STAP現象でないと説明が付きづらい複数の現象を確認

8つの回答の内5つは論文の作成に関するものであったが、残る3つは実際のSTAP細胞やSTAP現象に対するものであり、大きく分けると以下の3つの質問となる。

  1. STAP現象の存在の有無に関する笹井氏自身の見解
  2. STAP現象を前提にしないと容易に説明できないデータが存在する件
  3. STAP現象を再現するためには何が難しいのか

1つ目については、「検証を行うと決めた以上、STAP現象は検証すべき仮説となった。ただし、観察現象をもとにすると、十分観察するべき合理性の高い現象である」と考えられるとの見方を示した。

その観察するべき合理性の高い現象である背景が2つ目の回答につながる。今回笹井氏が示した「STAP現象を前提にしないと容易に説明できない部分」は以下の3つ。

  1. ライブセルイメージング(顕微鏡ムービー)
  2. 特徴ある細胞の性質
  3. 胚盤胞の細胞注入実験(いわゆるキメラマウス実験)の結果

ライブセルイメージングは、ほぼ全自動で細胞の様子を観察、撮影し、その1コマ1コマに日付データなどのデータが付与される。また、感度も高く、人為的に入れ替える動きなどがあれば、即座にそれを感知できるため、そうした不正を働きにくい手法だ。また、死んだ細胞(死細胞)の自家蛍光との区別もできるため、実際に撮影された映像にある、「Oct4-GFPを発現しない分散したリンパ球から、Oct4-GFPを発現するSTAP細胞特有の細胞塊が形成される」という現象を、そういったものと見間違える可能性は低いとした。

また、リンパ球やES細胞も小さな細胞と考えられているが、STAP細胞はさらにその半分程度と、小さな細胞であり、ES細胞と比べても、核も小さい特殊な細胞であることが分かっている。遺伝子発現パターンの詳細解析でも、STAP細胞はES細胞や他の幹細胞とは共通の部分もあるが、一致しない部分もあり、単純にES細胞が混入したという説明はできないとした。

さらに、ES細胞は増殖能が高く、1個1個の細胞を分散させて培養が可能だが、STAP細胞は増殖能が低く、分散力も低いため、バラバラにすると死んでしまうという点もES細胞では説明がつかないとした。

この他、キメラマウス実験の結果についても、小さな細胞塊が存在しているが、ES細胞やTS細胞が混ざった場合、細胞接着がうまくいかず、1つの細胞塊にならないこと、内部細胞塊細胞の可能性も指摘されているが、STAP細胞の方が小さく、これを見間違えることはないとする。

STAP現象を前提にしないと説明がつきにくいデータが複数観測されており、論文に不備が判明した現時点ではSTAP細胞(現象)あると言い切れなくなり、仮説の段階となったものの、もっとも有力な仮説という位置づけであるという

「1個人の人為的操作が難しい確度の高いデータを見ても、ES細胞など、従来の細胞では説明できない特殊な反応が見られている。これらを加味して考えると、STAP現象(STAP細胞)は合理的な仮説として説明できると思っている」と、STAP現象はもっとも有力な仮説となりうると説明したが、「仮説にはつねに反証があり、それを吟味していくのが科学の常道。現時点で思いついていない反証仮説が出てくる可能性もある」とし、その検証のために理研が現在進めている研究が重要になり、それが最終的に第3者でもできるようになることが必要とした。