コロナ禍で広まったリモートワーク。リモートワークと相性のいいテック業界では一気にリモートワークが進んだ反動か、米国では強制的に出勤させるポリシーを導入する動き(“オフィス回帰”)もある。そのような状況で、リモートか出社かという議論はもう終わりだという。
リモートor出社
Dell(デル)が2024年初め、リモートワーク中の従業員に出社を要請したところ、半分以上のリモート勤務者がリモート勤務の継続を選択したとのこと(完全出社ではなく週3日出勤だったようだが)。
Inc.が「The Return-to-Office Productivity Argument Is Over」という記事で紹介している。
リモート継続を選んだ場合、昇進の機会を失う可能性があるということを理解したうえで、リモートを選んだということだ。この事実は、生産性に関する議論を無意味なものにしており、キャリアを犠牲にしてでもリモートワークを選んだとの見立てだ。
どういうことだろう。仕事時の服装の例を挙げると、仕事をするにあたってスーツなどのビジネスの装いをするのか、オフィスカジュアルな装いをするのか--。
一昔前はビジネスではスーツが暗黙のルールだったが、現在は(職種や企業にもよるが)カジュアルに向かっているのが大きな流れだ。
ビジネススーツに身を包むと気が引き締まる、プロフェッショナルな気持ちになり、より良いビジネスの成果が出るという考え方ができるだろう。しかし、暑い夏にスーツを着たくないし、スーツはそれなりの投資になる。
それに対し、自由な服装は快適だし、自由や創造性と言うキーワードが連想される。だが、気が緩むのでビジネスの成果はスーツほどではないかもしれない。
スーツorカジュアルをリモートor出社に置き換えて考える
スーツか、カジュアルか--。ビジネスから見たメリット、デメリットがそれぞれある。しかも、一般的に言われているメリット、デメリットはすべての人には当てはまらない。それぞれ正しいが、もはや重要ではないという。これをリモートか出社かの議論に当てはめてみよう。
オフィスでは対面のコミュニケーションが可能で、計画していない会話から素晴らしいアイデアが生まれる可能性がある。メンバーの顔を見ることで、チーム、そして社としても一体感が強化されるはずだ。
しかし、人がいるからこそ効率が悪い時もあるだろう。リモートであれば通勤範囲にいない社員を起用できるが、一体感はそれほど生まれにくいかもしれない。これらも一般的な話で、業種、会社、職種、その人により異なる。
実際のところ、ビジネススーツを必須とする企業や職場は減っている。そして、今回のリモートを選択したという出る社員の動きは、これと基本的に同じであるという。
「オフィス回帰か、リモートを継続するのかの議論は生産性の点からは意味をなさなくなった。従業員は生産性とは別の理由でリモートを選択している」とし、それぞれの利点・欠点を比較すること自体が無意味だというのだ。
リモート(少なくとも、毎日出社はしたくない)の流れは避けられない。だとすれば、企業はリモートワークへの対応、それぞれの役割に適したリモート・ハイブリッドワークモデルの開発に舵を切るべきではないかと、問いかけている。
また、生産性以外の視点を持つことも重要だという。従業員のニーズは多様であり、企業の目標とどのようにバランスを取っていくのかがポイントになりそうだ。