給与計算システムの導入から運用開始までを5ステップで解説!

給与計算システム

給与計算システムを導入すると、どのような効果が期待できるでしょうか。本稿では、運用開始までの5ステップ、給与計算システムの導入効果と効果を高めるポイントについて解説します。給与計算システムによって業務の効率化を進めたいとお考えの場合は、ぜひ最後までご覧ください。

給与計算システムとは

給与計算システムとは、労働時間や休暇などを記録した勤務データを入力し、あらかじめ設定した勤務ルールなどに沿って給与を自動計算するシステムです。給与明細書をWeb上で発行して従業員が自由に閲覧できる機能もあり、給与に関する業務を効率化できます。

1、給与計算システムの種類

給与計算システムには、給与計算専門のパッケージソフトと人事・勤怠管理関連のサブシステム、ERPのモジュールの3種類があります。それぞれの特徴を知り、自社に適した種類を選びましょう。

1.給与計算専門のパッケージソフト

給与計算機能に特化したタイプです。提供形態は、パッケージソフト型だけでなくクラウド型のものもあり、比較的低コスト・短期間で導入できる点が魅力。とりあえず給与計算業務の効率化を進めたいという場合におすすめです。

労務管理や人事評価など、他の人事・総務部門のパッケージソフトも同じシリーズで統一して選べば、後から必要な機能のパッケージソフトを追加しながら、徐々にシステム化を進めることも可能です。

2.人事・勤怠管理関連のサブシステム

人事・勤怠管理関連システムのサブシステムとなっているタイプです。すでに人事システムを導入している場合、同じシリーズのサブシステムとして給与計算システムを導入すると、連携に手間がかからないのでおすすめです。

3.ERPのモジュール

ERP(Enterprise Resources Planning:企業経営の資源要素を有効活用すること)システムのモジュールとして提供されるタイプ。給与計算・勤怠管理など業務単位で導入できるため、自社の予算や状況に合わせて少しずつ人事業務をシステム化するのに向いています。

給与計算システム導入後から運用開始までの5ステップ

給与計算システム導入後から運用開始までには、具体的にどのような作業が必要かを5ステップに分けて紹介します。導入作業にかかる時間やコストを確認する際ご活用ください。

1、就業規則や法律に応じた計算式の設定

給与計算システムの動作を決める重要な設定を行います。主な設定内容は以下の通りです。

設定項目 設定内容
職種 職能等級など
役職 課長、部長など
雇用形態 正社員、派遣、パート、アルバイトなど
勤怠状況 遅刻、欠勤、有給休暇など
各種手当 通勤手当、住宅手当、家族手当など
直接費 所得税・住民税など
社会保険料 健保、介護、年金、雇用保険など
その他 財形貯蓄、持株拠出額、労働組合費など

給与計算を自動的に行うためには、すべての条件を網羅しなければなりません。計算式の内容を仕様書にまとめて抜け漏れがないよう確認する、といった工程も必要です。

自社だけでは計算ルールをまとめられない場合は、コンサルティングなど外部サービスや製品を提供する会社の導入支援サービスの利用も検討しましょう。

2、各種マスタデータの入力

マスタデータとは、給与計算に必要な固定の情報です。給与計算システムで必要となるマスタデータを一部紹介します。

設定項目 設定内容
従業員の個人情報 氏名・職種・役職・雇用形態・所属部門・給与振込口座・家族構成・住所など給与計算に必要な情報
給与明細に出力する項目 出勤日数、各種時間外労働時間、休暇日数、欠勤日数、支払総額、各種控除項目、口座振込額など
税率 所得税率など

これらのマスタデータは、人事システムや労務管理システムと共通するため、データ連携で取り込めると便利です。

3、セキュリティの設定

給与計算システムからの情報漏洩を防ぐため、ユーザー・グループ管理とアクセス制御の設定も必要です。既存システムと同シリーズの製品なら、既存システムのセキュリティ設定をそのまま利用することもできます。

4、給与計算後の処理定義(他システム連携など)

次に、給与計算後に必要な処理の定義を行います。例えば、税務処理なら給与計算後に、地方税納付先別集計と地方税納付書作成が必要です。

統計を利用するERPなら部門別、役職別、年齢別の統計値を連携します。他にも、経費処理や社会保険関連処理、退職処理なども定義しましょう。

5、給与関連書類の電子化を従業員に周知

給与計算システムの稼働前には、従業員に対して給与関連書類の電子化と操作方法についての周知を行います。

給与明細書などの書類が一定期間を経過すると閲覧できなくなる仕様なら、従業員に期限までのダウンロードを促すなど、システム利用上の注意点は必ず伝えましょう。

「よくある質問」作成など、導入直後の問い合わせを少なくするための対策もシステム稼働前に済ませてください。

給与計算システムの導入期間を短縮する3つのコツ

給与計算システムの導入には、さまざまな設定や準備が必要になるため、一定の期間が必要です。この期間を短縮するためのコツを3つ紹介します。

1、就業規則などの計算ルール整理のコンサルティングを利用

給与計算システム導入時に時間のかかる作業は、給与の自動計算ルールの策定・設定です。就業規則や法令などを網羅し、抜け漏れがないようにまとめるのはかなりの時間がかかります。

