2022年11月10日、日建設計とホロラボは、高度なコミュニケーションと仕事の生産性向上を実現するワークプレイスの構築に向け、仮想空間と現実空間を融合するMRアプリケーション「Cyber-Physical Workplace」のプロトタイプを開発したと発表した。では、なぜ彼らはこのような取り組みを実施したのだろうか。そして、Cyber-Physical Workplaceとはどのようなものだろうか。今回は、こんな話題について紹介したいと思う。

MRアプリケーション「Cyber-Physical Workplace」とは?

まず、彼らはなぜこの取り組みを手掛けたのだろうか。

新型コロナウィルスにより、リモートワークが当たり前となった近年、仕事以外でのコミュニケーションの機会が激減したり、Face to Faceで対面することがなくなったりしたことで、孤独感を感じる人が増えているという。その課題をテクノロジーで解決するため、MR技術を駆使することで現実のオフィスと仮想のオフィスが融合し、働く場所にとらわれることがない未来のワークプレイスを目指しているのだ。

そこで両社は、Cyber-Physical Workplaceというアプリケーションを検討している。同アプリケーションでは、まず現実のオフィスのさまざまな建物情報をモデリングしたBIM(Building Information Modelling)データをもとにして仮想空間(仮想のオフィス)を作成。現実のオフィスに設置された人感センサーでおおまかに社員のいる位置を検知し、仮想オフィスにアバターとして表示する。

在宅ワーカーはVRデバイスを使ってこの仮想オフィスに没入する一方、現実のオフィスにいる社員はARデバイスを通じてアバターを認識し、お互いに触れ合うことができるというものだ。また、アバターの生成にはハンドトラッキング技術も活用され、指の動きまで高精度で再現できているという。

  • 仮想空間と現実空間をMR技術で繋ぐCyber-Physical Workplace

    仮想空間と現実空間をMR技術で繋ぐCyber-Physical Workplace(出典:ホロラボ)

両社は2022年8月9日に実証実験を行ったという。その実証実験においては、在宅ワーカーの孤独感が軽減されたこと、Cyber-Physical Workplaceにおいて身振り手振りを使ったコミュニケーションが可能であることなどが示されたという。

  • 現実のオフィスの社員のARデバイスから見たアバター

    現実のオフィスの社員のARデバイスから見たアバター(出典:)

いかがだっただろうか。未来には、MR技術を駆使したさまざまな仮想空間が創造され、その空間において人の活動はますます活発になることだろう。この取り組みの注目すべき点は、人が感じる孤独感など、仮想空間において発生しうる課題を解決する可能性があるMR技術を開発したことだ。仮想空間自体の華やかさや高度化を目指した技術開発も重要だが、その空間での人が感じる心理的課題などに対応することも相当重要なのだろう。