Q

現在、特定の部下への対応に困っています。彼は仕事熱心なので、プロジェクトの一部分を任せることがあるのですが、彼はよく不安な気持ちを口にします。私は「人は任されないと育たない」と考えているのであまり口出しをしないようにしているのですが、彼は職場で私を見かけると、いつも自分から「悩んでいる」「困っている」「不安だ」といった感じで話しかけてきます。しかし私が、「まず自分の思うようにやってみてほしい」と伝えると考え込んでしまいます。どのように対応したらよいのでしょうか? 東京都 KYさん(プロジェクトマネージャー)

A

確かに、「人は任されないと育たない」というのは正しい考え方だと思います。いつまでも上司の完全な指示がないと動けないのでは、良いチームになっていきませんよね。プロジェクトのメンバーが、それぞれ自分自身で考えて動いてほしいという上司としての気持ちはよく理解できます。

ただ、あなたが今考えている「部下のあるべき姿」を一気に実現しようとするのではなく、段階的な達成を目指すように意識してみてはいかがでしょう。察するに、現状でその部下は、「自分の思うままにやりなさい」と放任するには早すぎるようです。

一概に部下といっても様々なタイプが存在するはずです。ロジカルな人、クリエイティブな人、エモーショナルな人といった特徴がありませんか? このような特徴を持つ人にそれぞれどのような傾向があり、何によって意欲が刺激されるのかを考えることによって、あなたの上司としての考え方がより部下に伝わりやすくなるのです。

もちろん、ロジカルな人に感情がないなどと言っているわけではありません。これは、「普段の思考や行動にどんな特徴があるのかを見極めよう」ということです。

今回のご質問のケースですと、感情の揺れが大きいと考えられることから、この部下はエモーショナルなタイプだと想定することができそうです。また、自分から上司であるあなたに話しかけてくるわけですから、コミュニケーション能力は比較的高い方でしょう。

このようなタイプは、豊かな感情を持っているがゆえに、その情の力で行動が左右されてしまいます。つまり、感情そのものが行動のエネルギーの元となっているのです。したがってこの場合は、上司であるあなたがどれだけ感情的に自分をプラスにとらえてくれているかが、彼を前に動かす重要な要因になってきます。

あなたは良かれと思って「任せる」と言ったのに、この部下は「自分は放置されている」と思ってしまう。同じ言葉を発したとしても、別の部下ならきっと「自分は信頼してもらえている」と充足感を感じているはずです。

また、部下に「他の人をサポートしたい」という気持ちが他の人よりも強い、という協調性が見られる場合は、孤立して"個人商店"のように働くよりも、言葉をかけ合い、支えあうことを実感できる方がやる気につながっていきます。

続きは次回にお送りします。

執筆者プロフィール

佐藤高史 (Takashi Sato)
株式会社コラージュ代表取締役。ビジネスコンサルタントとして人事教育・研修プログラムを数多く開発。著書「最強のプレゼンテーション完全マニュアル」(あさ出版)。

『出典:システム開発ジャーナル Vol.5(2008年7月発刊)
本稿は原稿執筆時点での内容に基づいているため、現在の状況とは 異なる場合があります。ご了承ください。