計算ルールの整理は、経験豊富なコンサルティングを利用するのもひとつの手です。抜け漏れを減らして短期間で分かりやすく整理した計算ルールを策定できます。

2、クラウド型の給与計算サービスを利用

提供形態がクラウド型の給与計算サービスを選択すると、自社で環境構築をする手間がなく、より短期間でシステムを利用できるようになります。

3、自社の業界に合ったシステムを選ぶ

自社の業界に合ったシステム選びも、導入期間を短縮化するためのポイントです。例えば運輸業界のようにシフトパターンに応じた給与計算が必要な場合は、同業他社が多く導入している給与計算システムを採用することも検討しましょう。

給与計算システム導入で得られる6つの効果

ここであらためて給与計算システム導入で得られる効果をご紹介します。

1、給与自動計算によるバックオフィス業務効率化

給与計算業務は、比較的単純でありながら、非常に時間のかかる業務です。給与を自動計算して銀行の振込データ作成・給与明細公開までワンストップで進めることで、バックオフィス業務は大規模な効率化が実現できます。

勤怠管理システムと連携すると、勤怠データの入力部分も自動化できるため、さらに業務の効率化が進みます。

2、法令改正への対応

社会保険や税制改正などの法令改正があると、給与計算に影響します。対応には手間がかかる上に、人的ミスが発生する可能性があるなど、担当部門にとっては大きな負担です。

給与計算システムを導入すると、システム側で法令改正に対応するため、自社で個別に対応する必要がなくなります。

3、コンプライアンスの徹底

昨今は企業に対し、労働基準法に則った給与計算(時間外割増手当や休日出勤手当など)を行うよう厳しく求められています。

給与計算システムを導入することで、法律に即した給与計算を行えます。

4、多様な勤務形態や人員の頻繁な入れ替わりに対応

業種によっては、多様な勤務形態(複雑なシフトやパート・アルバイドなどの雇用形態も含む)があり、すべてを把握して給与計算をするのは大変です。さらに人員が頻繁に入れ替わると、給与計算業務の負担はさらに増大します。

給与計算システムを導入して勤務形態ごとの給与計算パターンを登録すると、勤務形態を指定するだけで給与が自動計算可能に。多様な勤務形態や人員の頻繁な入れ替わりに関わる業務の負担もほとんどなくなります。

5、人員配置、人材調達の意思判断に役立たせる

各部門の作業ボリュームに対して適切な人員配置ができているかなどを、過去のコスト面から検討できる点も給与計算システムのメリットです。給与計算システムによって蓄積されるデータを、人事システムなどと連携することで、全社の人員配置や人材調達の意思判断にも使えます。

6、給与明細書や各種帳票の電子化

給与明細書や源泉徴収票など、これまで紙ベースだったものを電子化することで、ペーパーレス化や休職者への郵送にかかる手間やコストも削減可能です。従業員側も給与日になり給与明細書が公開されるとすぐに、自宅に居ながらでも確認できるため利便性が高くなります。

ここまで紹介してきた導入効果をさらに高めるには、システム導入時にいくつか確認しておきたいことがあるため、次に解説します。

給与計算システムの導入効果を高める4つのポイント

給与計算システムの導入効果をさらに高めるに、導入時にチェックしておきたいポイントを順番に解説します。

1、自社に合った機能の製品を選ぶ

自社にとって必要な機能を洗い出し、マッチする製品を選びましょう。給与計算システムは、会社の就業規則や勤務形態などに対応した給与の自動計算ができるかどうかが重要です。リモートワークが多く職場に出社する従業員が少ない場合は、Web給与明細の作成・公開機能が欠かせません。

2、サポート体制の整った製品を選んでスムーズな運用を

システム導入直後は、特に勤務形態の登録や自動計算の設定など、手間のかかる作業があります。導入支援サービスや使い方の初期教育、導入後のサポート体制などを確認して、スムーズな運用ができる製品を選んでください。

3、総コストを試算して比較検討する

給与計算システムの費用対効果を高めるには、1年間の総コストと削減できるコストの両方を、製品ごとに算出して比較検討することが重要です。

総コストには、給与計算システムの導入コストと運用コスト、年間保守費用などが含まれます。システム化により削減できるコストとしては、給与計算業務にかかっていた人件費、給与明細の印刷・郵送・配布にかかるコストなどがあります。

4、既存システムとの連携が可能かを確認

給与計算システムは、既存システムと連携することでさらに導入効果が高まります。勤怠管理システムや労務管理システムは、給与計算するためのデータを保持しており、連携するメリットが大きいシステムです。

直接の連携が難しい場合でも、勤怠データや労務関連データをCSV出力し、給与計算システム側でインポートできる機能があればデータ連携ができます。給与計算データを必要とするシステムもあるため、給与計算システム側でCSV入力・出力ともに対応しているか確認しましょう。

給与計算システムを導入して業務効率化を目指そう

給与計算システムを導入することにより、負荷の大きい給与関連の業務を大幅に効率化できます。給与計算に必要なデータを持つ勤怠管理システムや労務管理システムとも連携できると、さらに効率化が進むのでおすすめです。すでに稼働しているシステムの状況や機能などを確認し、自社にマッチした商品を選びましょう。

また、給与計算システムを導入してから実際に運用開始するまでには、自社の給与計算ルールの整理に時間がかかります。自社リソースでは整理が難しい場合、人事労務に強いコンサルタント会社を利用することも検討しましょう。

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