タカラトミーは4月7日、1984年にシリーズ第1弾を発売した「OMNIBOT(オムニボット)」シリーズを復活させ、その第1弾として、カナダ・WowWee社製の倒立二輪振子型「Hello! MiP(ハローミップ、以下MiP)」(画像1・動画1)と、同じくカナダスピンマスター社製の仔イヌ型「Hello! Zoomer(ハローズーマー、以下Zoomer)」(画像2・動画2)をローカライズし、前者は2014年6月21日(土)、後者は2014年7月26日(土)から発売することを発表した。

画像1。Hello! MiP
動画1。Hello! MiPは倒立二輪振子型のロボット
画像2。Hello! Zoomer
動画2。Hello! Zoomerの動き回る様子

OMNIBOTとは、「Omnipotent(全能)」にRobotを掛け合わせた造語で、ロボットがスマートになって、家族により身近になるように進化させたい、というコンセプトのもとに生まれたロボットだ(画像3~8)。今回もそれを踏襲したものとなっており、「ロボットがいる遊び心のある生活」をコンセプトとした次世代エンターテイメントロボットとしている。

ちなみに、OMNIBOT事態もタカラとトミーが2006年に合併する前から展開されてきたロボットなわけだが、その合併前の時代までたどると、タカラトミーとしては古くは1961年にブリキロボットとして「Mr.MERCURY」(画像9)を発売しており、実は50年以上の歴史がある。ちなみにMr.MERCURYは、リモコンによる操作でモノをつかんで持ち上げられるブリキロボットだ。

会場に展示されていた歴代OMNIBOT。画像3(左):1984年発売の初代OMNIBOT。テープレコーダーとアラームのコンビネーションによるプログラミング機能を搭載しており、発売当時の価格は3万9600円と、ホビー用としてはかなりの高級機だった。画像4(中):1985年発売の「OMNIBOT MKII」。背面のバッテリーハッチに光センサパネルを搭載していた。価格4万4800円。画像5(右):こちらも1985年発売の「OMNIBOT COM」。音声認識機能を搭載しており、内蔵マイクから音声コントロールが可能。価格は6万9800円

OMNIBOTシリーズ。画像6(左):こちらも1985年発売で、高級機「OMNIBOT 2000」。右腕と頭部を動かせ、飲み物を持ち上げてコップに注ぐことが可能。価格9万8000円。画像7(中):一見するとロボットに見えないが、移動機能に特化したモデルで、約10kgの物を運べるアシスタントロボット「OMNIWAGON」。価格2万4800円。1985年発売。画像8(右):1986年発売の小型低価格版「OMNIBOT Jr.CHARMMY」。超音波センサを搭載しており、価格は1万4800円。

画像09。Mr.MERCURY。発売時の価格は不明

今回、タカラトミーはOMNIBOTシリーズを復活させるに当たっては、21世紀に入って2回目といえる昨年あたりからのロボット人気がポイントになっているという。ロボットは00年代に注目を集めるもそれも一段落してしまった。それが、またから昨年のデアゴスティーニ社の「週刊ロビ」に見られるように、従来はロボットに興味を持っていなかったような女性層などにもアピールするようになってきたことから、一巡してまたロボットに興味が持たれるようになってきたと判断したという。

また、近年のスマートフォンやタブレット(それに伴う無線システム)などの急速な普及により、同じようなホビーロボットであっても、00年代ではまだあまりできなかったような遊び方もできるようになってきたことから、今回、心を豊かにする次世代のホビーロボットとして、OMNIBOTシリーズを復活させることにしたとした。また、さらにさまざまな形で商品を展開し、中・長期的には次世代のエンターテイメントロボット市場を確立していきたいと、今回のロボットたちの発表に先立ち、タカラトミー取締役専務執行役員の眞下修氏は語っている。なお、今回のロボットたちによる今年の市場規模は20億円とし、3年後には50億円を目標として掲げた。

まず先に発売されるHello! MiPだが、上半身はヒューマノイド型で、移動システムとして下半身が平行2輪というスタイル。特徴は複数あり、まずジェスチャーコントロールが採用されていること。「ジェスチャーセンサー」が内蔵されているため、直接手で触れたり、過去のOMNIBOTシリーズのように付属コントローラを用いたりする必要がない。

例えば、機体前方に手をかざすと一定の距離を保とうとするので、Hello! MiPから手を離していくとそれを追って前進、逆に近づけていくとその分だけ後退する。いわゆる「フォースが使えている」ような感覚でコントロールできるというわけだ(動画3)。旋回も手を左右に振るコトで行う。このようにコントローラを使わないので、ちょっとした距離なら、人と人の間を行ったり来たりとキャッチボール感覚で移動させることもできる。

