トムソン・ロイターは、2011年の一年間で最も注目を集めた研究者(Hottest Researchers)と、年間最多引用論文の調査結果を発表した。

同研究者は、2011年に(同社が提供する学術論文情報データベース「Web of Science」に収録されたデータで、当該期間から見た過去2年間に収録された論文が、直近2カ月間にどれだけ多く引用されたかを基準に選考。分野ごとに上位0.1%の論文として選出されたその分野の)ホットペーパーとしてノミネートされた論文数の多い研究者の上位10名(同列の場合は増加あり)であり、一方の最多引用論文は、2011年に発表された論文の中で、世界的に引用数の多かった論文となる。同社ではこれらにより、科学研究の最近の傾向や、注目されている研究者・分野を俯瞰することができるほか、データにさらなる分析を加えることで、分野における傾向や今後の予測を分析・提供することも可能となると説明している。

2011年の傾向としては、遺伝学、疫学、循環器、がん研究の分野の論文が多くみられ、最も注目を集めた研究者に選ばれたのは、ハーバード大学とマサチューセッツ工科大学が共同で運営する「Broad Institute of MIT and Harvard」のEric S. Lander氏となった。同氏は、2010年に続き2回目の1位の獲得で、過去8年連続のランクインとなった。今回、そのほかのランキングは以下の表のとおり。

最も注目を集めた研究者(Hottest Researchers)ランキング

また、日本人としては5位に理化学研究所(理研)、植物科学研究センター長の篠崎一雄氏が選ばれた。同氏の専門は、植物のゲノム機能研究ならびに植物の環境ストレス応答、耐性獲得に関する分子生物学的研究で、同氏は「Hottest Researcherに選出されたことは、私にとって思いがけないことでしたので突然のプレゼントのようで驚きでした。しかも、自然科学の全分野での全世界での引用度の高い論文Hot paperの中に私の関わった論文が11報もあったことをうれしく思っています。最近は、センターのマネジメントの仕事の割合が高くなっていますので少々意外でしたが、研究者としてこれからも頑張っていくと良いとの励ましとなりました。これからも質の高い論文を発表していきたいと考えています」とコメントしている。

一方の2011年に最も多く引用された論文(レビュー論文除く)は、被引用数が564回と2位以降を4倍以上引き離した、テキサス大学教授/カブリ数物連携宇宙研究機構併任研究員の小松英一郎氏の観測的宇宙論に関する論文が選ばれた。同氏の専門は、観測を通して宇宙の姿を明らかにする宇宙論に関するもので、2007年、2009年にも同研究において最多引用論文を獲得している。

2011年の論文引用トップ10

これについて、小松氏は、「我々WMAPチーム(Wilkinson Microwave Anisotropy Probe:ウィルキンソン・マイクロ波異方性探査機研究チーム)の論文が2007年、2009年に続いて再び引用数第1位になったとの知らせを聞き、大変光栄に思います。これを励みに、1人でも多くの研究者に読んで頂ける論文を発表できるよう、日々の研究活動に勤しんでまいります」とコメントしている。