サイボウズは2月24日、オンラインで決算発表と事業説明会を開いた。同社 代表取締役社長の青野慶久氏が説明した。

各サービスの売上高を初公表

同社ではグループウェアの「サイボウズ Office」と「Garoon」、業務システム構築プラットフォーム「kintone」、メール共有システム「Mailwise」を軸としたクラウドサービスを提供している。

2022年12月期の連結売上高は前年比19.4%増の220億6700万円、営業利益が同57.5%減の6億1100万円、経常利益が同32.8%減の9億8700万円、当期純利益が同88.0%減の6億6000万円となり、クラウド関連売上は同23.8%増の186億4900万円、クラウド売上構成比率は昨年から3.5ポイント増の84.5%となった。

  • 連結売上高・営業利益の推移

    連結売上高・営業利益の推移

青野氏は業績に関して「この2年間の全社スローガンとして『BET!』を掲げ、赤字を出してもいいから徹底的に投資していくという方針のもと事業を展開した。営業利益の減少については投資した結果だ。特に、広告宣伝費としてkintoneのテレビCMを中心に前年比31.5%増の64億5200万円と積極投資を行い、2020年のkintoneの認知度は19%だったが、2022年は28%に上昇した」と述べた。

  • サイボウズ 代表取締役社長の青野慶久氏

    サイボウズ 代表取締役社長の青野慶久氏

kintoneで自治体DXを積極支援

今回、同社では各サービスの売上高とパートナーによる国内クラウド関連売上高を初公表している。kintoneは前年比32.4%増の104億1400万円、Garoonが同13.1%増の45億6200万円、サイボウズ Officeが同5.3%の50億8800万円、Mailwiseが同16.2%増の6億7800万円。

  • kintoneの売上高

    kintoneの売上高

同氏は、各クラウドサービスのセキュリティについて「重点的に投資しており、日本向けサービスのクラウドインフラはデータセンターを借りて、サーバを調達し、自社で運用して手間をかけている。結果として、強固かつサービスレベルが高いものができている」と力を込める。

実際、外部機関の評価として、2021年以降はクラウドサービスの運用基盤のcybozu.comとcybozu.com上で提供するGroon、kintoneがISMAP(政府情報システムのためのセキュリティ評価制度)に登録。また、各サービスは情報セキュリティマネジメントシステム「ISMS」の認証を取得している。

もはや、同社の成長ドライバーの1つとなっているkintoneは昨年末時点で契約社数が2万7500社、平均導入社数が550社/月、東証プライム市場の3社に1社が導入しており、導入担当者は非IT部門が93%を占めている。

エンタープライズ企業向けのkintoneユーザー会「kintone Enterprise Circle(kintone EPC)」の参加者数は約20社となり、ユーザー同士で自社の課題や取り組みをアウトプットし、フィードバックや有益な情報、ノウハウを共有することで各社における利用促進につなげている。同コミュニティの声をもとに、昨年7月にはkintoneガバナンスガイドラインを公開(無料公開中)し、DXの内製化の一助になっているという。

kintoneは民間企業はもちろんのこと、自治体でも活用されている。同社が自治体のDX推進を全面的にサポートする今年6月までの「kintone1年間無料キャンペーン」などの施策が功を奏し、参加自治体の9割以上が次年度にkintoneの導入意思があり、うち2割が全庁規模での導入を検討しており、2022年には累計の導入自治体数は190に達した。

また、昨年4月には全庁導入する場合に適用される新ライセンス体系をリリースしており、最大60%オフになる。加えて、省庁に対してもkintoneを積極的に展開していく方針としており、業務DXや情報共有の効率化を目指し、パートナー企業による伴走型支援の普及を目指すほか、今年4月から省庁職員の出向の受入れを予定。

  • 自治体DXをkintoneで積極的に支援

    自治体DXをkintoneで積極的に支援

そのほか、パートナービジネスも拡大しており、同社の国内売上高の81.6%は間接販売が占め、2022年の売上高は110億300万円となり、連携サービス数は370以上、パートナー社数は約400社にのぼる。

  • パートナービジネスの売上高

    パートナービジネスの売上高

パートナービジネスの協業事例としては、地方銀行によるICTコンサルティングを挙げており、地域企業にサイボウズ製品を提案してDX(デジタルトランスフォーメーション)を後押しし、すでに地銀のコンサルティングで400社がサイボウズ製品を導入しているという。

一方、グローバルの状況に関しては、米国が前年比25%、中華圏が9.2%、東南アジアが16%成長。米国はリコーとの協業の本格稼働に向けて、組織強化とともに顧客のリード獲得拡大に注力する。

中華圏では、中国はゼロコロナ政策による行動制限の影響があったものの、売り上げは伸長し、台湾は新規契約が約2倍となり、8割がローカル企業の受注となった。東南アジアではタイを中心にローカル企業の受注件数が増加し、昨年3月にはマレーシア法人を開設している。

  • グローバル展開の概要

    グローバル展開の概要

2023年の業績予想

2023年12月期の業績予想は連結売上高が254億9700万円、営業利益が23億7600万円、経常利益が24億5000万円、当期純利益は15億4100万円の見通し。

  • 2021年、2022年の実績と2023年の予想

    2021年、2022年の実績と2023年の予想

また、2023~2025年までの全社スローガンを「25BT」(2025 and go Beyond with Trust)とし、“3年後の2025年を1つのマイルストーンとし、さらにその先の見据えた取り組みを、信頼を大切に進めていこう。”とした。

最後に、青野氏は「短期ではなく、中長期の投資にすることで営業利益が戻ってくると予想している。また、kintoneはノーコードであり、プラグインと外部サービスと連携できることに加え、伴走パートナーやユーザーコミュニティの存在でリスキリングも可能とし、DXの内製化が期待できる。kintoneのエコシステムは強固であり、当社の強みでもある。これを拡げていくことで現場の人がDXを進められる。自分たちでDXを進められれば変化に強い組織に成長していくことから、失われた30年を取り戻すような組織に変化できる」と締めくくった。