東京メトロが本年10月にIPO予定と報じられています。東京メトロはどの程度の事業規模なのでしょうか? 類似の規模の鉄道会社をあげてみました。また時価総額6,000~7,000億円でのIPOと報じられており、同規模の鉄道会社も合わせて取り上げました。
東京メトロのIPOが報じられる
東京メトロが10月にIPO、と8月に報じられました。首都圏で地下鉄を運営する東京メトロは以前から上場計画があり、上場による売却益を東日本大震災の復興資金(復興債の償還資金)に充てることが決まっています。ここまでIPOが具体化せず2024年まで来ましたが、2024年10月のIPOの可能性が高まっています。
東京メトロの株主及び業績推移
東京メトロは株式を国が53.4%、東京都が46.6%の比率で保有しており、実質的には公営企業です。IPOにより国と東京都は保有株式の合計50%の売却を予定しており、資本面では両者の比率が50%となります。では東京メトロの業績はどのような状態なのでしょうか。以下が過去3期の業績推移です。
◆2022年3月期
売上高3,069億円、経常利益▲204億円、親会社株主に帰属する当期純利益▲133億円
◆2023年3月期
売上高3,453億円、経常利益196億円、親会社株主に帰属する当期純利益277億円
◆2024年3月期
売上高3,892億円、経常利益658億円、親会社株主に帰属する当期純利益462億円
コロナ禍の影響で2022年3月期は赤字決算でしたが、2023年3月期からは黒字が続いています。2024年3月期ベースでは売上高約3,900億円、経常利益約650億円という事業規模です。
同様の売上規模の鉄道会社は?
鉄道会社としての東京メトロの規模感を把握するため、売上規模が同等の鉄道会社をあげてみましょう(売上高はいずれも2024年3月期)。
・JR九州<9142> 4,204億円
・小田急電鉄<9007> 4,098億円
・京王電鉄<9008> 4,086億円
・京阪HD<9045:京阪電鉄> 3,021億円
・京成電鉄<9009> 2,965億円
東京メトロの売上規模は、首都圏では小田急電鉄や京王電鉄を若干下回り、関西の京阪電鉄より大きく、またJRグループではJR九州を下回るという規模です。首都圏の中堅私鉄に相当する売上規模と言えるでしょう。
売上の約9割が運輸事業、経営の多角化はこれから
JRグループを始め、鉄道会社各社は経営を多角化しています。既に関連事業(鉄道以外の事業)で鉄道事業以上の売上や利益を上げる鉄道会社もあります。
東京メトロは運輸事業の売上比率が2024年3月期は約9割であり、経営の多角化はこれからです。人口の減少により、鉄道事業による利益減少に苦しむ鉄道会社もあります。その中で、インバウンド需要などもあり運輸事業のみで充分な利益(部門損益637億円)を出す東京メトロは、恵まれた事業環境にあるとも言えるでしょう。
時価総額6,000~7,000億円の株式上場と報じられている東京メトロ
東京メトロは時価総額6,000~7,000億円でのIPOと報じられています。時価総額6000~7000億円の鉄道会社としては以下があります(時価総額は9月4日終値)。
・京成電鉄<9009> 7,760億円
・近鉄GHD<9041> 6,650億円
・JR九州<9142> 6,320億円
・小田急電鉄<9007> 6,250億円
京成電鉄は保有するオリエンタルランド株で莫大な含み益を持つため、ファンドなどに株式が買われ事業規模に比べ時価総額が高くなっています。時価総額6,000億円台では、JR九州と近鉄GHDは事業の多角化で知られる鉄道会社です。小田急も利益の半数以上を不動産業であげています。
事業状況から、東京メトロは鉄道事業に特化した企業としてIPOを行います。時価総額6,000~7,000億円でのIPOと報じられていますが、同等の時価総額の鉄道会社はいずれも事業多角化が進んだ鉄道会社です。
本業の運輸事業で充分な利益が出て、事業多角化の余地が大きい東京メトロが、株式市場でどのような評価を受けるかは大きな注目ポイントです。
東京メトロのIPOは、本当にIPOが実現するのかという点に加えて、どの程度の時価総額でのIPOが行われるのか、という点も注目点と言えるでしょう。