京都大学(京大)は4月7日、繰り返し心理社会的ストレスにさらされた際に、適応反応を示すか不適応反応(行動変容)を示すかの個体差を決定する脳内メカニズムを、マウスを用いた動物実験で発見したことを発表した。

  • 今回の研究の概要

    今回の研究の概要(出所:京大プレスリリースPDF)

同成果は、京大大学院 医学研究科の内田周作特定准教授、同・稲葉啓通大学院生らの研究チームによるもの。詳細は、米国科学振興協会が刊行する「Science」系のオープンアクセスジャーナル「Science Advances」に掲載された。

脳には、ストレスを受けてもそれに適応するシステムが備わっているため、通常の生活を送ることが可能だ。しかし一部の人は、精神的・肉体的・社会的ストレスに適応することができず、精神疾患を発症してしまう。このように、ストレスを感じる度合いは個人により異なるが、その差異が生じる原因はよくわかっていないとする。

そして、ストレスを受けた脳内で起こっている変化を理解することは、レジリエンスを高める制御法の開発、うつ病や不安障害などの精神疾患の病態解明や予防、さらには新規治療法の開発につながることが期待される。

そこで研究チームは今回、ストレス感受性の個体差構築の脳内メカニズムを解明することを目的として、ストレスに強い系統のマウス(C57BL/6マウス(B6マウス))とストレスに弱い系統のマウス(BALB/cマウス(BALBマウス))を、それぞれレジリエンスモデル、感受性モデルマウスとして用いて、脳内のどこで起きるどのような変化が行動異常を引き起こす原因となっているのか検証したという。

実験では、遺伝的背景の異なるB6マウスとBALBマウスに繰り返しの心理社会ストレスを5日間負荷し、その後、相手マウスに対する興味を評価する行動試験である社交性試験が行われた。その結果、ストレス負荷後のBALBマウスは相手マウスとの接触を嫌う(インタラクション時間の短縮)といった不安・うつ様行動の増加が認められた一方、B6マウスはストレスを負荷しても不安・うつ様行動の増加は観察されず、ストレスに強いレジリエンスマウスであることが確認された。

続いて、ストレスに強いマウスと弱いマウスの脳内においてどのような変化の違いがあるか、神経活動マーカー「Fosタンパク質」の発現量を定量することによる検討が行われた。その結果、BALBマウスの前帯状皮質において、Fosタンパク質の量は顕著に減少していた一方、ストレスレジリエンスを示すB6マウスではそのような変化を認めなかったという。

次に、BALBマウス前帯状皮質における神経細胞を遺伝学的手法を用いて除去する実験を行ったところ、社交性の有意な低下が認められたとする。研究チームはこの結果から、前帯状皮質が社会性に重要な脳領域であることが示唆されたとしている。

  • 前帯状皮質はストレス負荷後の社交性異常に必須の脳領域

    前帯状皮質はストレス負荷後の社交性異常に必須の脳領域(出所:京大プレスリリースPDF)