日本における労働人口の減少は、地方においてより深刻だ。地方公務員数は減少傾向にあり、人的リソースの不足は避けられない状況にある。業務の質を落とすことなく、より少ない人数で行政運営を行うため、多くの自治体でDXの取り組みが進められている。とはいえ、どこから着手すればよいのかわからず悩んでいる自治体・原課も少なくない。こうしたなか、地域のソーシャルイノベーションカンパニーとして事業を展開するNTT東日本が、自治体業務のDXを支援する取り組みをスタート。今回は、NTT東日本 ビジネス開発本部 クラウド&ネットワークビジネス部の岡部佑太 氏に、同社が展開する「自治体業務DXサービス」が見据える地域活性化のビジョンを伺った。

自治体における業務の80%を占める“ロングテール領域”のDXを、NTT東日本が支援

業種や規模を問わず、あらゆる企業でデジタル技術を用いたビジネスモデル変革、いわゆるデジタルトランスフォーメーション(DX)の実現に向けた取り組みが加速している。業務効率化による働き手不足の解消や、ビジネススピードの向上による多様化した顧客ニーズへの対応など、DXの実現によるメリットは多岐にわたり、多くの企業が効果的なデジタル活用を模索し続けている。

こうしたDX推進の波は、自治体の業務にも押し寄せている。少子高齢化による労働人口の減少に伴い、自治体の職員数は減少を続けており、少ない人数で行政運営を行うための業務改革はまさに喫緊の課題。自治体DX推進計画の策定をはじめ、すでに総務省主導で行政のデジタル化が推進されており、自治体DXはもはや待ったなしの状況だ。

とはいえ自治体の業務は幅広く、地域ごとの違いもあるため、すべての自治体が同じアプローチでDXを推進できるわけではない。NTT東日本でクラウド関連サービスの開発・販売に携わる岡部氏は「DXが進んでいる業務と進んでない業務が出てきている」と、自治体DXにおける現状を分析する。

「総務省が公表している『自治体DX推進計画』や『自治体DX全体手順書』などにのっとり、すでに全国の自治体で体制の整備や戦略の策定が進められており、現在は業務の現場にDXを落とし込んでいくフェーズとなっています。そこで顕在化してきたのが、紙ベースの業務が主体の自治体業務のなかで、どこをデジタル化すればよいのかわからないという課題です。DX人材の不足や現行の業務稼働のひっ迫により、業務改善に取り組む余裕がないことが、DXがなかなか進まない要因の一つになっていると考えています」(岡部氏)

基幹系業務や処理件数が膨大な主要業務に関してはすでにシステム化が進んでおり、DXの素地はできあがっていると岡部氏。その一方でシステムを開発、導入するほどではないが、定型的で一定のポリュームがある業務や、定型的ではなく件数もさほど多くない業務に関しては、DXが進んでいない傾向が見られると話す。

「自治体には、システム化しても大きな費用対効果が得られないものの、職員の運用負荷が高い業務が数多くあります。私たちはこうした業務を『ロングテール領域』と呼んでいます。そして、自治体業務の80%を占めるこの領域のDXを支援していきたいと考えて提供を開始したのが『自治体業務DXサービス』となります」(岡部氏)

ローコードツールで作成したDXアプリケーションテンプレートを無償提供

ロングテール領域のDXを推進するにあたり、NTT東日本が着目したのがローコードツールの活用だ。地域ごとの自治体業務に合わせたDXを実現するためにはローコード開発の柔軟性が有効と考え、自治体向け業務DXのテンプレートツールを作成した。この無償で提供されるテンプレートを利用することで、各自治体は原課ごとのDXを推進できるようになる。勤怠管理や申込受付、決済、予算編成といった総務系の業務をはじめ、子育て支援や福祉・保健衛生、都市基盤整備など、多様な業務向けのテンプレートがすでに公開されており、現在も現場の課題や要望に応えるテンプレートの開発が続けられているという。

  • 自治体DXサービス提供イメージ

「たとえば、『子育て支援』の領域では、保育園の空き状況をマップ上で見えるようにするテンプレートなどを提供しています。現状では、職員の方が集計した情報をまとめたExcelファイルをPDF化してホームページ上に貼り付けている自治体も多く、職員の負荷増大と住民の利便性低下を招いています。マップ化することで、住民の方は視覚的に保育園の空き情報が分かるようになるため住民の満足度向上につながればと考えました」と岡部氏。さらに近年業務負荷が高まっている「福祉・保険衛生」領域においても、複数の業務からなる一連のフローを可視化できるテンプレートを準備していると説明を続ける。

