情報通信研究機構(NICT)は、ナノスケールの単結晶であるナノワイヤを電極間に簡単に作製できる「ナノワイヤ作製キット」を開発したことを発表した。

ナノワイヤ作製キットは、高真空系などの大掛かりな装置でなく、手のひらサイズの装置を用いて、基板上にナノワイヤを簡単に作製することができる。同キットの製造原理には、NICTが開発した「ナノ電解法」が用いられており、同技術により電子ペーパーやディスプレイなどに利用される半導体を作製するプロセスにおける省エネルギー化・低コスト化が実現でき、さらに半導体そのものの微小化・高性能化も実現できると考えられる。

ナノワイヤ作製キットは、ナノ電解セル、電極基板および電源から構成されている。ナノワイヤによる架橋を構築させたい電極基板を同キットに接続し、ナノワイヤ原料溶液を入れたナノ電解セルに浸し、電源から交流または直流を通電させることで、簡単かつ選択的に単結晶のナノワイヤを作製できる。

同キットを用いることにより、装置コストは真空蒸着法やインクジェット法など従来法の1/100程度、配線の最小線幅はインクジェット法の1/1000程度となる約十数nmの微細加工が可能となっている。ナノワイヤの原料として、導電性材料を用いるとナノ配線を、半導体材料を用いるとトランジスタなどのナノデバイスを、作製することができる。また、従来法に比べて分子が規則正しく配列するため、作製されたデバイスそのものの特性の向上も期待できる。

なお、同技術は、岩田硝子工業にて製品化を準備中であり、2月15日~17日に東京ビックサイトで開催される「国際ナノテクノロジー総合展・技術会議(nano tech 2012)」において実演展示する予定。

「ナノワイヤ作製キット」のナノ電解セルおよび電極基板の写真