グローバルな半導体製造装置材料の業界団体である国際半導体製造装置材料協会(SEMI)の米国本部は7月10日(米国時間)、米サンフランシスコで開催中の半導体製造装置材料展示会「SEMICON WEST」において、2019年年央版の半導体製造装置市場予測を発表し、2018年末に予測した前年比4.0%減の595億8000万ドルから、同18.4%減の527億ドルへと下方修正したことを明らかにした。

今回の下方修正についてSEMIは、地政学的緊張が市場の見通しの不透明さを増すこととなり、半導体企業による設備投資に対する下方修正が行われたことを反映した結果としている。また、同予測では、2020年には投資が再開され、同11.6%増の588億ドルとしている。

装置カテゴリ別の予測としては、ウェハプロセス処理装置市場が同19.1%減の422億ドル、その他の前工程カテゴリ(ファブファシリティ、結晶成長・ウェハ製造装置、マスク/レチクル製造装置など)は、同4.2%減の26億ドル、組み立ておよびパッケージング装置は同22.6%減の31億ドル、テスト装置が同16.4%減の47億ドルとなっている。

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    半導体製造装置売上高の推移と今後の予測、ならびに地域別内訳 (出所:SEMI)

2019年の地域別トップは台湾、2020年は中国の可能性も

2019年の地域別装置売上高については、台湾が同21.1%増の123億ドルと、2016年以来の最大市場に返り咲いた。2位は前年に続き中国で、2017年、2018年ともにメモリバブルに沸き、地域別トップシェアとなっていた韓国は3位へと転落する見通し。ただし、台湾と同8.4%増の北米以外の地域は、2018年比でマイナス成長となると見られている。

また、2020年については、韓国のメモリ向け設備投資の再開と中国における新規半導体製造プロジェクトへの投資が中心となって市場が回復すると予測されている。当該年の日本の装置販売額は同46.4%増の90億ドルになる見込みのほか、中国がはじめて地域別トップになる可能性が高いという。

韓国への半導体材料輸出規制がさらなる市場混乱をもたらす可能性

もし、2020年にマクロ経済が改善し、貿易の緊張が緩和されれば、さらなる上振れが予想されるとSEMIでは説明しているが、米中貿易戦争と米中のハイテク覇権争いがさらに激化をすることになれば、中国での設備投資が先延ばしされることもありうる。また、DRAM価格の回復が2020年までずれ込むとの観測も出始めてきた。さらに、こうした動きに輪をかけそうな動きが、経済産業省による「フッ化ポリイミド」、「レジスト」、「フッ化水素」という3種類の韓国向け半導体・ディスプレイ材料の包括輸出許可制度から除外するとの決定により、韓国のメモリ業界は大混乱になっており、製造ラインが止まらないように材料の確保に追われる事態になっている。Samsung Electronicsの事実上のトップである李在鎔(イ・ジェヨン)副会長が、自ら来日してひそかに材料確保の交渉を行わなければならない状況になっていると日本ならびに韓国の一部マスコミが伝えているが、こうした状況下において、ファブの稼動に支障が生じれば、韓国におけるメモリ向け設備投資のさらなる先延ばしもありうる。そうなれば、2020年に市場が回復するとの予測は崩れ、多くの市場調査会社などが予測している2桁%の成長率の実現は難しくなる可能性も出てくる。そうした意味でも、グローバルを取り巻くさまざまな情勢を注意深く見守っていく必要があるだろう。