人工知能は新しい時代を迎えている。ディープラーニング技術の発達により、非構造データの認識精度は飛躍的に向上し、既に我々の生活にも影響を及ぼし初めている。

例えば、Google翻訳やiPhoneの音声ナビゲーション機能「Siri」の精度が少し前から良くなっていることに気付いた人も多いのではないだろうか。

直近では、ファッション人工知能アプリの「SENSY」が、IBMが開発した人工知能「ワトソン」のパートナーになることが発表されるなど、ますますビジネスでの人工知能の活用が注目され始めている。

さらに、2045年には機械の性能が人間の能力を上回る技術的特異点-シンギュラリティ-が起こると言われており、あのイーロン・マスクを含めた専門家たちが機械が人間の存在を脅かす危険性について真剣に議論を行っている。

はたして、人工知能が人間を駆逐する時は本当にやってくるのだろうか?

今回は、ビジネスにおける人工知能の最新活用事例と人工知能の未来についてご紹介したい。

人間のアルバイトよりも時給の高い「Pepper」

「Pepper」はソフトバンクが提供する、自ら学習する人工知能を搭載したパーソナルロボットである。人型ロボットとしては破格の20万円を切る値段で販売されたことや、ソフトバンクの店頭に実際に配置されたことで話題を呼んだ。

さらに、先日行われたソフトバンクの記者会見では、7月から「Pepper」の時給制のアルバイト派遣を開始することが発表された。気になる時給はなんと1500円、一般的なアルバイトの時給より少し高い値段になっている。主にティッシュ配りや受付・販売スタッフなどを行うという。

多くの人にとっては単なる話題作りの企画にすぎないかもしれない。しかし、重要なのは「既に人間とそれほど変わらないコストでロボットが人間の仕事を代替し始めている」という点であり、これが加速することはあっても戻ることはない不可逆的な流れだということである。

ベテランの銀行員を凌駕する?「ワトソン」のビッグデータ分析

「ワトソン」は米IBMが開発した人の言葉を理解する認知型コンピューターである。「ワトソン」は利用者が入力した文章を自然言語処理の技術で解釈し、ビッグデータ分析によって質問に対する最適な答えを導き出す。米国の人気クイズ番組でチャンピョンを破って優勝したことで話題になった「ワトソン」だが、今度は銀行のコールセンターに導入される。

具体的な活用方法としては、三井住友銀行のオペレーターが顧客から受けた質問をキーボードで入力して、ワトソンが回答候補を確からしい順に、確率を付けて表示する。オペレーターはそれを参考に顧客に応答するといった形だ。

質問への正答率は約90%とされており、将来的にはベテランの銀行員が行っている様に、融資の申込情報や過去の取引データを参考に融資の可否を決定する融資業務にも活用される見込みである。仮にそれが現実となった時、今まで融資業務を行っていた銀行マンにとっては、あまり好ましくない事態が待っているだろう。

「人が人らしくある」ことが、人間と機械が共存する鍵となる

引用: Simon Liu

Oxford大学の研究者、Michael Osborne氏の研究によると、2033年には全米の43%の仕事が自動化されているという。仕事は主にロボット、人工知能、オートメーションの組み合わせによって代替されるという。

しかし、英国のNPO団体NestaがFortune紙に送ったレポートによると、米国の仕事の約21%を占めるクリエイティブな能力を要求される職業はコンピュータにより代替される危険性はないという。具体的には、アーティスト、ミュージシャン、プログラマーなどが挙げられる。

仕事を代替される労働者にとっては恐ろしい事態かもしれないが、中には技術革新による失業を是とする人もいる。

インターネットの父の一人、ヴィトン・サーフ氏もその一人だ。ヴィトン氏は「歴史を見ても、技術革新は雇用を創出するものでこそあれ、雇用を破壊するものではない。失われる以上の雇用がロボットやAIによって生み出される」と主張している。単純作業を機械が代替することで、人はより人間らしい仕事をできるようになるのかもしれない。

我々は大きな時代のうねりの中で生きている。我々にできるのはその流れを見極め、自分の望む方向へ少しずつ進んでいくことだけなのかもしれない。

(本稿はO2O INNOVATION LABより提供を受けた記事を編集したものです。)