  • 自治体業務DXテンプレート一覧

「介護認定の申請業務に関連する『訪問調査』『介護認定進捗管理』といったDXテンプレートも提供しています。この業務は、申請内容をもとに介護度を測るために訪問調査を行い、医師の意見書をいただいたうえで審査会に通して、最終的な承認に至るという一連のフローで進めます。まずは現場の担当者に話を伺いながら、業務フローの進捗状況を管理するツールを作成しました。これまで紙ベースで行われてきた各フローの情報を“見える化”する仕組みになります。たとえば『訪問調査』のテンプレートでは、70項目以上もある質問項目をタブレット端末を使って選択式で入力できるようにすることで、職員の作業を効率化。紙に書き込んだ調査結果をデータ化する手間に関しても、大幅に軽減することが可能です」(岡部氏)

自社DXで蓄積された経験とノウハウを活用し、伴走型で自治体のDXを支援する

自治体の業務DXをフックに、地域課題の解決と地域活性化を図る自治体業務DXサービスは、NTT東日本が2019年から取り組んでいる「REIWAプロジェクト」の一環として提供されている。このため本サービスでは、「社内外のICTアセットを活用して地域企業や自治体との共創により地域社会の課題を解決する」というREIWAのコンセプトに基づいたビジネスモデルを採用。単にサービスを提供することで収益を得るのではなく、自治体業務向けのDXテンプレートを無償提供し、その導入支援及び伴走型での運用支援をサービスとして提供することで自治体のDXひいては地域全体のDX推進を支援に取り組んでいる。

  • 伴走型業務DX

「当社に対するイメージをお聞きすると、通信インフラの会社と答える方が多いです。もちろん、地域間を繋ぐ通信インフラの構築は重要なミッションであり、今後も継続していきますが、当社ではさらに一歩先を見据えた取り組みも進めています。その1つがREIWAプロジェクトであり、その一環として今回の自治体業務DXサービスがあるという位置付けです。地域のDXを推進できる人材を有するという当社ならではのアセットを活かし、各地域の自治体に寄り添い、伴走していくことで地域全体の活性化に寄与していきたいと考えています」(岡部氏)

自治体のDXを伴走型で支援する本サービスにおいては、NTT東日本が取り組んだ自社DXの経験と知見が惜しみなく投入されているという。「紙や対面での業務を中心とした、いわゆる“お堅い”組織風土を持つ当社が取り組んだDXの知見は、同じく紙ベースでの業務が根強く残る自治体のDXにも適用できると考えました」と岡部氏。社内DXで培われたローコードツールの活用やDX人材の育成といったノウハウが、自治体DXの推進に活かされていると説明する。

  • 伴走支援によるDXの効果

「コロナ禍を機に、社内でのDX化を一気に進めた実体験をベースに、自治体で業務を行われている職員の方と話し合えることは本サービスの大きな強みです。私たちがDXを推進するなかでつまずいたポイントや、解決が必要な課題などを共有することで、“何をすればよいのかわからない”という悩みから寄り添い、伴走型でDXを支援していけると考えています。DXのための原資(人材・モノ・資金)が不足している自治体には、テンプレートの無償提供によりイニシャルコストを抑えた導入を可能とし、かつ当社に在籍する地域のデジタル人材が職員の方を伴走支援することで、持続的な業務DXを実現していきます」(岡部氏)

REIWAの地域基盤との連携によるデータ利活用促進も視野に入れ、自治体DXを支援していく

NTT東日本の自治体業務DXサービスは2023年7月から提供を開始し、現在では多くのDXアプリケーションテンプレートを展開。すでに複数の自治体がテンプレートを活用し、同社との共創により業務効率化を推進している。岡部氏は「一例として、母子手帳交付時アンケートのテンプレートを活用いただいたケースでは、利用率70%、満足度80%という結果が得られています。職員の業務効率化だけでなく、長い待ち時間や記入の手間といった住民のフラストレーションも解消されたと高く評価いただいています」と、本サービスの導入効果について言及する。

同社では、今後も業務フローの見える化や業務課題の抽出といった段階から自治体を支援していく予定という。DXテンプレートの拡充を図るとともに、自社DXで得た知見を活かし、DX人材の育成を含めて継続的なDX運用をサポートしていきたいと、岡部氏は展望を口にする。

  • DXのステップ及びNTT東日本の取り組み

「これからも自治体DXの実現を伴走型で支援していくとともに、そこで蓄積されたデータの利活用も、REIWAのクラウド基盤(地域エッジ)と連動した形で提案していきたいと考えています。また当社ではDX人材の育成に重きを置いており、基礎的なスキルを有するDX人材から、デジタルのスペシャリストまでスキルレベルに応じた社内認定をベースとしたDX人材育成の取り組みを進めています。そのなかで得られた気づきやノウハウは、自治体業務DXサービスにも活かせるはずです。DXを推進したいと考えている自治体の担当者においては『何から始めればよいのか』といったところからお気軽にお問い合わせください」(岡部氏)

地域のステークホルダーとの共創により地域活性化を目指すNTT東日本。同社が推進するREIWAプロジェクトと自治体業務DXサービスによって自治体業務の最適化実現は確実に近づいている。

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