日立製作所(日立)は7月13日、ダイセルの協力のもと、製造現場における作業員の逸脱動作やライン設備の動作不具合などの予兆を検出し、品質改善や生産性向上を支援する画像解析システムを開発したと発表した。

近年、さまざまな業界で発生しているメガリコール問題などをきっかけに、製品不良発生時に原因を特定し対策を講じるための製造実績データを蓄積・管理する重要性が再認識されている。今後、製造現場においては、IoT技術を活用した新たな製造実行管理システムを導入することにより、加工実績データや検査データ、作業者の目視チェック結果などの作業実績を収集し、これらの製品実績データを相互に関連づけることで新たなトレーサビリティを実現することが求められている。

日立とダイセルは2015年2月から16カ月にわたり、ダイセル播磨工場の製造実績データを3M(Man、Machine、Materia)の観点から解析し、その成果を+M(Method)にどのようにつなげていくか、検討してき。その結果、製造現場における作業者の動作や設備・材料の状態を定量的に把握することが、製品の品質改善や生産性の向上、トレーサビリティの精度向上を図るうえで有効であることが判明した。

この結果を受けた2社は、播磨工場で培われてきた生産ノウハウをベースに、日立の画像解析技術を用いて、製造現場の監視画像を解析して逸脱動作や設備・材料の不具合などを早期に発見し、製造実行管理システムと連動することで、品質改善や生産性向上を支援する画像解析システムを開発。実証試験の結果、製品の工程内保証率を格段に向上できる見通しを得た。

今回開発した画像解析システムでは、「3M」の観点から、作業員の動作計測のため3次元形状を取得できる距離カメラを用い、人物の手や肘、肩といった関節位置情報を取得。現場でのヒアリングや観察をもとに、腕や足の長さといった作業とは直接関係ない情報を除去した標準動作モデルを作成し、実際の作業員の関節位置情報に基づいたデータと標準動作モデルを統計的に比較することにより、逸脱動作を判定する。このほか、設備や材料の不具合についても、通常画像との差分分析により異常を検知する。また、製造実行管理システムと連動することにより、溶接不良についても高速カメラによる発光部色分析と既存設備の電流、電圧データなどを併用し、異常を検知することが可能。このように、大量の画像データから品質改善や生産性向上に関する情報だけをリアルタイムに抽出し、データ解析することで、不具合の早期発見や品質の安定化、作業効率の改善に活用することができる。

また、製造現場の画像データを蓄積し、製品シリアル単位で最終製品と連携させることで、不具合品が発生した際に原因の生産工程を特定し、改善施策を行うことができるだけでなく、生産工程に不適切な作業が発見された際には、シリアル単位で最終製品を追跡できるなど、マルチトレーサビリティを実現するとしている。

今後、日立とダイセルは、播磨工場をはじめ海外6工場へ同画像解析システムの導入を進めるとともに、クラウドを活用した情報の集約と分析を通じて統一仕様設計や標準化を図り、グローバルでの統合管理システムの構築を目指すとしている。

画像解析システムを用いた現場作業員・設備のセンシング例