和食とともに世界中で人気拡大中の日本酒。その輸出額は10年前の約4倍にも伸長しており、オーストラリアは近年、輸出先の上位10カ国の常連となっている。

そんな中、オーストラリア国内で2022年より開催されている豪州最大規模の日本酒と日本文化のイベントが「Australian Sake Festival」。2024年9月28日(土)・29日(日)には通算3回目となる同イベントがシドニーで開催され(前回はメルボルン)、2日間で約8,000人が来場した。現地での潜入レポートをお届け。

  • 多民族国家オーストラリア・シドニーで、多くの人々が日本酒で一体化した。画像提供:Australian Sake Festival事務局

日本各地のお酒500種以上が試飲できる大規模イベント

シドニー中心部で開催された「Australian Sake Festival」には、日本からの酒蔵やオーストラリアの酒販売業者など100以上のブースが出店し、日本各地の日本酒や梅酒、リキュールなど500種類以上のお酒の試飲ができた。

寿司・鉄板焼といった和食や、ハンバーガーなどのフードのブースも種類豊富に出展。去年の来場者数6,500人、出展数62社から大きく数を増やして拡大中の注目イベントだ。

  • 奈良県のブース。奈良を象徴する鹿のカチューシャが来場者に配られた。画像提供:Australian Sake Festival事務局

メインステージでは和太鼓やダンス、日本や海外のさまざまな楽器で奏でる音楽ライブ、白生地にアボリジニアートを施したオリジナル着物と日本の着物が融合した「WABORI KIMONO」ショー、「花人間」という全身に花をまとったアーティストたちのショーなどさまざまなパフォーマンスが開催され会場を盛り上げた。

「酒サムライ」(日本酒の素晴らしさを世界に伝える伝道師)に叙任された酒ソムリエのシモーヌ・メイナードさんによる酒セミナーや、新潟酒セミナーなども実施された。

  • ステージでは鏡開きも開催。左端が主催企業のJAMS.TV PTY LTDの取締役社長 遠藤烈士氏。画像提供:Australian Sake Festival事務局

  • 内側は日本の着物、外側はアボリジニアートのオリジナル着物。日豪融合の「WABORI KIMONO」のあでやかな美しさに会場中が目を奪われた。画像提供:Australian Sake Festival事務局

西麻布の日本酒酒場「EUREKA!」のペアリングが大人気

会場で特に好評だったのが、日本酒とおつまみが5種ずつセットになった日本酒ペアリング。日本酒酒場「EUREKA!」(東京・西麻布)オーナーで「酒サムライ」でもある千葉麻里絵さんたちのブースで販売されたものだ。

  • 真っ黒いウフマヨネーズが目を引いた「EUREKA!」のペアリングセット

卵の真っ黒いウフマヨネーズには濃厚な旨味の「HAGINISHIKI 生酛 純米酒」(萩錦酒造/静岡)、塩麹サーモン刺身には酸味や旨味のバランスがいい「仙禽クラシック雄町」(せんきん/栃木)。パッションフルーツを器にしたツナとアボカドのタルタルに合わせたのは、「東鶴 山田錦 THE ORIGIN 純米」(東鶴酒造/佐賀)。

  • 「EUREKA!」のペアリング酒5種。グラスとボトルに同じ色のシールを貼っているので文字が読めなくてもどの酒なのかが分かる。

そして千葉麻里絵さんといえばハムカツ&にごり酒の組み合わせ! ブルーチーズとハムの濃厚な旨味を、シルキーでまろやかな「白川郷 純米にごり できたて生」(三輪酒造/岐阜)が包み込む。クミンの風味が効いた白菜には「加茂金秀 特別純米酒」(金光酒造/広島)。

  • 真ん中が「EUREKA!」の千葉麻里絵さん。前日から睡眠時間を削ってつまみを仕込んだそう。画像提供:Australian Sake Festival事務局

日本人にとってもどのペアリングも納得のおいしさ。この組み合わせなら日本酒初心者でもすぐに日本酒のファンになってくれるのではと確信した。特にオーストラリアのレストラン関係者や酒販売関係者たちが興味津々で注文していた。

オーストラリアで圧倒的に売れている高級酒とは

主催企業のJAMS.TV PTY LTDの取締役社長 遠藤烈士氏に、現地で売れている日本酒、中でも高級な銘柄についてうかがった。

「オーストラリア市場に出回っている高級酒の中でも圧倒的に売れているのが、やはり「獺祭 純米大吟醸 磨き二割三分」(市販価格:130豪ドル、約13,000円、720ml/旭酒造/山口)ですね」とのこと。同社が現地で毎年開催している「Australian Sake Awards 2024」でもFruity / Floral 部門でゴールド賞を獲得した。

他には「伯楽星」で知られる新澤醸造店(宮城)の、精米歩合が1桁で話題の「超特選 純米大吟醸 残響 2022」(日本だと40,000円前後 720ml)や、「勝山 純米大吟醸 暁」(日本だと12,600円 720ml/仙台伊澤家勝山酒造/宮城)なども同アワードでゴールド賞を受賞した。

  • 長野の白馬錦酒造のブース。白馬村スキー場に行ったことのある来場者も

一方、日本への旅目的が"雪山でスキー"というアクティブなオーストラリア人も多い中で人気を博していたのは、長野の「白馬錦」(白馬錦酒造)のブース。

「白馬錦 純米吟醸」(日本だと2,200円、当日の現地販売価格は約4,600円、720ml)が同アワードでゴールド賞を受賞し、イベントでも試飲・販売されていた。関税や輸送費など諸経費が乗せられるので、現地では2~4倍の価格で販売されていることが多い。

前述の遠藤氏によると「アワードに入賞した日本酒のオーストラリアでの市販価格は 60~80豪ドル(約6,000円~約8,000円)が多いように思えます」とのこと。

「白馬錦 純米吟醸」はその中では安い方に入るからか、受賞酒(46豪ドル)よりもワンランク上の「白馬錦 純米大吟醸」(日本だと2,640円 720ml)が、高級感のある桐の専用ギフト箱に入れられて157豪ドル(約15,700円)で試飲提供・販売されていた。それが飛ぶように売れていた。

  • いろいろ試飲して、お好みの日本酒を購入した来場者たち。画像提供:Australian Sake Festival事務局

イベントでしか購入できないような、よりプレミアムで高級な酒にオーストラリア人の注目は集まっていたようだ。白馬錦酒造の現地の販売担当者も「想像以上の売れ行き」と驚きを隠せない様子。

次回のイベント開催は2025年3月15日と16日。ブリスベンにて初の開催となる。日本酒だけでなく、日本の観光情報や工芸品の紹介のブースもあるイベント。マンガやアニメなどをきっかけに日本に興味を持ったオーストラリア人が、イベントで日本酒に目覚め、日本旅に魅力を感じ、インバウンドの旋風も巻き起こしてくれることを願いたい。