VIPの送迎に使われる「ショーファーカー」の世界で最上級の輝きを放っているクルマといえばレクサス「LM」です。このクルマが日本の伝統工芸と出会ったとき、車内はどれほど豪華な空間になるのでしょうか。トムス(TOM'S)が手掛けたカスタム車を見てきました。
レーシングカーのトムスがLMをカスタムすると?
レクサス「LM」は「ラグジュアリームーバー」(Luxury Mover)の頭文字から名付けられた高級ミニバンです。後席に人を乗せて送迎する「ショーファーカー」としての運用を基本とする設計となっており、オーナーが後席で移動を楽しみながら、ゆったりとくつろげる空間に焦点を当てています。トムスはこのコンセプトをさらに昇華させ、日本独自のショーファーカー文化を提案しました。
まず目を引くのは外装のカラーリングです。日本を象徴する赤をベースカラーに取り入れ、そこにゴールドを差し色として加えています。ゴールドは日本の“頂上”をイメージしたもので、赤と金によるバイカラーが極上の豪華さを際立たせます。
ラグジュアリー志向のホイールを履いた足元からも気品ある高級感が漂っています。もともとレーシングカーのイメージが強いトムスですが、この車両ではエクステリアにおいても洗練されたラグジュアリー感を打ち出し、新たな魅力を提示しています。
天井に組子細工、足元には山形緞通
なによりの見どころはインテリアの徹底したこだわりです。ショーファーカーというクルマの性質上、後席で過ごす時間が快適かつ特別な体験となるよう、随所に日本の伝統工芸を取り入れています。
天井部分には「組子細工」を配置。内部のライトによって透過光が美しく浮かび上がる仕組みです。伝統工芸の技術と自動車の先進技術が交差することで、単なる装飾を超えた優美な空間が生まれているのです。
フロアマットには「山形緞通」(やまがたどんつう)を採用しています。1本1本が手差しで織り込まれているため、素足で触れると柔らかな質感が心地よいです。後席でくつろぐために靴を脱いだとしても、贅沢な時間を過ごせるよう配慮されています。
エアコンの吹き出し口など、内装の一部にはヒノキ材をあしらい、樹脂パーツとは異なる温もりと高級感を演出しています。シートの張地には組子の麻柄をイメージした独自デザインのパターンを施しました。全体的な統一感も見事です。
このように、トムスが手掛けたLMは、走りの性能だけでなく“日本らしいラグジュアリー”を最大限に追求している点が特徴的です。レーシングカーで培ったカーボンパーツの型を削る技術を組子パネル加工に転用するなど、モータースポーツで磨いた高度な技術を随所に用いているところも見どころです。
トムスはこれまで、主にクルマのエクステリアや走行性能の分野で評価を高めてきましたが、本モデルを通じ、インテリア製作や日本の伝統美をクルマに落とし込む技術など、新たな可能性を提示しています。
後席の快適性が求められるショーファーカーは、走行性能だけでなく、視覚・触覚・嗅覚など、あらゆる感覚を楽しませる空間づくりが求められます。LM×トムスのカスタマイズモデルはその要求を満たすだけでなく、日本の伝統文化を世界に発信するひとつのメッセージにもなっているのです。まさに「日本最高峰のショーファーカー」として、今後の高級車カスタマイズの方向性を示す存在となりそうです。