ジャパンディスプレイは3月19日、東京証券取引所市場第1部に上場したと発表した。

同社は、産業革新機構から出資を受けて、東芝、日立、ソニー3社の中小型ディスプレイ事業を統合し、2012年4月1日に設立された。社長の大塚周一氏は、「統合前の3社はそれぞれが高い技術を持ちながら事業規模が小さく、大型の設備投資を行うだけの資金がなく、グローバルな競争が難しかった。成長著しい市場を前に、技術を持ちながら何もできない。"技術で勝って、ビジネスで負ける"という、日本のエレクトロニクス産業が長年抱えていた問題を解決したいというのが、設立時の思いだった」と振り返った。

初年度の2013年3月期は、大口顧客向けの大幅な減少があったものの、売上高が4573億7800万円、営業利益が17億8300万円、経常利益が55億4200万円、純利益が38億8900万円となり、黒字化を達成した。そして、設立から2年で上場することになった。

上場の新規発行による手取り金は、設備投資に充当する予定。低温Poly-Si(LTPS) TFT-LCDの需要増加に対応することを目的に、2013年6月に稼働を開始させた第6世代(G6)の茂原工場(千葉県)J1ラインを月産5万シートに増強するため338億円、第5.5世代(G5.5)の能美工場(石川県)D2ラインを月産2万5500シートに増強するため32億円を投じるのをはじめ、モジュール工程の製造設備および検査装置、有機ELディスプレイの試作ラインなどにも投資する。

会見する社長の大塚周一氏

同社の強みは、技術力、生産能力、中小型ディスプレイ専業メーカーであることの3つ。技術力は、旧3社からの引き継いだもので、低消費電力、狭額縁のLTPS TFT-LCD技術を中心に、IPS広視野角技術はモバイル用途ではデファクトスタンダードとなっており、インセルタッチパネル技術「Pixel Eyes」は他の技術を凌駕するものとなっている。また、生産能力は、G5.5/G6のLTPSラインを2年連続で立ち上げており、競合メーカーの2倍以上を有している。さらに、ディスプレイ専業メーカーであり、最終商品を持たず、顧客と競合にならないため、安心感と公平感を与えることができ、幅広い顧客基盤に繋がっているとした。これらの強みを武器に、今後はスマートフォンでボリュームゾーンとなる中級機以下向けパネルに参入していくとした。

一部報道があった新工場の建設に関しては、「タブレットで高精細ディスプレイが普及するなど、一定のめどが立ち、需要がはっきり見えた段階で検討する。現段階では考えていない」(大塚氏)と応じた。

月産5万シートに増強される予定の茂原工場G6ライン

株価は900円でスタートしたが、15%下回る769円で初日を終えた。これについては、「一喜一憂するようなコメントはしない。中小型ディスプレイ市場は今後も成長していくこと、当社が競合と差別化できるだけのLTPSの生産能力と技術力を持っていることを理解してもらいたい」(大塚氏)と述べた。また、親会社以外の株主だった産業革新機構が、親会社以外の支配株主に該当しないことになったと発表した。これまで、86.69%の株を保有していたが、新規上場に伴う売り出しによって、35.58%まで引き下げるとしている。

さらに、上場に伴い、2013年度第3四半期までの9カ月の累計売上高が4827億4200万円になったと合わせて発表した。営業利益は221億2100万円、経常利益は186億3600万円、純利益は334億8300万円となった。2014年3月期の売上高は6234億円、営業利益は304億円、経常利益は226億円、純利益は366億円を見込んでいる。