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動画3。MiPのジェスチャーコントロール

また平行2輪で倒れずにいるためのキーとなっている技術が、「倒立振り子センサ(Mobile Inverted Pendulum)」だ。このセンサのバランス感覚はなかなかのもので、付属のトレーを持たせた上で(動画4)、その上に自重と同じ350gまでの重さの物を載せても倒れずに移動できる(動画5)。そして前述した人と人の間を行ったり来たりできるのを利用すれば、例えば缶ジュースなどを運ばせるといったことも簡単にできるというわけだ。

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動画4。付属トレーの上に水のペットボトルを載せるところ
動画5。水のペットボトルを載せて移動する様子

ただし、さすがに長距離の移動となると、ちょっとコントロールがおぼつかなくなるので、そんな時に使いたいのが、Bluetooth機能を利用してスマホをコントローラとしてしまう仕組み。事前に、iPhoneやiPad、Android端末などに専用の無料アプリをダウンロードしておけば自由自在に操縦できるようになる仕組みだ(動画6)。さらに、あらかじめ走行ラインをスマホの画面上を指などでなぞって描いておくと、MiPがそのラインをなぞって走るという機能もある(動画7)。そのほか、スマホを利用してゲームができたり、MiPにご飯をあげたり、好きな曲をかけて踊らせたりといったことも可能だ。

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動画6。スマホをコントローラとしてMiPを操縦する様子
動画7。スマホの画面上にラインを描いてMiPがそれをなぞって移動する様子

MiPのモードとしては、コントロール、バランス、ダンス、自由走行、学習、迷走、待機の7つがある。コントロールとバランスは前述した、ジェスチャーによって操縦するモードと、トレーに物を載せて運ぶモードだ。ダンスは、胸部にあるスピーカーから音楽を流しつつMiPが踊るというモードで、発表会では1台によるダンスに加え、5台によるシンクロダンスも披露された(動画8・9)。学習は、ジェスチャーによる動きの指示を最大50個まで記録できるモード。迷走は、逃げていくMiPの進路を遮って進行方向を変えさせて遊ぶというユーザーも一緒に体を動かして遊べるモード。待機は自立した状態での指示待ちモードで、手をかざせばまたアクションを開始する。なおモードチェンジは片方の車輪を回すことででき、胸のランプの色が変化するので確認できる仕組みだ。

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動画8。MiP1台によるダンス
動画9。MiP5台によるダンス

電源は単4形アルカリ乾電池4本で駆動し、連続稼働は1時間。また両腕は自動的には動かないが、稼働させることは可能なので、ある程度のポーズを取らせることは可能。それからボディカラーは現状ではホワイトとブラックの2種類だが(画像10)、カラーバリエーション展開や、ご当地バージョンなども含めた限定版なども可能性としてはあり得るとしている。なお、両腕をあらかじめ前に突き出しておくことで、バトルのような遊びも可能だという。ちなみに海外では、開発元のWowWee社が2014年夏に発売を開始する予定だ。そしてスペックは以下の通り。

  • サイズ:幅130mm×高さ190mm×奥行き70mm
  • 重量:350g(電池を除く)
  • 対象年齢:8歳以上
  • 販売目標:年間5万個
  • 使用電池:単4形アルカリ乾電池4本(別売)
  • セット内容:MiP本体、ディスプレイ用スタンド、トレー、取扱説明書
  • 発売日:2014年6月21日(土)
  • 価格:1万5000円(税別)、1万6200円(税込)

画像10。黒のMiP

続いては、仔イヌ形ロボットのZoomerについて(画像11)。Zoomerは「101匹わんちゃん」などでおなじみのダルメシアンを模しているのだが、Zoomerのすごいところは、そのダルメシアンらしい身体のブチ模様が商品1台1台異なって1万パターン以上もあり、事実上自分だけの1台を購入できるという点だ(カラーとしてはダルメシアンなので、白地に黒ブチ)。

画像11。Zoomer

イヌ形ロボットといえば、かつてソニーが販売していた「AIBO」を誰もが思い浮かべることだろう。AIBOは今でも多くの熱心なユーザーがおり、そうしたユーザーたちを見ていると、「自分だけ(我が家だけ)の1台」とするため、結構着飾らせるなどしているのがよく見受けられる。それがZoomerの場合、製品として最初から模様が異なるのだから革新的といっていいのではないだろうか。おそらく、同じ売り場に同じ模様が入荷されることはないだろうから、兄弟や友達同士で一緒に購入しても、まず同じ模様ということはあり得ないはずである(逆に一緒だったら一緒だったですごい)。ユーザー同士で見せ合ってどこが違うかといった楽しみ方もできるというわけだ。

