藤田医科大学とホーユーの両者は11月13日、「小麦依存性運動誘発アナフィラキシー」(WDEIA)の新規抗原「α/β gliadin MM1」を発見したことを発表した。

なお同抗原は、世界保健機関(WHO)と国際免疫学会連合(IUIS)のアレルゲン命名法小委員会「World Health Organization and International Union of Immunological Societies Allergen Nomenclature Sub-committee」によって「Tri a 21.0201」と命名され、2023年9月にデータベースへと登録されたことを発表した。

同成果は、藤田医科大 医学部 アレルギー疾患対策医療学講座の松永佳世子教授を筆頭に、同・医学部 総合アレルギー科、ホーユーも参加した共同研究チームによるもの。

花粉症や食物アレルギーなど、日本では2人~3人に1人が何らかのアレルギーを持つとされる。さまざまな種類の食物アレルギーがある中で、特に小麦アレルギーは、患者数が上位に位置していることがわかっている。たとえば、消費者庁が2022年3月に発表した「令和3年度食物アレルギーに関連する食品表示に関する調査研究事業報告書」によれば、即時型食物アレルギーの原因食物として、サンプル(6080例)中の8.8%を小麦が占め、鶏卵(33.4%)、牛乳(18.6%)、木の実類(13.5%)に次いで第4位となっている。

小麦アレルギーは、発症した年代によってその症状が異なるのが特徴で、乳幼児期に症状が出た場合は、小麦を摂取するだけで発症してしまう。それに対して成長してから発症した場合は、小麦を摂取するだけでは発症しないが、運動や非ステロイド性抗炎症薬などの二次的要因があった時にのみ発症する、WDEIAのケースが多くなることがわかっている。WDEIAでは、小麦を摂取しても二次的要因がなければアレルギー症状が誘発されることはないことから、正確にWDEIAの病型を鑑別診断することは、患者の食事指導に重要である上に患者のQOLにも大きく影響するという。

小麦アレルギーの診断において一般的に用いられる「ω-5 gliadin」特異的IgE抗体検査では陰性となるWDEIAでは、精査のために小麦摂取後に激しく運動する(必要に応じてアスピリン内服を併用する)ことで発症を確認する「経口負荷試験」が行われることがある。しかしこの試験は、患者の身体への負担やリスクが大きいことが課題となっていた。それに対し、WDEIAの新規抗原として今回発見されたα/β gliadin MM1を用いた特異的IgE抗体検査であれば、その負担やリスクを回避できることが期待される。

  • (左)従来のω-5 gliadin特異的IgE抗体検査値。(右)今回のα/β gliadin MM1特異的IgE抗体検査値

    (左)従来のω-5 gliadin特異的IgE抗体検査値。(右)今回のα/β gliadin MM1特異的IgE抗体検査値(出所:藤田医科大Webサイト)

研究チームによると、α/β gliadin MM1特異的IgE抗体検査は、現在は保険適用外の検査項目だが、ホーユーのアレルギー受託解析サービスで実施することが可能とのこと。当該受託解析サービスは、アレルギー疾患の研究成果をいち早く臨床現場にフィードバックする施策の一環として2022年11月にスタートし、α/β gliadin MM1抗原に限らず、藤田医科大とホーユーで発見された数多くの抗原がラインナップされているとする。

両者は今後も、藤田医科大の特色の1つであるアレルギー疾患の診療や研究などに特化した総合アレルギーセンターを基点とし、ホーユーが連携して今後も継続的にアレルギーに関する知見の探求を行うと共に、その成果を迅速かつ積極的に社会に還元し、一人でも多くのアレルギー患者のQOL改善に貢献できるよう努めていくとしている。