物質・材料研究機構(NIMS)は12月3日、同機構が合成したオスミウム酸化物NaOsO3が、観測史上最強のスピン-フォノン結合を示すことを明らかにしたと発表した。

同成果は、同機構 超伝導物性ユニット 山浦一成 主席研究員ら、米国オークリッジ国立研究所 スチュアート・カルダー博士らの研究グループによるもので、11月26日付けの英オンライン科学誌「Nature Communications」に掲載された。

スピン-フォノン結合は磁性(スピン)と結晶格子系(フォノン)の相互作用の強度を直接的に表すもので、スピンとフォノンの相互作用が強いほど、たとえば高密度情報記録素子や超高速演算素子を低消費電力で実現できる「マルチフェロイクス材料」などの機能性材料の開発に有利であることが、最近の研究から示唆されている。

今回の研究では、同機構が世界で最初に合成したオスミウム酸化物のスピン-フォノン結合を観測したところ、かつて観測されたことがない最強の結合であることが明らかになった。これは、酸化物固体のなかでオスミウムの最外殻電子軌道が空間的に大きく張り出しているためであると同機構は考察している。この構造的な特徴は、白金族元素に共通する特徴であるため、オスミウム以外の白金族元素の化合物も強いスピン-フォノン結合を持つ可能性が高いという。

同物質は今後、情報通信やエレクトロニクス分野での次世代材料の新たな候補につながることが期待される。

a:オスミウム酸化物(NaOsO3)の結晶構造の模式図 b:単結晶の光学顕微鏡写真