反転増幅回路を理解する(2) - 入力端子には電流は流れ込まない

先の説明で「出力が有限な大きさなら、入力端子間の電圧は本当に小さい値」という考え方でOPアンプの出力が有限な大きさになる(入出力間でバランスが取れる)ということを理解できたかと思います。

次のポイントとして「OPアンプの+入力端子と-入力端子には電流は流れ込まない。入力抵抗が非常に高い」ということがあります。そこで図2-6-1の抵抗の部分だけを取り出して、図2-6-2のように考えてみます。ここで基本的なポイントとしては、

  1. 電流は入力端子から「余計な部分に流れ出ず」抵抗だけを流れ、出力端子に流れ込む
  2. また前節のように、抵抗の中間点(つまり-入力端子)のところは、+入力端子がゼロVなので、ここがゼロVになるように出力電圧が制御される

この2つをもとに図2-6-2を考えると、単純なオームの法則で関係が決まっていることがわかります。つまり、

  1. 抵抗1(1kΩとする)には、入力電圧V1(1Vとする)とOPアンプ-入力端子のゼロVとの電圧差により生じる電流I = V1/R1(1mA)が流れる
  2. この電流I(1mA)はOPアンプの-入力端子には流れ込まず、そのまま抵抗2に流れる(1mA)
  3. 抵抗2(2kΩとする)にはそのままこの電流I(1mA)が流れ、抵抗2の上側の電圧がゼロVであることから、抵抗2の下側の電圧はオームの法則からV2 = I x R2 = -2Vになる
  4. 前段の3の結果が-2Vであり、極性がマイナスなのは、電圧の差、向きという点を考えれば理解できる

この関係を満足するように、つじつまがあうように、OPアンプの出力電圧が自動的に制御されます。またこれは連載2回目で示したような「単純なオームの法則そのまま」であることも判ると思います。

これがOPアンプを「帰還回路で入力と出力の間のバランスを制御し、目的の動作をさせる」ということなのです。以降この回路の考え方でOPアンプを使っていきます。

ところで、「2つの入力端子間の電圧が同じなら、その相互で電流は流れないのか?」と思うこともあると思います。しかし、ここまでの説明で気がつくと思いますが、2つの入力端子間の電圧の違いはただ、とても小さいだけで(そのように制御されているだけ)、別につながっているわけではないのです。

なお、非反転増幅回路は図2-6-3のように動作します。図中で簡単に説明しておきますが、さらに興味のある読者の方は、他のOPアンプ解説書を参照してみてください。

図2-6-2 OPアンプの反転増幅回路について詳しく動作を説明する

図2-6-3 OPアンプの非反転増幅回路について「簡単に」説明する

OPアンプの増幅率が「帰還」で制御されるようすを乗馬で考える

「回路としての動作では実感が沸かない」という人もいるでしょう。そこで現実生活で「帰還」のようすを考えてみましょう。

たとえば図2-6-4のように、まるで暴れ馬のように活発だが、乗り手に忠実な馬に乗ることを考えましょう。乗り手がおらず手綱が制御されていない場合は、馬は凄い勢いで左右に走り出したりします。

しかし馬に乗り手が乗り、乗り手が手綱を制御し、ちょっとでも手綱を動かせば、馬は「すっと」走り出します。馬自体が「暴れ馬のように活発」ですから(OPアンプ自体の利得が高い)、乗り手は馬の活発な様子を見ながら(OPアンプの出力から制御用の電圧を得る)、手綱を制御し(OPアンプの出力電圧を入力側に帰還する)、馬を制御します(OPアンプの出力を目的の電圧に調整する)。

さらにここで(繰り返しだが)、馬自体が「暴れ馬のように活発」ですから(OPアンプ自体の利得が高い)、手綱を動かす様子はほんのちょっとでよい(OPアンプの+入力端子と-入力端子間の電圧は本当に小さい値)ということも言えるわけですね。

まさにこの馬と乗り手のようすが、増幅率がとても大きいOPアンプという素子を帰還回路により制御する方式なのです。

図2-6-4 OPアンプの「帰還」のようすを乗馬で考える

当然ながら電源回路が必要

ここではOPアンプの回路モデルについて示しましたが、実際には連載7回目で説明したように「当然ながら」電源回路が必要です。ここまで説明したようなクリーンな電源をOPアンプに供給する必要があります。

著者:石井聡
アナログ・デバイセズ
セントラル・アプリケーションズ
アプリケーション・エンジニア
工学博士 技術士(電気電子部門)

(イラスト Hayabusa)