将来の携帯端末で問題化するプロセサの消費電力問題

昨年に引き続き、「第2回ノーマリオフ コンピューティングシンポジウム」において、藤田忍氏が東芝の研究開発状況を発表した。

携帯情報端末では、ディスプレイや無線などの部分の消費電力は減少してきているのに対して、プロセサは性能向上要求が強く消費電力は増加傾向であり、将来はプロセサ電力が突出してしまうという。

図1 現状ではディスプレイ、無線、プロセサの電力は同程度だが、将来はプロセサの電力が突出する (以下、すべての図は、藤田氏の発表スライドからの抜粋)

消費電力は、CPUアクティブの状態が最も大きいが、この時間は短いので、消費エネルギーはそれほど大きくはない。高性能化にともない、プロセサのキャッシュ容量が増加しており、プロセサの電源はオフで、状態保持のため、キャッシュの電源がオンという状態の時間が長く、エネルギー消費という点では、ここがもっとも大きいという。

図2 CPUコア電源はオフで、キャッシュの電源オンの時間が長いので、ここでの消費エネルギーが最も大きい

図3は、これをより定量的に表したもので、縦軸は消費エネルギーで、C0のアクティブ状態、C1のクロックゲート状態、C4のCPUオフで、L2キャッシュの電源電圧の30%ダウン状態、C6のスリープの各状態での全消費エネルギーと、その中でのL2キャッシュのリーク電流で消費されるエネルギーを示している。

この図に見られるように、モバイルデバイスでは、C4状態に留まっている時間が長く、この状態が一番大きなエネルギーを消費している。右上の円グラフは消費エネルギーを要素別に表したものであるが、アクティブな動作のエネルギーは全体の10%以下で、L2キャッシュのリークによるエネルギー消費が80%程度を占めていることが分かる。

図3 モバイルデバイスの各Cステートでのエネルギー消費

従って、L2キャッシュを不揮発性メモリとしてC4状態、あるいはC1状態でも電源をオフにして、リーク電流を抑えるというアプローチが有効というわけである。

しかし、不揮発性メモリは、現在、キャッシュに使われているSRAMと比べて動作時のエネルギーが非常に大きいという問題がある。このため、書き込みエネルギーの小さい不揮発性メモリの開発と、パワーオフの状態を多くするという使い方の開発が重要となる。