ファンケルは11月30日、紫外線遮蔽効果を持つ「酸化セリウム」の形状をコントロールすることで、球状、板状、花びら状へ合成することに成功したことを発表した。また、これらの形状をした酸化セリウムは、滑らかな使用感や高いぼかし効果など、高い使用性を有することも併せて確認したことも発表した。

これらの成果は同社総合研究所ならびに、東北大学 多元物質科学研究所を中心とするグループによるもので、詳細は、2012年10月15日~18日に南アフリカ共和国にて開催された「第27回 IFSCC Congress」において発表された。

パウダーファンデーションなどのベースメークアイテムは、紫外線から肌を保護するために、SPFやPAで表示されるUVカット効果を付与することが出来る紫外線遮蔽剤が配合されている。しかし、一般的に使用される紫外線遮蔽剤は多量に配合すると感触や透明感などの使用性が悪くなるという課題があった。

そこで同社では、比較的透明性が高く広い範囲の紫外線を遮蔽する「酸化セリウム」に着目し、紫外線遮蔽効果と優れた使用性を併せ持つ素材を東北大らと開発してきており、

今回、酸化セリウムを含んだ試薬の種類、濃度、温度条件、反応時間などを変え、様々な条件で合成を試みたところ、特定の条件で反応をさせることで、球状、板状、および花びら状の酸化セリウムを合成することに成功した。

今回開発された酸化セリウムの顕微鏡写真

また、合成した球状、板状、および花びら状の酸化セリウムについて、それぞれ「紫外線遮蔽効果」、「滑り性」の特性を評価。比較対象としては、一般的に化粧品に用いられる紫外線散乱剤の微粒子の酸化チタン、酸化亜鉛、酸化セリウム、および滑らかな感触を持つ板状形状の粉末原料であるタルクを用いて評価を実施したところ、球状、板状、および花びら状の酸化セリウムは一般的な紫外線散乱剤と同等の遮蔽効果をもち、かつ一般的な紫外線散乱剤よりも摩擦抵抗が低く、滑らかであることが判明した。

各種粉体の透過率と摩擦力

さらに、それぞれの形状の酸化セリウムについて「ぼかし効果」の指標であるヘイズ値の測定を実施。比較対象として、化粧品でよく用いられる紫外線散乱剤の微粒子酸化セリウムを評価して比べたところ、今回の3つの形状の酸化セリウムは、高いぼかし効果を有することが確認され、特に球状、花びら状の酸化セリウムのぼかし効果が高いことが確認された。

ヘイズ値。(a)は微粒子の酸化セリウム。(b)は球状酸化セリウム。(c)は板状酸化セリウム。(d)は花びら状酸化セリウム

加えて、同素材を配当したファンデーションについても、各種の機能性を評価したところ、塗布時の使用感が滑らか、仕上がりが美しい、仕上がりの美しさが持続する、といった特長があることも確認されたという。

なお同社では、今回開発された素材について、新たなパウダータイプのファンデーションの開発に応用する予定だとしている。