ルネサスエレクトロニクスは3月13日、40nmプロセスを採用した車載用フラッシュメモリ内蔵マイコン(フラッシュマイコン)向けに新たなフラッシュメモリ技術を開発したと発表した。

近年、自動車をはじめ高い信頼性が要求される機器では、制御の高度化に加え、機能安全への対応やセキュリティ対応、ネットワーク対応など、さらなる高性能化と多機能化が要求されるようになっており、マイコンのソフトウェア(プログラム)などを格納するためのフラッシュメモリの大容量化も求められるようになっている。

それを実現するには、プロセスの微細化による集積度の向上と、それに伴う必要となるデータの高速な読み出し動作を実現する回路技術、そして書き換え回数の増加を実現する回路技術を開発する必要がある。今回の同社が開発した技術としては、高速読み出し動作を実現する回路技術においては、読み出したデータを増幅するセンスアンプのオフセット電圧が大きいと、セルからのデータ読み出し時間は長くなることから、補正電流を用いてオフセット電圧をキャンセル可能なセンスアンプを新たに開発し、ランダムアクセス速度を高めた。

一方の書き換え回数の増加を実現する回路技術としては、書き込み動作にセルに印加する電流を書き込みの進行に適応して可変制御する方式と、消去動作時にセルに印加する電圧レベルを観測して最適なパルス印加時間を動的に制御する技術を開発。これにより、書き換え時間の短縮に加え、書き換え時のセルに印加される電圧ストレスの低減が可能となり、書き換え回数の増加を実現したという。

実際に、これらの技術を適用した40nm世代プロセスを採用した4MBのプログラム格納用フラッシュメモリと64KBのデータ格納用フラッシュメモリを試作したところ、160MHz以上、5.1GB/秒の読み出し動作を実現したという。従来の40nm世代プロセス品では120MHzだったが、この技術により特性が33%改善したほか、データ格納用フラッシュメモリとしてはTj=170℃という高温下でも1000万回の書き換え回数を実証したという。

なお同社では、今回開発した回路技術を用いることで、より高性能・高信頼性を備えた車載用フラッシュメモリの実現が可能になるとしており、同プロセス技術と、SG-MONOS構造を採用した車載用フラッシュマイコン製品を、2013年度第1四半期よりサンプル出荷を順次開始する計画としている。