Zoomerは日本語もしくは英語を理解する音声認識機能があり、年齢や性別を問わずいうことを認識してくれる(動画10・11)。認識できる単語は45語(日本語30語以上+英語15語以上)以上だ。またそれら音声認識により、ふせやおすわり、お手など、40種類以上の仕草を見せてくれるのも特徴だ。また、MiPが手をかざすと一定の距離を置くの仕様なのに対し、Zoomerの場合はすり寄ってくる。アゴの下などをなでてあげると結構喜ぶ感じである。頭を押すと、音声認識のスイッチが入る仕組みだ。飼い主とじゃれたがるイヌらしい仕草が基本動作となっているのだ。さらに、仔イヌなので放っておいても自分で元気よく動き回ったりもするのもかわいい。

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動画10。音声認識の様子。
動画11。音声認識の様子その2。男女関係なくきちんと認識する

さらに各部の詳細は、まず目の部分がLEDとなっており(画像12)、さまざまな表情を表出するほか、音声認識の準備が整ったことや、また認識がうまくいかなかった場合などのサインも出されるようになっている。ボイス機能もあって、鳴いたりうなったり吠えたり、さらには歌ったりくしゃみをしたりもするという具合だ(歌は、歌ってと頼むと鼻歌を歌ってくれる)。歌うの様子は、動画11の中で見ることが可能だ。

センサは前述した音声認識用のセンサのほか、胸部に障害物検出用として4つの赤外線センサを搭載(画像13)。これを用いて周囲の物にぶつからずに動き回れるようになっている仕組みだ。搭載モーター数は今回は公表されていないが、見る限り、首、腰、それぞれの足の付け根の6カ所と思われる。

画像12(左):目はLEDで、さまざまな感情を表す。画像13(右):赤外線センサ

ヒザはギアなどで屈曲する仕組みで(画像14)、足首から先は車輪だ。リチウムイオン電池はUSBで充電する仕組みで(画像15)、約1時間の充電で約20分の動作が可能だ。そのほか傾きセンサも搭載されており、腰の軸を利用して身体をひねって、ひっくり返って仰向けになることもできる(画像16)。

画像14(左):ヒザの構造。画像15(中):USBで充電する。画像16(右):自分からひっくり返ることも可能

Zoomerのモードは、ドッグトレーナー、フレンドリー、英語の3種類。ドッグトレーナーモードは、おすわりやふせなどでしつけをするという内容。本物のイヌと同様に、最初から人のいうことを聞いてくれるわけではないし、何度か指示しないと忘れてしまうなど、しつけには手間がかかるようになっている。

フレンドリーモードは、友達のように話しかけて遊ぶ内容。いってみれば、ドッグトレーナーモードでしつけが終わった後の状態を最初から楽しめる状態という感じだ。「Zoomer、ただいま」などと話しかけると、しっぽを振って興奮してぐるぐる走り回ったり、Zoomerの前に立って「Zoomer、着いてきて」といってゆっくり歩くと足下を着いてきてくれるのである。

英語モードは、英語で話しかけて遊ぶモード。簡単な英文で命令をしたり、ちょっとした会話ができたりする形で、例えば「Zoomer, play dead」というと、身体を回転させて死んだふりをして見せる。「I love you」というと、「I love you」と吠え返してくれるというわけだ。

ちなみにZoomerは海外では2013年に発売されており、米国では42万個を販売し、「トイ・オブ・ザ・イヤー2014」で最優秀イノベーション部門を受賞している。日本でも、集合住宅などのルールとしてペットを飼うのを我慢している人も多いわけだが、そこら辺が受けたのではないだろうか。連続稼働時間は20分と本物のイヌに比べたらずっと短いわけだが、それでも見ていた限り、かなりイヌっぽくなつっこい感じだったので、犬好きも評価してくれるのではないかと思われる1品だ。スペックは以下の通りである。

  • サイズ:幅280mm×高さ180mm×奥行き200mm
  • 重量:520g
  • 対象年齢:6歳以上
  • 販売目標:年間5万個
  • 使用電池:リチウムイオン電池内蔵、充電はUSBを使用
  • セット内容:Zoomer本体、USBチャージケーブル、クイックスタートガイド、取扱説明書
  • 発売日:2014年7月26日(土)
  • 価格:1万5000円(税別)、1万6200円(税込)

今後の展開としては、OMNIBOTシリーズに関しては、秋頃に新たな展開を用意しているという。確定事項ではないが、イヌと並ぶペットの2枚看板であるネコも検討されているという。ネコのアマノジャクな感じとかがうまく再現されると面白いのではないだろうか。続報を期待したい。