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【答え】メルセデス・ベンツ「500E」
メルセデス・ベンツ「500E」は、1990年代初頭に登場した高性能セダンであり、その開発背景と製造プロセスにおいてポルシェとの深い関わりを持つ特別なモデルです。
アメリカ合衆国で人気を博した「500SL」(R129)のパワフルなV型8気筒エンジンを搭載した4ドアセダンを望む声に応える形で、当時のミディアムクラス(W124)をベースに開発がスタートしました。
特筆すべきは、この開発と生産に、当時経営不振に陥っていたポルシェが深く関与した点です。エンジン搭載に関する設計やシャシーチューニングはポルシェのヴァイザッハ研究所が担当しました。
生産工程もユニークで、メルセデスがジンデルフィンゲン工場で製造したボディシェルをポルシェのツッフェンハウゼン工場に送り、ポルシェが拡幅されたフェンダーの取り付けなど主要な組み立てを実施し、再びジンデルフィンゲンに戻して塗装した後、再度ツッフェンハウゼンでエンジンや内装の最終組み立てを行う、という流れでした。両社の工場間をクルマが行ったり来たりする複雑な工程です。
このため500Eは、日本では「ポルシェが造ったベンツ」として高く評価されました。ポルシェの経営再建にも貢献したことから、一部では「ポルシェを救ったモデル」とも呼ばれています。
搭載するM119型エンジンはV型8気筒DOHC32バルブ、総排気量4,973ccの自然吸気ユニットで、初期モデルは最高出力330ps/5,700rpm、最大トルク50kg・m/3,900rpmを発生しました。なお、後期モデルは排気ガス規制の影響で、最大出力325ps/5600rpm、最大トルク49kg・m/3900rpmにデチューンされています。
この強力なエンジンを収めるため、既存のW124のフロアトンネルやバルクヘッドを拡大加工しました。サスペンションアームやサブフレーム、トランスミッション、ステアリングギアボックス、ドライブトレインの多くは500SLから、さらにリアのセルフレベリングサスペンションは同社の「Tモデル」(ワゴン)から流用しています。また、大型のディファレンシャルギアを搭載した影響で、後部座席は中央部分を取り払った左右独立の2座となり、乗車定員は4名となっています。
500EのデザインはW124セダンを基本としつつ、高性能化のため細部を専用設計としています。トレッド拡大(前35mm/後30mm)と225幅のワイドタイヤを収めるため前後フェンダーを拡げ、全幅は1,795mm(+55mm)となりました。それにあわせて、フロントバンパーも専用形状とし、フォグランプはエアダム部に移設しました。さらに、ヘッドライト部にはドライビングライト(ハイビームと連動して同時点灯)を追加しています。
500Eの総生産台数は1万479台と比較的少数に留まります。その中でも日本市場での人気は突出しており、正規輸入の1,184台に加え、それを大幅に上回る並行輸入車が存在したといいます。一説には、生産数の約3分の1が日本に渡ったとも言われています。対照的に、主要市場と目された北米では1,528台、本国ドイツでも期待されたほどの販売実績は残せませんでした。
1993年のメルセデス・ベンツのモデル名呼称変更に伴い、それ以前のモデルは「500E」、以降は「E500」と呼称されます。その卓越した性能、ポルシェとの協業によるユニークな成り立ち、そして希少性から、メルセデス・ベンツ500E/E500は自動車史に残る名車として、現在も多くのファンを魅了し続けています。
それでは、次回をお楽しみに!
監修: 旧車王(https://www.qsha-oh.com/)
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