3月16日、ついに北陸新幹線の加賀温泉駅が開業し、盛り上がりを見せている加賀市。さっそく多方面から、温泉や海の幸を堪能する観光客がやってきています。

実は、加賀市は地域の課題解決に向けてスマートシティ化を計画し、路線バスやごみ収集車の自動運転化など、先進的な取り組みを進めています。

そんな加賀市が、今度は社会起業家の育成プログラムとしてイベントを開催するという情報が! さっそく、加賀市の取り組みに感銘を受けたえいすけくんとびいたくんはイベントに参加してみることにしました。

さらに、イベントに登壇したリスキリングの第一人者、後藤宗明さんにも、地方のよさを活かして戦略的に生きるためのリスキリングの考え方について、伺いました。

新幹線で一気に加賀市へ!
課題解決のための「社会起業家育成プログラム」

登場人物

えいすけくん
えいすけくん/27歳
東京生まれ東京育ち。びいたくんとは新卒入社で同じ会社に入社した仲のよい同期。過去2回イベントに参加し、加賀市に興味を持った。
びいたくん
びいたくん/27歳
石川県加賀市出身で地元愛が強い。就職を機に上京をし、現在は都内で勤務をしている。改めて地元の新しい魅力に気づき、故郷に戻ろうかちょっぴり検討中。

ついに延伸した北陸新幹線に乗って、加賀温泉駅に到着したえいすけくんとびいたくん。東京から1本で来られるので、車内で仕事をしたり動画を観たりと時間を有効に使えるようになり、日ごろから忙しい2人は大満足です。

今回2人が加賀市を訪れたのは、3月23日に行われたイベント「社会起業家育成プログラム」に参加するため。

そこで、今回はセミナーのテーマとして「リスキリング」を取り上げ、今後の世界の動向と起業のために必要なスキルの考え方を紹介。さらにリアルイベントということで、ワークショップも実施しました。初めての交流イベントに、えいすけくんとびいたくんは期待に胸が高鳴ります。

社会起業を目指すために必要なことって?
生き残るためのスキルの育み方

起業家育成プログラムは昨年にも開催されていましたが、好評だったことから今回第2回目を開催。「社会課題を解決する起業を考える」を題目に掲げ、前半をセミナー、後半をワークショップに分けて、イベントを行いました。

市役所や一般企業勤務の方、実際に起業を計画している方も参加し、実践にむけた期待値が高いよう。さらに、今回は高校生が2名も参加!

その一人、市内の高校「県立大聖寺高校」の生徒会長・向出惺真さんは、学校の魅力向上のためにアイスの自動販売機の設置を校長先生にプレゼンし、導入へと進めたことがメディアでも取り上げられている高校生。参加者のモチベーションの高さがうかがえます。

社会起業って? これからの世界の動きと解決すべき社会課題を学ぶ

冒頭では、デジタルカレッジKAGAの齋藤和紀さんからこれからの世界的な動きとして、AIの進化やVR(仮想現実)などの最新ツールやテクノロジーの劇的な進化について紹介。まるで人間が撮影したかのような第三者的な目線の動画もAIで生成できるなど、人間を超えようとしている最先端のテクノロジーに、参加者は感嘆の声をあげていました。

そもそも「社会起業」とは、現代社会の課題をビジネス手法で解決しようとする概念のこと。社会起業家は、会社として事業利益を上げつつ、社会問題の解決を目指して会社を立ち上げた人を指します。

続いて、加賀市の課題でもある災害や人口の減少、また高齢化や紛争など世界的な解決すべき社会問題を紹介。社会起業家としてのビジネスのきっかけの考え方を学びました。

ある程度物やテクノロジーが進み、もう世界は充足しているんだよね。だからこそ、地球人類のためになる社会課題に取り組むことに意義があるんだね


AI時代に生き残るために必要な「リスキリング」

次に、一般社団法人ジャパン・リスキリング・イニシアチブの代表理事・後藤宗明さんによるセミナー「社会課題を解決する起業を考える 〜AI時代を生き抜くために必要なスキルとは〜」へ。

後藤さんはリスキリングの第一人者で、金融会社や人事、通信ベンチャー、NPOなどさまざまな会社や団体に勤め、さらに起業も経験するなど、幅広いキャリアの持ち主。これらの経験をすべてスキルとして活かし、新しい仕事を生み出す方法として、リスキリングを提唱。現在、国内外でリスキリングの普及活動に努めています。

