
山に降り注いだ雨が長い年月をかけていくつもの地層を浸透し、その間に適度なミネラル分が溶け出した良質な天然水を利用するサントリーのビールづくり。
また、麦芽やホップといったビールのもとになる麦汁の原材料は年々で作況が変わり、生産地によっても品質が変わる。そのため原料の違いをつくり手が見極めて、製造条件を調整することも品質維持には欠かせないという。
「サントリーのものづくりでは、各工程のつくり手が麦芽・ホップのような農産物から享受する自然の恵みと、工場の生産研究設備を結び合わせ、さまざま条件を微調整することで最高の品質を追求しています」
今回リニューアルした工場見学ツアーではそんなつくり手の想いが伝わるよう、仕込み・発酵・貯酒・ろ過・パッケージングといった各工程のつくり手と、品質管理部門のメンバーが映像で登場。それぞれの現場の想いを伝える。
リニューアルテーマは"つくり手の情熱"
今年で発売22年目を迎える「ザ・プレミアム・モルツ」の製造工程を紹介するビール工場見学ツアーのリニューアルについて、ビール・RTD本部プレミアムビール部の櫻井はるか氏からポイントが説明された。
「サントリービールが最も大切にしていることはお客様が口にする瞬間の品質です。ビールのものづくりに触れる工場見学ツアーは、お客様が直接品質を感じていただける場として、非常に重要な取り組みだと考えています。これまでの工場見学では天然水にまでこだわるものづくりの理念を中心にお伝えしてきましたが、ビールづくりにかける"つくり手の情熱"をリニューアルのテーマとしました」
新ツアーでは全体を通して実際のつくり手の熱い想いやこだわり、こぼれ話などが聞ける"つくり手の顔が見える"ツアーとなっており、大型スクリーンによるダイナミックな映像でビールの製造工程を紹介。いつ訪れても製造工程の迫力や臨場感を体験できる。
さらにツアーの試飲会場であるゲストルームでは、京都オリジナルデザインのグラスを使った試飲や神泡アート体験、京野菜を使用したおつまみの提供など、京都らしいおもてなしを表現した空間づくりを行った。リニューアルに伴い、参加費は1000円に有料化される。
「つくり手の等身大モニターの設置を含めると、サステナビリティ活動を除く全ての工程において改修を行いました。1回あたりのツアー内容をボリュームアップしたことで、ツアー時間はこれまでの70分から90分に。一日あたりの催行回数は6回となっています」
映像で体感するつくり手のこだわり
今回の取材会では主要なリニューアルのポイントに絞り、素材、仕込み、発酵、パッケージングの一部を紹介する45分間ほどのツアーというかたちで実施された。
自然の地層によってろ過された天然水を地下深くから汲み上げ、ビールのもととなる麦汁を仕込み、厳選された麦芽やホップの良さを引き出しているという「ザ・プレミアム・モルツ」ブランド。
そのコクや旨みの源となるタンパク質が多く含まれたダイヤモンド麦芽や香り高いファインホップなど、サントリーではつくり手が定期的に生産地へ足を運び、厳選された原材料を調達しているという。
見学ツアーの見所のひとつである仕込み室の前には大型モニターを新設。ダブルデコクション製法とアロマリッチホッピング製法という「ザ・プレミアム・モルツ」の2つの製法を臨場感のあるダイナミックな映像で紹介する。
つくり手は五感をはたらかせ、投入するホップの量やタイミングを1グラム単位、1秒単位で調整。同じ製品でも麦汁の出来栄えや素材の変化に合わせて仕込みのレシピを日々変えているそうだ。
また麦汁に酵母を加える発酵工程で、つくり手たちは24時間態勢で酵母の状態を観察。酵母に最高のパフォーマンスをしてもらうため毎日中身と酵母の状態を確認し、タンクの温度を0.1度単位で調整して、発酵の環境を整えていることなどが紹介された。
バスに乗り込み出荷の様子なども見学した後は、お待ちかねの試飲会場へ。「ザ・プレミアム・モルツ」「香るエール」「マスターズドリーム」のクリーミーできめ細やかな神泡を味わった。
試飲会場では神泡アート・神泡セルフサーブなど工場ならではの2つの体験も楽しめる。 クリーミーな神泡に麦芽のエキスを使ってアートを施した状態で提供する「神泡アート」のデザインは、京都オリジナルの絵柄も含めて全10種類。セルフサーブ体験ではスタッフからレクチャーを受けながら自身で「香るエール」をサーバーで注ぐ体験ができる。
4月13日から開催される大阪・関西万博の開催期間中、サントリー〈天然水のビール工場〉京都では「ワールドKANPAIビール」のベースビールのサンプリングも見学ツアーで実施する。
「ワールドKANPAIビール」は、大阪・関西万博会場でベースとなる味わいのビールを販売し、購入者のアンケート結果をもとに商品開発を行って今年9月に全国で数量限定発売するという企画だ。
また、万博開催記念として「親子で学ぼう天然水の大切さ」と題した限定イベントを5月から10月まで毎月開催するほか、30ヶ国語以上に対応した同時翻訳ガイドも導入。ツアー参加者向けに、同工場の近隣エリアの周遊デジタルマップも工場見学サイトに開設している。
サントリー〈天然水のビール工場〉京都の新見学ツアーは4月15日から一般公開を開始となる。