北海道大学(北大)は10月7日、現在の有機ELテレビなどに応用されている透明酸化物半導体「IGZO」の電子移動度(約10cm2/Vs)の5倍以上となる高移動度50cm2/Vs以上を示す、超高解像度テレビ用材料である透明酸化物半導体「ITZO」の高い電子移動度の起源を解明したと発表した。

同成果は、北大 電子科学研究所の楊卉客員研究員、同・松尾保孝教授、同・曲勇作助教、同・太田裕道教授らの研究チームによるもの。詳細は、米国化学会が刊行する電子材料に関する全般を扱う学術誌「ACS Applied Electronic Materials」に掲載された。

今後、今以上に高解像度で綺麗なディスプレイを実現するためには、現状のIGZOを超す高いキャリア電子移動度を示す透明酸化物半導体が必要とされており、そうした次世代材料の1つとして期待されているのが、インジウム(In)・スズ(Sn)・亜鉛(Zn)・酸素(O)からなるITZOだという。しかし材料として用いるためには材料設計指針を得る必要があり、そのためにはまずITZOの高いキャリア電子移動度の起源を明らかにする必要があったという。

そこで研究チームは今回、独自開発した熱電能電界変調法を用いて、ITZO薄膜およびITZO薄膜トランジスタの熱電能を計測・解析することにしたという。

具体的には、キャリア濃度の異なるいくつかのITZO薄膜が作製され、その電子輸送特性(Hall移動度、体積キャリア濃度、熱電能)が計測されたほか、ITZO薄膜トランジスタが作製され、そのトランジスタ特性の計測と、熱電能電界変調法によるトランジスタ特性の解析も行われた。