そもそも「リスキリング」とは、異なる分野の業務や新たな職業を始めるために、知識やスキルを学び実践すること。趣味での勉強や今まで習ったものを学びなおすこととは、異なります。

そんなリスキリングの基本を知ったところで、社会起業家として必要なスキルについて紹介。後藤さんは「社会起業家には、人を動かす信念と動機が必要」と言います。だからこそ、以下の5つが大切な要素になるのだとか。

●エンパシー(社会問題に苦しむ受益者に対する純粋な共感)
●ステイクホルダーマネジメントスキル(政治家や経営者などの影響力の高い人や団体を巻き込む力)
●ファンドレイジング(寄付を募る等、資金調達を行う能力)
●ストーリーテリング(共感を呼ぶ社会課題解決ストーリー)
●メディアリレーション(メディアとの関係構築)

イベントで紹介された社会起業家を特集したテレビ番組でも、当時のニューヨークのホームレスの状況を聞いた時は胸が痛くなったよ。たしかに加賀市の現状を聞いた時は『力になりたい』と思ったし、ストーリーに共感できると協力したいって思えるよね


さらに、冒頭でも紹介したAIの進化に触れ、データを用いながら「仕事によっては失業する可能性がある」と指摘。すでに海外ではAIへの代替が始まっている企業もあるのだとか。そんな時に強い味方になるのが「リスキリング」なのです。

リスキリングの例として後藤さんが紹介したのが、加賀市にある石川樹脂工業。ECやネット広告の知識をリスキリングし、ネット販売によって売り上げを倍増させたり、テクノロジーを学びロボットやAIを活用して生産性をアップさせたりなど、積極的に社員へリスキリングを図り、業績を上げています。

石川樹脂工業についてもっと詳しく見る

そんなAI時代に突入し始めている今、AIとともに生き残るためには、「AIの不正解を見抜ける専門性」と「課題を見つける力」が必要だ、と後藤さんは言います。

そのために後藤さんが推奨しているのが、「ID(学際的)スキル」。1つのテーマを深堀りすることが得意なAIを上手に活かし、複雑な課題を解決するには、「2つ以上の異なる分野の知識を統合し、応用するための技術」を持つことが重要になっていくとのこと。

一人ひとりがそれぞれ固有のIDスキルを持てれば「複雑な課題も複数の専門的知見から解決に取り組め、さらに培われていける」ということ。現在日本に存在する職種を3つかけ合わせると、なんと6兆5,644億種類の職が生まれるそう! 数の大きさに、参加者は驚きのリアクションをしている方も。

最後に、後藤さんはスティーブ・ジョブズの言葉を例に挙げ、「前を見て点と点を結ぶことはできない。将来、過去のスキルがつながることを信じる必要がある。でも10年後に後ろを振り返ってみると、それは自分独自のスキルになっているんです」と話し、AI時代に生き残るポイントとして、オリジナルの『IDスキル』を培い、自身を差別化することが大切と締めくくりました。

IDスキルの考え方は、本当に目からウロコ! 今までの仕事をすべてスキルと考えて、洗い出して組み合わせたら、今後の自分の取り組むべきことが見えてきそうだね


ワークショップで自身を知るきっかけに

最後に、2つのワークショップを実施。1つは、今回のセミナーを受けて、以下の3つについて書き出します。

●解決すべき社会課題
●身近な手中の鳥(自分や組織、地域がすでに持っている強み)
●VisionとDream

参加者はそれぞれが出した意見を付箋に書いて貼り出しながら、メンバー同士で自由に意見交換をしていました。

2つ目の課題は、最先端技術が示されたカードと、最先端技術が記載されたカードを各12枚、そして先ほど自身が出した「手中の鳥」の3つを掛け合わせ、未来に実現したいアイデアを洗い出す、というもの。それぞれでチームメンバーと話しながら、新しいアイデアについて模索し、交流を楽しんでいる様子が伺えました。

イベント終了後も、メンバー同士で挨拶や言葉を交わし合うなど、参加者にとって人脈やコミュニティの拡大につながる、有意義な時間になったようでした。

デジタルが当たり前の環境はリスキリングで地方活性化を!
課題解決の答えは自分の中にある

イベントを経験し、IDスキルの考え方に感銘を受けた、えいすけくんとびいたくん。イベント終了後、さっそく後藤さんに声をかけ、改めて地方産業におけるリスキリングの必要性について、話を伺いました。

