片づけコンサルタントの近藤麻理恵さんを世界に押し上げたプロデューサーの川原卓巳さん。妻の麻理恵さんのサポートにフルベットするため「人生」そのものを捨てたことにはじまり、"捨てる"技術を通して、常にときめく人生をアップデートしてきました。
その結果、麻理恵さんがタイム誌の「世界で最も影響力のある100人」に選ばれ、川原さんの人生も激変。『人生は、捨て。 自由に生きるための47の秘訣』(徳間書店)を上梓した川原さんに、自由で自分らしい人生を手にするための秘訣を語ってもらいました。
「インサイドアウト」で身近な人をまず幸せに
――ご著書の中で、過度な成長を求めることは人を幸せにしない、ご夫婦間でも仕事が勢いづけば勢いづくほどブレーキを踏んできたと記されています。目の前に大きな成功と成長が見えると、追いかけたくなるのが人の性だと思いますが、どうやってブレーキをかけてきたのでしょうか?
本でも書かせてもらったように、最も仕事が立て込んでいた時期、「麻理恵さんが飛び降りて死んでしまうかも」と思った出来事がいちばんのキッカケでした。結果的には勘違いでしたが「この人を死に追いやるかもしれない」と思ったら、仕事の成功なんてどうでもいいと思えたんです。麻理恵さんをしあわせにすることが最優先。常にときめいていてもらえることが目的。その上で過剰にならない範囲で世の中に貢献していく。その順番は間違えないようにしています。
夫婦での話し合いはかなりしている方だと思います。定期的に経営会議(夫婦会議)を行って、スケッチブックを使って考えていることのすべてを吐き出す時間を持っています。また、移動中などもたわいもないことも含めて色々と話します。
「人生の中でいまの時期に大切にしたいことってなんだろうね」みたいな部分から考えて、その上で仕事を決めていく。あくまでも、人生の目的がしあわせであることからはズラさないようにしています。
――著書にも出てくる「インサイドアウト」(内側から外側へ、身近な人を大切にする)の考え方が印象的でした。この考え方を実現するために意識していること、ご家族間で工夫していることなどはありますか?
定期的な家族会議をしています。子どもも含めて、それぞれが紙とペンとを用意して、翌週の予定のすりあわせをします。あとはやりたいことや、考えていることも話し合います。
そうやって、一番身近な家族が求めていることをできる状態、身近な人が満たされている状態を先に作ろうと意識しています。
あとはテレビやゲームの時間を減らし、意識的に家族の会話を増やすことも実践しています。できる限り家族で会話をする時間を増やすようにしています。
モノを捨てることから始めよう
――「ミッドライフクライシス」という言葉もありますが、川原さんと同年代の方の中で「自分の生きたいように生きられていない」と感じている方に向けてアドバイスはありますか? ご著書の中の「捨てる」提案の中で、まず実践するといいものがあれば教えてください。
私も40歳になり、そのような同世代の話を聞くことがありますが、さほど意外ではありません。
私たちがよくある環境の中で教育を受けてきた場合、「こうしたい」という自分の気持ちや価値観よりも、「どうしたら喜ばれるのか」「どうしたら人から良いと思われるのか」という他者の基準を自分の人生の判断基準としてしまいがちになります。
社会の構造上、自分の価値観を突き詰めて考えたり、信じたりする生き方というのは難しいですし、実際にそうやって生きている人に出会うことも少ないです。
私自身、麻理恵さんと出会っていなかったら、こんなに自分の価値観やときめきに向き合って、どう生きたいのかをとことん考えて生きることはなかったような気がします。だからこそ「1度しかない人生をどう生きていきたいのか、に真剣に向き合う」と、どこかのタイミングで決めることが違いを生むような気がします。
はじめに実践するといいと思うのは、物理的な片づけです。つまり自分の持ち物を一つひとつ見直して、どれにときめくのか、もしくはどれにときめかないのか、なぜ買ったのか、なぜ手元に残しているのか、なぜ手放したいと思っているのか、心を添えて丁寧に向き合っていく――。
そうすれば、自分がなにを感じ、なにを喜び、なににしあわせを感じるのか、価値観が明確になっていきます。そして、少しずつでもいいので、その価値観に向けて生きていくことに取り組むようになると、確実に変化が起こっていきます。
――川原さんは"捨てる"技術の実践によって、常にときめく人生をアップデートされているように感じます。ご自身の人生をさらにときめかせるために今後捨てていきたいものや計画していることはありますか?
人生をさらにときめかせるために、死ぬまでにやりたい100のことを明確にして、それを日々最優先に実践することをしています。去年は人生で初めて富士山に登頂することができましたし、今年は年始からずっと行ってみたかった10日間の瞑想プログラムに参加することができました。死ぬまでにやりたいことを明確にすることで、仕事だけに集中するこれまでの生き方を変えることができています。
30代はかなり生き急いでいたので、大きな結果を残すことができた反面、知らず知らずのうちに色んなものを抱えて生きるようになっていました。
「人生、このままでよさそう?」と自問自答した結果、もう一度、いま持っている肩書や役割をすべて捨てようと考えています。
以前は何者でもない状態だったので捨てるのが比較的容易でしたが、いまは関わっている人も多ければ、期待されていることも多い中で、果たして捨てきれるのか、試しているところです。
一度きりの人生、本当にそのままでいい?
――最後に、もっと自分らしく、軽やかに生きたい方へのメッセージをお願いします。
一番問いたいのは「人生1度きりだけど、そのままで良さそう?」ということ。いつも飲み会で周りに言っていることであり、自分自身にもしばしば問いかけていることです。
人生は1度きり。どんなふうに生きたとしても、私たちはいずれ必ず死を迎えます。寿命はコントロールできないので、残された時間をどう過ごすのかしか選ぶことができません。そう考えると、大事なのは、なるべく自分が幸せになるよう、不要なものはすべて手放して、本当に自分の人生を生きるスタートを切ること。そして、なるべくその状態を保ち続けることだと思っています。
違和感を覚えたものをすべてばっさり捨てられるほど簡単な話ではないかもしれませんが、一つひとつの違和感に気づいて、手放せるものは手放していきましょう。本に自由に生きるための47の秘訣を書いたので、できそうなことから試していただけたら嬉しいです。もっと身軽に、もっと幸せになりましょう。
『人生は、捨て。 自由に生きるための47の秘訣』(1,760円/川原卓巳 著/徳間書店 刊)
タイム誌の「世界で最も影響力のある100人」に選出された「こんまり(KonMari)」こと、片づけコンサルタントの近藤麻理恵さん。彼女を世界に押し上げた仕掛け人が、名プロデューサーの川原卓巳さんです。本書ではプロデューサー・川原さんが、あなたに"自由"を授けます。自由のカギを握るのは「捨てる」こと。過剰なモノや情報から解放されることです。そのための方法をあますところなくお伝えします。