一口に「機械式腕時計」と言っても、その価格は数万円から数億円までさまざまです。今回は、比較的リーズナブルながら機械式時計ビギナーにも扱いやすく、間違いのない時計をご紹介します。「Sinn Spezialuhren」というブランドの「556.A」という腕時計です。
Sinn Spezialuhren(ジン)ってどんなブランド?
「Sinn Spezialuhren」は直訳すると「ジン特殊時計」。Helmut Sinn氏が1961年に設立したドイツの時計メーカーです。「使うためだけの時計」「全力で生き抜く男達のための時計」をブランドミッションに掲げ、特殊部隊や救急隊など、特殊で過酷な環境でのハードユースに対応する時計を数多くリリースしています。
「556」シリーズはSinn(ジン)がリリースする時計の中でも最もオーソドックスなシリーズですが、Sinnの哲学が随所に反映されたモデルです。創業者のHelmut Sinn氏は第二次世界大戦中にドイツ国防空軍長距離偵察隊のパイロットとして活躍しており、当時の体験が本モデルにも反映されています。「556.A」の価格は35万2,000円です。
大きなインデックスに太い針、光の反射を抑えたブラックのダイアルは、極限状態でも正確かつ瞬時に時刻を読み取ることに特化した結果です。
ノンフレームの針・インデックスという地味ながらも独特のスタイルは、夜光状態になると際立ちます。針とインデックスの面積いっぱいに夜光塗料を塗布することで、暗闇でも潤沢な発光量を確保し、視認性を向上させています。
サファイアクリスタル製の風防は傷に対して非常に強いだけでなく、両面に無反射コーティングが施されているため、クリアな視認性を提供します。
ジン「556.A」の使い勝手は?
20気圧防水という強靭な防水性能を備えながらも、38.5mm×11mmというスリムなケースサイズなので袖口への収まりも良く、付け心地は良好です。また、高い防水性能は機械式時計の扱いに不慣れな方でも事故が起きにくく、日常生活の水回りからウォータースポーツまで、幅広く使える万能性も魅力です。
高い防水性能を支える高性能ケースはSUG(ザクセン時計技術社グラスヒュッテ)製。高気密・低重心であるだけでなく、最終研磨を熟練職人が手作業で行うという非常に凝った工程を経て作られます。
ムーブメントには頑丈さと良好な整備性に定評のあるSellita SW200を搭載し、サファイアガラス製の裏蓋から自動巻ローターやテンプの動きを鑑賞することができます。
シンプルなHリンクのブレスレットは悪目立ちせず、さまざまなシーンで使いやすいデザインです。
ブレスレットの駒同士は六角ネジという非常に珍しい方式で結合されているだけでなく、ネジの直径も1.8mmという腕時計としては最大級のものが使用されており、負荷に対して極めて強靭なブレスレットになっています。
創業者のHelmut Sinn氏はドイツ空軍に在籍時、ソ連上空でエンジントラブルに見舞われて不時着するという経験をしました。その際、Sinn氏は時計を用いて距離と方角を測り、徒歩で自軍の陣地に帰還することに成功しました。Sinn氏はこの経験から、時計に対して「命を守るための計測器」という思いを強くしたと言われています。また、Sinn氏は晩年のインタビューで、「私は時計を作っているのではない。計測器機を作っているのだ」と回答しており、時計に対する特別な思い入れがうかがえます。Sinn氏は2018年に鬼籍に入られましたが、その精神は現在もSinnの各モデルに生き続けています。