Q.後藤さんは加賀市とはどのような関わりがあるのですか?
リスキリングに関するイベントや、加賀市の職員の方に向けたリスキリング研修を担当しています【後藤さん】
Q.リスキリング研修とは、どのようなことをしているんですか?
加賀市はかなり市長が先進的な考え方をされているので、新しいことをチャレンジしていくぞ! という文化ができていると感じます。スマートシティ化の事業も進んでいる中で、あとは市役所の方たちが、自分たちが持っているジャンルやスキルを政策へ反映させるためのリスキリングの手法や進め方をお話ししています。あとは、加賀市自体のリスキリング政策を作るために、経営者や支援者を巻き込む展開方法なんかもよく話していますね【後藤さん】

まさに、先ほどのイベントでも話されていた『ステイクホルダーマネジメントスキル』ですね!


そうです! 遜って『スキルなんてない』と言われる方が多いのですが、自治体を動かすって一般企業から見たらすごく大変なこと。日ごろから省庁や企業と上手に調整している公務員さんたちは、りっぱなステイクホルダーマネジメントスキルをすでに持っているんですよ。リスキリングの仕組みが進んでいるシンガポールでは、政府が掲げている『今必要なスキル』の2位にステイクホルダーマネジメントスキルを挙げています。こんな大事なスキルを持っているのだから、自信を持って大丈夫、といつも話しています(笑)【後藤さん】
Q.さまざまな地方自治体のリスキリングに携わっている後藤さんから見て、加賀市がリスキリングを強化することによって、期待したいこととはどのようなことですか?
加賀市には美味しいカニや海の幸を提供するお店がたくさんあるのですが、実はインバウンド用の英語や中国語のホームページがあるお店がまだ少ないのです。海外の方は『ここに行く』と目的を持って来る傾向が強いので、事前にアクティビティの予約をしようとするんですが、外国語対応のサイトがないから、デジタルで予約が取れないんです。せっかくのインバウンド需要を取り逃してしまっています【後藤さん】
また、海外では美味しいズワイガニのお刺身を食べようとするととんでもない金額を払わないといけませんが、加賀市に来たらもっと手頃なお値段で食べることができます。しかも美味しいとくれば、海外マーケットとの出会いにつながりますよね。戦略的な輸出につながるわけです。つまり、多言語を学んだり、インバウンド向けのホームページを作るなどのリスキリングをすることで、地方の市場が潤うんですよね【後藤さん】

本当ですね。リスキリングで地方産業の活性化につながるのですね!


それだけでなく、人が訪れるようになれば売り上げが上がり仕事が増え、移住者も増えます。つまり、税収も増えるから自治体も活性化するんですよ。私はいつも『リスキリングは三方良し』と言っているのですが、きちんと企業がリスキリングすると、従業員が育ち企業も儲かり、税収も上がるんです【後藤さん】

すごい、リスキリングが生み出す経済効果は莫大ですね! 先ほどのイベントでも挙げていたIDスキルを持つ、というのが大きな強みになりそうですね


はい、その通りです。加賀特有の社会課題の解決のヒントは、加賀の方の中にあります。でも、自分の経験とそのストーリーと動機に説得力がないと、社会起業家として共感を得にくい。今持っている自分の”手中の鳥“を見つけて、IDスキルを培っていってほしいと思います。そういった人材が育っていくことが、解決策につながるんです【後藤さん】

答えは自分の中にあるんですね。僕も自分のスキルを見直して、リスキリングについて考えてみたいと思います。本日はありがとうございました!


スマートシティ化と人材育成でより住みやすい環境へ

今回のリアルイベントは、社会課題を解決する起業の考え方や必要なスキル、そして自身に必要なリスキリングについて、学ぶきっかけを提供する場となりました。人口減少による過疎化など、加賀市の課題の解決はもちろん、自身のスキルの見直しにもつながり、モチベーションが高まった参加者も多かったようです。

加賀市は、人口減少や少子化への歯止め政策として、人材育成や教育にも力をいれています。スマートシティ化でハード面の進化、そしてリスキリングなどの人材育成で市民のソフト面の強化につなげれば、より進歩的で人々が住みやすい環境につながっていくはず。今後も加賀市の取り組みに目が離せません!

加賀市で行われている取り組みをもっと詳しく見る

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