鴻海精密工業(Foxconn)がインド南部カルナータカ州政府と総額6億ドルを同州に投資してApple iPhoneの筐体ならびにApplied Materials(AMAT)の半導体製造装置を生産する基本合意書(LOI)に署名した。同州のM. B. Patil大・中規模産業大臣がX(旧Twitter)に両社の合意を投稿したことで判明し、その後、複数のインドメディアがこの件について一斉に伝えた。

鴻海は、中国と同じようにインドでも、グループ内で部品から組み立てまでを担う垂直統合型経営を目指しており、すでにインドでのiPhone生産に17億ドルを投じる計画を進めており、今回の投資もその一環とみられる。

インドでの半導体製造装置工場に鴻海とAMATが共同出資

同大臣によると、iPhone筐体工場は、鴻海傘下の富士康工業互聯網(フォックスコン・インダストリアル・インターネット:FII)が3億5000万ドルを投じ、同州に1万2000人の雇用を創出する予定であるという。一方、半導体製造装置工場は、AMATと共同で2億5000万ドルを投じ、1000人の雇用創出する予定だという。鴻海は、7月31日、インド南部のタミル・ナードゥ州とも、スマートフォン組み立て工場設置に1億9400万ドルを投じ、6000人の雇用を創出することで基本合意書に署名したとインドメディアは伝えている。

鴻海のiPhoneの組み立てシェアは約7割だが、Appleは現在、生産拠点の分散を図っており、その意向を受け、鴻海も中国からインドへの生産移転を進めている。インド政府も製造業振興政策「Make in India」として補助金支給を進めているほか、地方州政府も同様に補助金を提供するなど誘致を熱心に進めている。

インドでの半導体製造を諦めない鴻海

鴻海は、インドの金属・天然資源大手Vedantaと立ち上げた半導体デバイス製造の合弁会社から撤退すると7月に発表したが、この動きは決してインドでの半導体製造をあきらめたことを意味するわけではないようである。

Vedantaとの決別については、プロジェクトが十分なスピードで進んでいないうえに、さまざまな困難を乗り越えることができなかったためと鴻海は説明している。

インドの半導体業界関係者によると、鴻海はインドに半導体製造装置、半導体デバイス、そしてその応用最終製品に至る強固なエコシステムを構築しようとしており、インドで半導体生産拠点立ち上げに向け、新たなパートナー探しを積極的に進めているといる。