茨城大学と近畿大学は6月13日、固体や薄膜などの凝集状態で円偏光を発光する「凝集誘起増強円偏光発光(AIEnh-CPL)材料」であるキラルな「ペリレンジイミド誘導体」の時間分解発光測定により、凝集状態における発光種を明らかにすると共に、真空蒸着膜においても円偏光が発光することを確認したことを発表した。

さらに、単量体および二量体に対する量子化学計算により、凝集状態で円二色性を示すメカニズムを明らかにすると同時に、キラルなペリレンジイミド誘導体を発光層に用いた有機ELデバイスを作製し、円偏光を発光する有機ELデバイスの開発に成功したことも併せて発表された。

同成果は、茨城大大学院 理工学研究科(理学野)の西川浩之教授、同・山口央教授、近畿大 理工学部の今井喜胤准教授、産業技術総合研究所 電子光基礎技術研究部門の溝黒登志子主任研究員らの共同研究チームによるもの。詳細は、日本化学会が刊行する欧文学術誌「Bulletin of the Chemical Society of Japan」(オンライン版)に掲載された。

一般に有機物の蛍光材料は、溶液中のような孤立状態で強く発光するのに対し、凝集状態では消光するという凝集起因消光(ACQ)が起こる。一方、円偏光発光(CPL)には発光団がキラルに空間配置する必要があると考えられることから、CPLデバイスには凝集状態でも発光する材料が必要となるとされている。

キラリティを有するペリレンジイミド誘導体である「(S,S)-BPP」および「(R,R)-BPP」(2つを合わせてキラルBPP)は、溶液状態ではCPLを示さないが、高分子フィルムへの分散やKBrペレットなどの固体状態でCPLを示すというAIEnh-CPL材料であることが明らかにされている。キラルBPPは凝集状態でCPLを示すことから、CP-OLEDの発光層として適していると考えられるという。そこで研究チームは今回、キラルBPPのCP-OLEDへの利用に不可欠である薄膜状態での光学的性質を明らかにすると共に、この物質が凝集状態で円偏光特性を示すメカニズムの解明を試みることにしたとする。