韓国の尹錫悦大統領がオランダを訪問し、同国のルッテ首相との会談後、共同声明の形で両国間の関係強化や半導体分野での密接な連携について言及したことが明らかになった。

オランダ政府と3つの覚書を締結した韓国政府

それによると韓国政府とオランダ政府は、半導体と経済安保分野における以下の3件の了解覚書(MOU)を締結したという。

  • 先端半導体アカデミー協力MOU:両国が協力して半導体人材を大量育成する仕組みを作り、半導体分野の未来世代を共に育成する
  • 核心品目協力MOU:半導体などの戦略産業分野におけるサプライチェーンの弱い部分を補完していく
  • 韓国・オランダ半導体対話MOU:両国の産業当局が半導体政策で協力する

SamsungとASMLが韓国に高NA EUVを用いた技術開発施設を設立へ

また、尹大統領はSamsung Electronicsの李在鎔会長らとともにASMLを訪問。SamsungとASMLが1兆ウォンを共同出資する形で、先端EUV露光技術を用いた次世代半導体プロセス技術開発施設(R&D Fab)を韓国に設立する協業覚書を締結したという。

韓国の業界筋によると、高NA EUV露光装置を活用した「未来半導体技術研究開発センター(仮称)」は華城市の東灘先端産業団地近くに建設予定だという。ASMLは、すでにimecとHigh-NA Labを設置済みで、高NA EUV露光装置を用いたリソグラフィ開発を進めているが、今回の研究施設はもっと幅広く高NA EUVリソグラフィを用いた次世代半導体プロセスの研究開発を行うものとなる模様である。

  • 韓国の尹大統領

    ASMLの本社クリーンルームを視察する韓国の尹大統領(中央)とオランダのウィレム・アレキサンダー国王(左から4人目) (出所:KOREA.net/韓国大統領室キム・ヨンウィ)

Samsungは、競合のTSMCに先駆けて3nmプロセスでトランジスタ構造をFinFETからGAA(Gate-All-Around)へと変更。2025年には2nmプロセス(SF2)での、2027年には1.4nmプロセスでの量産をそれぞれ開始する計画を立てているが、そうした2nmプロセス以降には高NA EUVの活用が必須となってくる。そのため、韓国では今回の協業が微細化における競合に対する競争優位性の確保につながる基盤になるとしている。

SK hynixもASMLと共同開発を模索

また、今回の尹大統領のオランダ訪問では、複数の両国の企業間で協業に関する覚書が締結された。その中には、SK hynixとASMLの間で交わされたEUV露光工程での電力使用量と炭素排出を減らす技術の共同開発や、現代自動車とNXP Semiconductorsによる車載半導体開発協力なども含まれるという。

  • 韓蘭CEOラウンドテーブルの様子

    韓蘭CEOラウンドテーブルの様子 (韓国通商産業資源部)

  • 韓蘭ビジネスフォーラムMOU締結式の様子

    韓蘭ビジネスフォーラムMOU締結式の様子 (出所:韓国通商産業資源部)

韓蘭の半導体連携は対中政策の一環か?

こうした韓国とオランダの動きを受けて、中国の人民日報の姉妹紙である環球時報(英語名:Global Times)が、一連の覚書締結に対して12月14日付で、「韓国とオランダの『半導体同盟』の衝撃はどれほど大きいのか」と題した記事を掲載した。

それによると、今回の連携について中国のアナリストたちは、韓国が政治的配慮から中国と距離を置き、西側諸国に接近する動きとみなしており、今後の産業の見通しは米国の対中政策の「顔色」に左右されることは必至だと分析している。