ラジコン歩行ロボット「三郎」の失われたメカニズム

話が歩行ロボット「三郎」に及ぶと、芳賀氏は1965年発行の世界文化社『科学ブック』を来場者に披露。三郎を紹介する記事を子供時代にリアルタイムで見ていたのだとか。

「こんなロボットがもうじき家の中に来るかも知れない…鴨居のところ通れるのかな? とか、いろんな心配をしたりして(笑)。相澤ロボットが、ロボットをマンガやSFではない現実の存在として引き寄せてくれたんですよね」

1965年発行の『科学ブック』(中級17 おもちゃ と どうぐ)を披露する芳賀氏

三郎が掲載された記事

三郎は1961年10月23日に誕生。相澤ロボット兄弟の三男にして、すり足ながらも二足歩行(?)をこなした最初のモデルだ。しかし夕張での静態展示のために、バッテリやモーターは外され、内部のフレームも溶接で固定されてしまっている。これを再び歩行できるようにすることは、修復プロジェクト発足当初からの悲願でもあった。

秋本氏は三郎の往時の歩行メカニズムについても解説してくれた。両足底に仕込まれたモーター駆動のゴム車輪を、ラジコンで左右交互にスイッチを入れて歩かせる仕組みで、腕も脚に連動して前後に振られるようになっていたと言う。

「バッテリとモーターは一番重いですから、両足の底に入れて。胴の中にはスイッチ。当時は無線操縦も今みたいなデジタルでなくてアナログ。チャンネルも4つか5つしかないですから、それを上手く組み合わせて、動かせるようにしていました」

また、三郎の両肩には伸縮可能なロッドアンテナが搭載されており、一方は操縦用。もう一方は音声用となっており、担当者が陰からトランシーバーでお客さんと対話できた。

サンライズで数々のロボットアニメに関わってきた井上氏は、このアンテナについて「2本あることで、ロボットとしてすごくバランスが取れていますよね。1本でもたぶん受信はできたんでしょうけど、2本なのがミソ」と評した。確かに、一見レトロなデザインだが、相澤ロボットには後のガンダム等にも通じるカッコよさが秘められているのだ。

三郎を囲む秋本氏と修復プロジェクトのメンバー。サンライズ井上氏は両肩のロッドアンテナに注目。初代ガンダムのビームサーベルに通じる角度もカッコよさのポイントか