近年の金利上昇を背景に、個人向け国債に注目をする方も増えています。個人向け国債はほぼ元本が保証されていることが魅力ですが、5年固定タイプを買うとどの程度資産が増えるのでしょうか。2025年3月時点の金利の情報をもとに、シミュレーション結果を解説します。
個人向け国債は3種類ある
個人向け国債とは国が発行する、個人投資家が購入可能な債券です。シミュレーションの話しに入る前に、個人向け国債の3つのタイプについて解説します。
3年固定
満期を迎えるまで利子が変わらない国債です。たとえば年1.0%なら、3年間1.0%の利率が適用されることになります。
発行時の利率が、3年後の満期まで変動しないため、購入前から最終的な投資結果を計算可能なのがメリットです。
5年固定
固定3と同じく利子が変わらないタイプで、5年間利率が維持されます。固定3よりもう少し長期で保有して利息を得たい方に向いている国債です。
10年変動
満期は10年で、半年ごとに利率が変動するタイプの国債です。そのときどきで利子が変わり、利子が増える可能性もあれば減る可能性もあります。
年0.05%の最低保証があるため、これを超えて利息が減ることはありません。利息が増えるチャンスを狙う人に向いています。
5年固定タイプに100万円を投資したらいくらになる?
以下のように個人向け国債を購入した場合、5年後に資産はいくらになるでしょうか?
購入対象:個人向け国債・5年固定タイプ
購入する回:第168回(募集期間:2025年3月6日~3月31日)
基準金利:1.08%
適用金利(税引前):1.03%
購入金額:100万円
満期:5年後(2029年4月15日)
個人向け国債は、1年に2回利子を受け取ります。財務省ホームページの「受取利子シミュレーション」を使用したところ、受け取る利子は以下のようになりました。
※2025年3月5日時点の情報を基にしており、実際に受け取る利子の額は異なる可能性があります。
5年間で受け取れる利子は合計51,500円で、100万円が105万1,500円になり、5年間で5%程度成長することになります(税引前)。銀行に普通預金で預けているよりも、有利にお金を増やすことが可能です。
個人向け国債は国が発行するため、企業が発行する社債と比べてデフォルト(債務不履行)リスクが極めて低く、元本割れの心配がないのもメリットといえます。
個人向け国債で注意すべきポイント
個人向け国債に魅力を感じる方もいると思いますが、以下の点には注意が必要です。
中途解約をすると損をする可能性がある
個人向け国債で満期を待たずに途中で換金をすると、中途換金調整額が差し引かれます。調整額が差し引かれると、額面を下回り、損失になる恐れがあります。
個人向け国債は、原則として満期まで保有する商品であることを認識しておきましょう。
期待できるリターンは少ない
元本割れの可能性がほとんどないことが魅力ですが、得られるリターンは株式や投資信託と比べると少なめです。個人向け国債は利子を受け取る仕組みで、利子は元本にプラスされないため、元本が増えていくわけでもありません。
投資に対する考え方によって異なりますが、資金を成長させる方法としては、それほど効率的ではないことに注意が必要です。
iDeCoやNISAでは利用できない
iDeCo・NISAは投資で得られた利益が非課税となることから、近年人気の金融制度です。しかし、いずれも個人向け国債は対象外となっています。
個人向け国債で得られた利益には税金がかかることは頭に入れておきましょう。
個人向け国債をどう活用するか?
個人向け国債も、他の金融商品と同様、メリット・デメリットの両方があります。ではどのように活用するべきなのでしょうか?
1つの考え方として、資産全体をリスク管理する視点から、一定の割合を個人向け国債に割り当てるのもよいでしょう。近年は株式市場が好調ですが、いつまでも続くとは限らず、株価が大きく下落する可能性もあります。
資産のポートフォリオの一部を個人向け国債に割り当てることで、株価が下落したとしても、資産全体におけるダメージの軽減が可能です。